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保健だより(2018年6月)


園医 芦田先生から

抗生剤が効かない肺炎が出てくるかも・・・

 いきなり何のことかと思われたかもしれません。でも、あながち嘘の話ではないのです。抗生剤は細菌をやっつけるために開発された薬です。その効果は絶大で、そのおかげで細菌感染が原因で命を落とす人はとても少なくなりました。ところが細菌も生き残るために必死です。そして抗生剤に対して抵抗力を持った細菌が発生してきたのです。これを「薬剤耐性菌」と呼びます。この薬剤耐性菌が徐々に広まりつつあります。それが医療界では大きな問題になっていて、日本でもこの問題に対して2016年から「薬剤耐性対策アクションプラン」というものが策定されました。具体的な内容は次の5つです。

1、「症状を医師に詳しく伝える」
いつからどんな症状が出たのかを診察の時にしっかりと伝えましょう。そのためには、あらかじめ経過を簡単にまとめてメモをしておくといいかもしれません。特に熱の有無は大事なポイントです。実際、診察の最後に私がおかあさんに「何か質問はありませんか?」と問いかけると「あっ、言い忘れていました。昨夜39度の熱が出ていたんです」なんて話が出て、診察が最初からやり直しになることがありました。そんなことを防ぐためにも、診察前に症状をまとめておくことをお勧めします。

2、抗菌薬は医師の指示(処方箋)通り最後まで飲み切る
抗生剤を中途半端な使い方をすると、対象となる細菌が死に切らず、それがためにその菌が使った抗生剤に対して抵抗力を持ってしまうことがあります。これがまさしく「耐性」です。そういうことを防ぐには、きっちり最後まで飲み切ることです。たとえ途中で症状がよくなっても、処方された抗生剤は全部飲み切りましょう。

3、とっておいて、後で飲んだりしない
よくある例としては「日曜日に熱が出た。以前受診したときに処方された抗生剤が余っていたので、とりあえずそれを飲ませた」。これもよくありません。熱が出たからと言って、それが細菌感染かどうかはわかりません。どちらかというと、ウイルス感染の可能性が高いです。ご存知かもしれませんが、ウイルス感染に抗生剤は全く無効です。無効な薬を飲んでも全く意味がありません。意味がないどころか、このような使い方が「耐性菌」を作り出す下地となります。だいたい抗生剤が余っている事自体が間違いです。

4、人にあげたりもらったりしない
抗生剤はその個人の病気に対して処方されるものです。他の人が同じ病気にかかっているかどうかは医師が診断しないとわかりません。もし違う病気であればその抗生剤は無効ですし、これまた「耐性菌」を生み出すことにつながります。これはきょうだい間でも同じで、本人に処方された薬をそのきょうだいに勝手に飲ませてはいけません。

5、わからないことは医師や薬剤師に相談する
抗生剤が処方されたとき、何か疑問に思われることがあれば遠慮なく相談されたらいいと思います。特に長期(1週以上)にわたって抗生剤が処方される場合は、その理由をしっかりと聞かれるべきでしょう。

 抗生剤はとってもいい薬です。重症な細菌感染に対して、抗生剤なしの治療はあり得ません。だからこそ、そのいい薬の効果を今後も維持するためにも、抗生剤の適正使用がとても大事です。

芦田 乃介 (関西学院 聖和幼稚園園医)