保健だより(2015年7月)


園医 芦田先生から

診察の大事さ

 皆さん、今年の梅雨は梅雨らしい梅雨です。そして、例年に比べていろいろな病気が流行しています。溶連菌感染症、手足口病、マイコプラズマにアデノウイルス感染症……集団生活をしていると病気が流行するのは仕方がありません。特にこれらの病気はどれも予防接種がありません。感染するのを防ぐために有効な手段は、手洗い、うがい(有効性に諸説はありますが、しておいて悪くはありません)、それに規則正しい生活と偏りのない食事です。

 さて、タローくん(3才)は今朝から熱を出しています。夕方になっても38℃台の熱が続くので、おひげの先生の所を受診しました。
おかあさん「朝から熱が出ているんです。園でいろんな病気が流行っているので心配で受診しました」
おひげ先生「分かりました。では診察させてもらいましょう」
おひげ先生はタローくんの胸の音を聞きました。お腹を診ました。のどを見ました。首をさわりました。耳の中をのぞきました。手足もしっかり見ました。
おひげ先生「おかあさん、のどもそれほど赤くないし、胸の音もきれいです。首のぐりぐりも腫れていない、お腹も痛がらない、鼓膜も赤くなっていない、手足にぶつぶつも出ていないです。心配しなくていいでしょう、ただのかぜだと思います。おかあさんが心配されている病気の可能性は極めて低いでしょう。かぜなら抗生剤もいらないので、今日はおうちでおとなしくしておいてください」
おかあさん「そうですか、安心しました。だったら、受診しなくても良かったんですね」
おひげ先生「いやいや、それは違います。今日実際にタローくんを診せてもらったから、心配しなくてもいいよと言えたのです。全く同じ症状でも、のどが真っ赤になっていて溶連菌のことだってあります。医者は症状だけで診断を決めているのではありませんし、薬の内容を決めているのではないのです。例えば、咳が出ている時に、胸の音によってはあえて咳止めを出さないことだってあります。これは実際に胸の音を聞かないと分からないことなんです。たまに『今日は連れてきていないんですけど、上のお兄ちゃんがかぜをひいているからかぜ薬を出してください』と言われるおかあさんがおられますが、きちんと診察をしない限り正しい薬は出せないんですよね」
おかあさん「そうなんですか、やっぱり診察してもらうことって大事なんですね」
おひげ先生「その通りです。さあ、タローくん、明日熱が下がっているといいね。では、さようなら」
タローくん「おひげちぇんちぇい、バイバイ」

 今回の例は、診察場でよく聞かれる会話です。あえてここに記したのは「診察の大事さ」を皆さんに知っていただきたかったからです。医師法では、診察せずに薬を出すことを原則的には禁じています(これを「無診察診療の禁止」と言います)。それほど、診察は大事なことなのです。こどもを医療機関に連れて行くことは場合によっては面倒なことかもしれませんが、いろいろな症状が長引いている場合は一度医療機関を受診して、きちんと診察してもらうことが大事です。
 

芦田 乃介 (関西学院 聖和幼稚園園医)