理工学部人間システム工学科 井村誠孝 研究室

[ 編集者:広報室       2018年1月17日 更新  ]

実世界では体験困難な状況を体験可能にするバーチャルリアリティ技術を研究

井村研究室の様子

 「百聞は一見に如かず」という言葉がありますが、見るだけでなく体験することはより強力な印象を与えます。いわば「百見は一験に如かず」です。人の想像力には限界があり、時として現実は想像の範囲を凌駕します。思いもよらない状況に落ち入り、呆然としたことは誰しもあるのではないでしょうか。

 以前、企業と共同で、トンネル火災時における煙流のシミュレーション結果をコンピューターグラフィックスで可視化する研究を行いました。実際に開業前の箕面トンネル内で車両事故に見立てた火災を発生させ、煙の広がり方を計測する実験を見学しました。実験が始まって、煙がトンネルの奥からこちらに向かって流れてくるのを眺めていたところ、いつのまにか周囲の人がいなくなりました。不思議に思い、周りを見回していたわずかな間に、さらに煙が押し寄せてきて、あっと言う間に煙で視界が奪われてしまいました。慌てて煙と反対方向に走り、脇のトンネルに避難して事なきを得たのですが、煙の充満する速さ、視界が失われたときの恐怖感は、体験しなければ分からないものでした。若干の冷や汗と共に、経験することの重要性を実感しました。

井村 誠孝 教授

井村 誠孝 教授

 専門とするバーチャルリアリティ(以下、VR)技術は、実際に体験することが困難な(災害など)、あるいは危険が伴う(綱渡りなど)、そして失敗が許されない(手術など)状況を、現実感を伴って体験可能にする、体験拡張技術です。私の研究室では学生たちと一緒にVRのためのセンシング・シミュレーション・ディスプレイ技術を中心に研究を進めています。VRはゲームだけでなく、体験例に挙げた防災や、スポーツ・医療・教育トレーニングなどさまざまな社会的応用が見込まれます。

 研究室の学生には自らの興味のありかを主体的に探り、それを社会に貢献する技術やシステムの開発につなげていくことを期待しています。

酒匂 大輝さん 理工学研究科M1年生

触覚を用いたVR研究の可能性を探る

酒匂 大輝さん

酒匂 大輝さん

 VRというとヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を使用した視覚分野VRだけだと思われがちですが、そうではありません。VRでは五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を用いた研究も進められています。私はその中でも、視覚の次に期待されている「触覚(感)」を用いた研究をしています。私の提案システムでは空気の噴流を使って触感を提示するのですが、個人差があまりない視覚とは異なり、触感は人によって「痛い」「痒い」など感じ方がさまざまで、現在提示可能な触感の範囲を探っています。

 触感の研究は、施術経験が少ない医師が不整脈と正常な脈の違いを知る練習用として、また視覚のVRと併用し、HMDをつけて見えているものに触るといったエンターテインメント業界にも応用できます。多くのサンプルを集めて、研究の可能性を広げ、今後の実用化の方向性を探ります。