保健だより(2014年10月)

咳止めを使ってはいけない咳があるんです

2014年10月23日 ~園医・芦田先生から~

 2週続けての台風が去って、気持ちのいい秋晴れの日がやっと続くようになりました。どこの園でもいろいろな行事が目白押しのこの時期、朝晩の気温差が大きくなってくると、咳や鼻水のお子さんが増えてきます。夜間咳き込んで眠れないこどもの姿を見るとどうにかしてやりたいと思うのが親の常、「そうそう、この前もらった咳止めがあったから飲ましておきましょう」なんてこともありがちな光景です。でも、ちょっと待ってください!果たして、その咳止め本当に使っていいのでしょうか?「だってこの薬もらったのは1か月前でそれほど古くなっているとも思えないし、咳がひどいから咳止めを使うのは当たり前じゃない」いいえ、当たり前じゃないんです。咳が出ていてもある種の咳止めを使ってはいけないケースがあるんです。それは、その咳が喘息によるものの時です。喘息はご存知でしょうか?風邪と違って夜間眠っている時も咳がひどく出て、胸の近くで呼吸音を聞くと場合によっては「ヒューヒュー」や「ゼェーゼェー」みたいな音が聞こえます。必ずしも熱が出るわけではありません。じゃあどうして喘息の時に咳止めを使ってはいけないのか説明しましょう。
 喘息の時は肺に空気を通す管である気管支の壁が腫れ上がります。イメージとしてはちくわを思い浮かべてください。ちくわの食べる部分が太くなると、中の隙間が狭くなりますよね。同じように気管支の壁が腫れ上がると、空気が通るスペースが狭くなります。人間息を吸うときは胸やおなかの筋肉を使います。だから少々空気の出入り口が狭くなっても、無理やり筋肉を使って息を吸うことはできます。しかし息を吐くときは筋肉を緩めるだけなので、出入り口が狭くなるとうまく空気が吐けません。となると、吸うことはできるけれど吐くことができないので、肺にどんどん空気がたまってしまいます。そのたまった空気を吐き出して肺を縮めてやらないと今度は息が吸えなくなります。息が吸えないと酸素が取り込めないので、体中が酸素不足になってしまいます。そのことを防ぐために、脳みそが体に対して咳を無理やりさせる命令を出し、それで咳き込んで肺にたまった空気を強制的に吐き出させるのです。つまり喘息発作の時の咳は、呼吸を維持するための体の仕組みなのです。
 ところが咳止めの薬を使うとどうなるでしょう。薬は脳みそに作用して咳を出さないように働きます。咳が出ないから、肺にたまった空気が吐きだせません。空気が吐きだせないから、肺がパンパンに膨らんだ状態が続き、新たな空気を吸うことができません。新たな空気が吸えないから、体が酸素不足になります。体が酸素不足になると、当然状態は悪化します。つまり、咳は止まったけれど体全体の状態はどんどん悪くなっていくのです。
 こどもの体はデリケートです。ただ単に症状を抑える薬は、こどもにとってマイナスに働くことは他にもあります。ある種の下痢に対して下痢止めを使ってはいけませんし、むやみやたらに解熱剤を使うと、かえって病気が長引きます。この時期夜中の咳がひどい時は、いわゆる素人判断で薬を使うことはやめて、翌朝小児科を受診されることを強くお勧めします。


 

芦田 乃介 (関西学院 聖和幼稚園園医)