2019.3.15 第70回卒業式式辞『誠実を胸に刻み生きる』

[ 2019年3月16日 更新 ]

2019年3月15日  中学部長 安田栄三

中学部長 安田栄三
 いよいよ卒業の日を迎えることとなりました。保護者の皆様には、三年間本当にお世話になり、ありがとうございました。素晴らしい生徒たちを預けてくださり、心から感謝いたしております。この子たちのおかげで私たちも、かけがえのない幸せな時間を過ごすことができました。
 神様に守られたこの若者たちの未来を、これからも支えていただきますよう、心からお願い申し上げます。

♪(合唱曲A組 365日の紙飛行機 B組 友~旅立ちの時)

 「認め合おう・高め合おう・助け合おう」をスローガンとして出発した生徒会、千刈キャンプでは、 1年生がもっと仲良くなって自分から話せるようになるにはどうしたらいいか、真剣に話し合っているリーダーたちの姿が印象的であった。まだ見ぬ新入生のために真心をもって準備し、一緒に泥だらけになってくれた3年生の思いは、確実に1年生に伝わっている。
 「輝け、若人よ」をテーマに繰り広げられた体育大会、沢山の生徒が実行委員に立候補してくれた。今までになかった応援の仕方は、十分に下級生を楽しませてくれた。入場行進の素晴らしさ、 応援旗の絵の美しさや、ダンスのレベルの高さ、その指導にあたってくれた3年生、中には自分が怪我で踊れない辛さを胸にしまい込んで、一生懸命指導の側に回ってくれたダンス部員もいた。
 5月のある昼休み、いつものように食堂のテーブルを拭き始めようとすると、3年生の生徒たちがやってきて、みんなでテーブル拭きを始めてくれた。ドラマのような時間だった。その波紋はさらに消えることはなく、今も下級生たちが片づけを手伝ってくれている。この1年間も、毎朝登校路のごみ拾いをしてくれた生徒がいた。
 中学総体や他の大会でもすべてのクラブが本当に良く頑張ってくれた。仲間のため、また下級生の指導に尽力してくれた3年生、その陰にはどれほどの苦労があっただろうか。また、部活以外で頑張ってくれている生徒たちも沢山いた。見えないところでの努力と、それぞれの活動に心から感動を覚えた。
夏のオープンスクールでも沢山の3年生が奉仕してくれた。小学生や保護者に、笑顔と真心を伝えてくれた、その優しく明るい姿に心から感謝したい。笑顔で帰って行った小学生たち、一生懸命に案内してくれた生徒たちの姿が輝いていた。
 美しいハーモニーが響き渡った音楽コンクール、文化祭での演劇の誠実な取り組み、演者と裏方が一体となって取り組んだことを、君たち自身が誇りに思っている喜びが伝わってきた。
 情熱溢れる弁論大会、また弁論大会の題字を何枚も心を込めて書いてくれた生徒たちもいた。
 中学生の歌声や、丁寧な言葉には、人の心を変えていく果てしない大きな力がある。
 三年生のみんなが中学部に残してくれた美しい歌声は、下級生にとって大きな宝物となった。

♪(合唱曲C組 手紙~拝啓十五の君へ D組 結(ゆい))
卒業生

 この春、それぞれの夢に向かって船出をする中学生たち。修学旅行で訪れた長崎でも、親元を離れて高校へ進学する中学生たちがいる。そんな長崎の修学旅行では、病気の身体に鞭打って、初対面のみんなを心から信じ、原爆の悲しさを話して下さった被爆者の方々や、下平作江さんとの出会いがあった。
 「平和の原点は、人の痛みがわかる心をもつこと。もっと生きたい、そう願って亡くなったナガサキに眠る人々の想いに寄り添い、皆さんは何があっても生きる勇気を選んでほしい」
 「生きて、生きて、生き抜いて。どうか皆さんが生きていて良かったと思える人生にしてほしい・・・」
 話の最中に涙を流されたのは、みんなが真剣に話を聴いてくれたからですと仰っておられた。
 下平さんは、3年生全員が退場するまで見送ってくださった。何度も手術を繰り返しながら、それでも今、生きていることにご自身が感謝しておられる。人の痛みがわかる心、それは多くの悲しみや苦しみを乗り越えてこそ、初めて自分のものになるような気がする。
 家族のごとく接してくださった出水(いずみ)市での民泊、素朴であたたかい民家の方(かた)からも「またぜひ関西学院の生徒さんに来てほしい」そんなお手紙をいただいた。まだ見ぬ君たちのために、心を尽くしてご準備してくださった 地元の方への感謝の気持ちを忘れることはない。
 皆から愛されている君たち一人一人が、誰かに必要とされる日は必ず来る。その時まで、しっかり自分を磨いてほしい。命は、ほかの誰かを幸せにするために使うもの、僕はそう信じている。
 中学部を卒業し、これからはそれぞれの道が待っている。でも何があっても大丈夫、主に用いられることを感謝し、すべてを神様にゆだねて生きてゆけばよい。ここで育てた絆が、どんな時にも目に見えない支えとなる。
 「神は真実な方、あなた方を耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、逃れる道をも備えてくださる」何度この聖句に励まされてきたことだろうか。
 丁寧に生きること、それは試練さえも感謝して受けとること。試練の向こう側にこそ、明るい希望の光がきっと輝いている。

♪(合唱曲 E組 サザンカ F組 プレゼント)

 9月に起きた北海道地震で、一つ下の妹さんを失った17歳の高校生は、こう語っておられる。
 「妹の写真がきれいに出てきて。妹が使っていたブレザーも出てきて。吹奏楽をやっていたんです。きれいな顔でした。本当に頑張ったねって、ずっとそれを強く思っているんで。
 楽しかったことはたくさんあったので、これからまたそれを背負って頑張っていこうかなって。
 生きて出てきてくれたらもちろんうれしかったけど、顔が見られるっていうだけで本当に自分は幸せなので。」行き場を失った人々に残ったのは、人が人を救い、支え、寄り添う「絆」であった。
 24年前、この上ヶ原の大地をも揺るがした大きな地震、こうしてみんなの顔を見ていると、 あの時 安否を確認するために走り回って探した生徒たちの姿がよみがえる。電気の灯りを失った西宮の夜空は、いつもより星がきれいに見えた。数か月後に開通した電車の中では、見知らぬ者同士が自然に声を掛け合う姿が見られた。
 自然、そして人本来の優しい時間が、あの時、確かに流れていた。
 壊滅的だと思えたこの街は、明日を信じ、決して諦めなかった人々の力で復興をもたらす。
 神戸にある1・17希望の灯りには、 「奪われたすべての命と、生き残った私たちの思いをむすびつなぐ」と記されている。
 もっと生きたい、そう願って亡くなられた方々の分まで、私たちはしっかりと生きる使命がある。どうか その決意を、君たちの若い魂にしっかりと刻んでほしい。

♪(全員合唱 Hail Holy Queen)

 人間力の最高峰は、誠実さと優しさ、そして真心、それはすでにみんなの胸の中にある「美しい心」から生まれる。学びを深めるということは、「誠実」を胸に刻むこと。誠実さは必ず希望につながる。
 新制中学部になり矢内先生のもと、確かに受け継がれてきた中学部の精神、それを表す「感謝・祈り・練達」この言葉を指針とし、三日月の輝きを放ち、人の痛みのわかる、人に奉仕できる立派な人間に成長してほしい。
 君たちが卒業してゆく中学部だからこそ、僕はこの学校を誇りに思う。

 自分の夢に向かって、誰かの役に立つことを願って、中学部を、この学び舎を巣立つ仲間もいる。そんな一人一人の歩みを 心から応援したい。あきらめず前に進めば、必ずゴールにたどり着く。だからこそ今、この一日を、この瞬間を大事にしなければならないと思う。

 大きな足跡を残してくれた3年生、在校生は、そのさりげない優しさを、笑顔の挨拶を、そしてくじけない勇気を、しっかりと受け継いでほしいと願う。
 明日からそれぞれの道に進む君たち。かけがえのない自分の夢を大切にして歩んでください。
 三年間、本当にありがとう。そして卒業、本当におめでとうございます。