理工学部環境・応用化学科 谷水雅治研究室

[ 編集者:広報室       2017年1月13日 更新  ]

 

元素を最新の技術で分析し過去の情報を把握して未来に生かす

谷水 雅治

 

海底から地表、大気などの地球表層部において、元素がどのように循環しているのかを正確に把握する研究を行っています。
 分析対象試料は、水や土、空気中の微粒子などです。空気中の塵を排除した清浄な実験環境(クリーンルーム)で目的元素のみを取り出し、その濃度や同位体比の測定結果から、目的元
素がいつ、どこから、どのぐらいの割合で試料に含まれているのかを解析します。
 産業革命以降、人類の文明的な生活の陰で、大量の元素が環境中に排出されています。鉛を例にとると、20世紀初頭にはガソリンの質向上のため鉛の有機化合物が普遍的に添加され、鉛の有害性のために先進国で廃止された1970年代まで、大量の鉛が内燃機関での燃焼を通して大気中に排出されました。排出された鉛は、国ごとにその同位体比が異なるため、堆積物やサンゴの分析により、試料を採取した地点に蓄積した鉛の起源とその時間的変遷を把握できます。この鉛の例や地球温暖化に関連した二酸化炭素濃度の増加など、環境への配慮より経済成長を優先した結果、人類はさまざまな環境問題に直面していますが、最新の分析技術で過去の情報を正確に把握し、未来への予測へ生かすこの手法は、時空を旅するような気分になる側面があるかもしれません。
 同位体を用いた農産物や文化財の産地推定の研究も進めています。同位体比は元素に付けられた指紋のような働きをするため、同じ遺伝子を持つ農産物でも、その生育地の地質に関連して元素の同位体比が異なっており、産地を推定することが可能となります。安全な農作物の物流の確立や文化財の流通経路の把握の一助になると期待しています。
 学生たちには自ら動いて研究を進め、新しい知見に至ったときの高揚感を味わってほしいです。

硝酸汚染をテーマに熊本市の地下水を調査

杉本 直人さん(理工学部4年生)

 

 熊本市の地下水の水質調査をしています。地下水中で増加傾向にある硝酸性窒素の起源推定が研究テーマですが、熊本地震の発生に伴い、地震前後の水質変化も研究対象です。
 熊本市の水道水源は、阿蘇山西麓地域の降雨が有明海に至るまでに地下に浸透し、自然にろ過された地下水ですが、過剰に摂取すると人体に有害な硝酸性窒素をわずかに含んでいます。熊本市周辺は畜産や野菜栽培が盛んなので、下水以外にも家畜し尿や化学肥料など複数の人為起源の混入源が考えられるため、さまざまな同位体指標を用いて硝酸性窒素の起源推定を行います。
 谷水研究室では、学生ごとに全く別のテーマで研究を進めます。地球環境に関する複数のテーマのうち、私は野外調査があるこの課題を選びました。自分のペースで研究が進められる一方で主体性が強く求められるため、積極性を持って課題に取り組みたいです。