研究室で人間性を育み28年─分子分光学の世界的拠点を目指して

[ 編集者:広報室       2017年4月26日 更新  ]

尾崎幸洋研究室

研究の様子

研究の様子


 理工学部の中でもひときわ大所帯で、外国人留学生や女子学生の姿が目立つ。和気あいあいと明るい雰囲気も印象的だ。尾崎研究室で研究しているのは、物質に光をあてて分子の構造や性質を調べる「分子分光学」。尾崎教授は未開拓、未発達の分子分光学の分野を、独創的なアイデアや研究手法を用いて世界的に大きく発展させてきた。

 研究室は、分子分光学の基礎から、装置の開発、応用に至るまで一貫して研究ができる環境が整っており、世界中から研究者や学生が集まってくる。

研究の様子

研究の様子

 尾崎教授が心掛けているのは、「研究室は教育室であれ」ということ。1989年の研究室開設以来、基礎学力、人間力、研究力の三つの柱を大切にしてきた。スポーツ選手が試合に勝つために基礎練習を欠かさないように、研究者にとっては物理・化学・英語など基礎学力が重要だという。

 また、人間力や国際性を高めるために積極的に留学生を受け入れてきた。これまでに中国、タイ、インドネシア、ポーランドなどから70人以上の研究生や留学生がやってきて、研究室内には自然と多様性を受け入れる雰囲気が根付いている。研究室で博士号を取得して現在博士研究員のSanpon Vantasinさんは「ここは設備もすばらしく世界トップクラスの研究ができる。企業との共同研究も多く、学ぶことが多い。将来はタイに戻って教授になって、さらに研究を進めるのが夢」と語る。国際的な雰囲気に魅かれて、国際交流などに関心の高い女子学生が集まり、女性が約半数を占めているのも特徴だ。常に女性リーダーのロールモデルが存在してきたという。

 「どんどん研究させ、どんどん発表させる。国際学会にも必ず出てもらう」という方針のもと、学生は日々、鍛えられている。研究者として成長させるため、早い段階で成功体験をさせることが必要だからだ。安井唯さん(修士1年)は、「研究や学会発表は大変だが、自由にやらせてもらえるので頑張れる。困った時はじっくり話を聞いてもらえるので、話しているうちに、つまずいていた原因が判明し、自分で解決策を見出すことができる」という。

 11月下旬、12月に開催される国際学会の準備のため、メンバー全員が集まり、英語で本番さながらの発表練習をしていた。森本佳奈さん(修士2年)は、「日頃から外国人留学生と共同研究しているので、英語の発表も臆することがない。3回目だが、さまざまな国の人の研究を知ることができ、知見が広がる」と目を輝かす。人前で話すのが苦手だったという渡利幸治さん(修士1年)は、あえて尾崎研究室を選んだ。「発表の機会が多くて最初は戸惑ったが、何度も何度も経験を重ねることで自信がついてきた。とにかく研究室の人間関係が良いので、失敗を恐れず挑戦しやすい。将来は人とかかわる仕事に関心が広がった」という。応用物理学会関西支部で最優秀ポスター賞を受賞した上村奨平さん(修士2年)は、「研究室では論文やポスター発表をたくさん出し、受賞も多い。そんな環境が刺激になっている。今回、自分も認められて嬉しい」と語る。

 尾崎教授は「最初からうまくいっていたわけではない。分子分光学の世界的拠点を目指すという研究室の目標を明示し、多様性を採り入れ、自主性に任せてやってきた結果、環境が整って、良い循環が生まれてきた。研究室は最後の1年を迎えるが、ここに集った人が今後、世界中に成果を還元していってほしい」と目を細める。