保健だより(2014年6月)

*こどもの食物アレルギーがわかる本*

2014年6月17日 ~園医・芦田先生から~

 こどもの病気の中で親御さんの関心の深いものとして食物アレルギーがあります。育児相談や乳幼児健診で、相談要件の多くを占めるのが食物アレルギーです。そこでどうして皆さんの関心が深いかを私なりに考えてみました。
① 頻度が多い
食物アレルギーの有病率は、乳児期で5~10%、幼児期で5.1%、学童期で2%前後とのデータが出ています。
② 症状がはっきりと目に見えるのでわかりやすい
食物アレルギーの最たる症状は皮膚症状です。他の内臓疾患と違って症状が一目瞭然です。
③ 食物が原因なので疾患が身近に感じられる
とても日常的な行為である食事が原因になるので、親御さんにとっても現実味がある
④ マスコミやインターネットで取り上げられる頻度が多い
食物アレルギーに関する記事や書き込みは山ほどあり、中には親御さんの不安をあおるような内容もあります。そうしたものを目にする機会が増えると当然関心も高まります。
他にも色々な要因があろうかと思いますが、この中で一番問題なのは④です。特にインターネットの書き込みが親御さんを混乱に貶めているケースが多々あります。たとえば、
【妊娠中の母親の食物除去によって児のアレルギー疾患の発症率が低下する】
【授乳中の母親の食事制限によってアレルギー疾患の発症が予防できる】
【乳児の離乳食の開始時期を遅らせることでアレルギーの発症を予防できる】
なんて書き込みをネット上でご覧になった親御さんもおられると思います。実はこの3つに科学的根拠は全くありません。特に3番目は、逆にアレルギー疾患を増加させるデータが北欧で出ています。だから日本小児アレルギー学会ではこれらの措置を進めていないばかりか、どちらかと言えば否定的態度を示しています。
 このように一般の方の認識と食物アレルギーの正しい知識には大きな差が生じています。その差を埋めるために出された本があります。それがこちらです。
「食物アレルギーのすべてがわかる本」 海老澤 元宏 監修 講談社(本体1300円)
著者の海老澤先生は小児アレルギーの世界では知らない人がいないほど高名な先生で、なおかつ一般市民向けの講義も数多く手掛けておられます。私も早速この本を購入して見てみましたが、内容がすっきりまとめられており、また親御さんが誤解されているであろう部分(検査陽性=食物除去)を懇切丁寧に解説されています。正しい治療、正しい対応にはまず正しい診断が必要です。「念のために」が無効なだけでなく、有害になることを知っていただくためにも、ぜひこの本を一度読んでいただきたいと思います。

 

芦田 乃介 (関西学院 聖和幼稚園園医)