2016.3.15 第67回卒業式式辞「卒業生への手紙」

[ 2016年3月15日 更新 ]

2016年3月15日  中学部長 安田栄三

中学部長 安田栄三
 いよいよ 卒業の日を迎えることとなりました。保護者の皆様には、三年間、本当にお世話になり、心から感謝いたしております。このような生徒たちと出会えて、私たちはとても幸せでした。神様に祝福されたこの子たちの未来を、これからも変わらずに励ましていただきますよう、心からお願いいたします。

 まだ あどけなさの残る君たちに、入学式で白木少年の話をしてから、3年の月日が流れた。今日という日も、やがて終わってゆく。そのかけがえのない今日という一日のために、用務さんや在校生、そして保護者の方とも一緒になって、少しでも良い一日にしようと、みんなで準備をしてきた。

 新入生を迎えた千刈キャンプ、君たちから選ばれた三年生のリーダーは、泥んこになって下級生のために力を尽くしてくれた。このキャンプで、リーダーたちが新入生に伝えたかったことを、一生懸命にまとめて語ってくれた三年生、「頑張っている人を心から応援できる、自分を支えてくれる人のために、誰も見ていないところでも精一杯頑張れる、謙虚で信頼できる友達がいて、自分の考えで行動できる、そんな人になって下さい」この言葉が、後輩の新入生の心に 深く刻まれていった。
 前日の雨で 泥んこになったグラウンドを、みんなで整備して始めた体育大会では、白熱した競技や応援合戦、趣向を凝らしたクラブ紹介、ダンス同好会のみんなが引っ張ってくれた女子生徒全員のダンスなど、中学部生らしい姿を見せてくれた。
 秋には、「彩(いろどり)」ということばをテーマに、見事な文化祭を展開してくれた。さわやかな歌声と演奏で魅了された音楽コンクールやグリークラブの歌声、各部の展示や舞台はもちろん、観る人を楽しませてくれた演劇コンクール、中庭や体育館での吹奏楽部やダンス同好会のパフォーマンスなど、三年生最後のステージを飾るのにふさわしいものであった。
 弁論大会では 弁士はもちろん、弁論の演題を、何日もかけて書いてくれた三年生、また弁士の練習にずっと付き合ってくれた実行委員にも、本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。
 保健室にいる後輩に、休み時間いつも声をかけに来てくれた先輩、三年生のみんなが中学部に残してくれたさりげない優しさは、下級生にとって大きな宝物となった。 

 新しい仲間との出会い、たくさんの書物との出会い、ここで培った絆が、どんな時にも目に見えない支えとなる。君たちが懸命に乗り越えてきた壁は、後輩のための確かな礎へと姿を変えた。創立以来126年に渡り、受け継がれてきた中学部の精神、それを表す「感謝・祈り・練達」、三日月の輝きを放ち、人に奉仕できる立派な人間に成長してほしい。
卒業生

 卒業式の定番とも言える 全国の中学生の心を一つにつなげた歌「手紙~拝啓15の君へ」。2番の歌詞には「自分は、どこへ向かうべきか。青春の海は厳しい。でも 人生のすべてに意味がある」15歳という最も多感な時期、胸が張り裂けそうになった瞬間もあっただろう。しかし、その経験があるからこそ、本当に人の痛みのわかる人間になれる。
 長崎の修学旅行では、病気の身体に鞭打って、初対面のみんなを心から信じ、原爆の悲しさを話してくださった下平作江さんとの出会いがあった。
 「平和の原点は、人の痛みがわかる心をもつこと。皆さんは 何があっても生きる勇気を選んでほしい」話し終えて涙を流されたのは、みんなが真剣に話を聴いてくれたからだと仰っておられた。遺構めぐりを三時間近くも案内して下さった被爆者の方の想いも君たちはしっかり受けとめてくれた。命は、ほかの誰かを幸せにするために使うもの、被爆者の方と話すたびに、僕はそう教えられる。
 みんなが松浦でお世話になった民宿の方からも、お手紙をいただいた。「我が家に来られた子供たちは、素直で明るくにぎやかで、人の気持ちを思いやる本当に良い子たちでした。おかげで、家の中が明るくなり、私たち二人、久しぶりに大きな声で笑うことができ、元気になりました。主人は、今度来たときは、野菜をたくさん食べさせんばって言いながら、頑張っています。」

 君たちが入学してから、二年間、担任として精一杯、共に生活してくれた早川先生は、「生徒の笑顔のために、そして生徒の未来のために 最善を尽くそうという気持ちでやってきました」「教え子のみんなに対して、これからも自分は恥ずかしくない生き方をしたい」そう仰って、新たな道を歩み始められた。大学生のコーチやリーダーはじめ、多くの人に本気で接してもらえた君たちは、本当に幸せだと思う。

 五年前に、大きな被害の出た石巻市の大川小学校では、全校児童108人のうち、74人が 津波にのみこまれた。君たちと同じ、今は15歳になった少年が、小学校の慰霊碑に手を合わせ「これからは震災の真実をいろんな人に伝えていきたい」そう語っていた。当時、君たちの先輩も現地に駆け付け、泥出しのボランティアをおこなった。作家の浅田次郎さんの作品の中に、こんな文章がある。「力も何もいらない。優しさだけがあればいいんだ。大地も空も時間も、全てを覆い尽くすほどの優しささえあれば」
 残念ながら、卒業した児童たちが進学した大川中学校は廃校となったが、大川中学校の分まで、みんなは開かれた未来に向かって、しっかり羽ばたいてほしい。

 苦しいから、つらいからこそ見える美しい景色が必ずある。君たちの未来に、失敗などない。自分が中学生の頃、右か左か決断に迷うことがあれば、厳しい道を行けと教えられた。中学部を卒業し、君たちには、これからそれぞれの道が待っている。君たちが15年間育ててきた美しい心を、一人一人が、輝く生き方への指針にしてほしい。
 「神様は決して、乗り越えられない試練を お与えにはならない」試練の向こう側にこそ今まで見たことのないような希望の光が、きっと輝いている。
 出会いがあれば、悲しい別れもある。しかし、どんな舞台に飛び込んでも、君たち一人一人は、必ず誰かに必要とされている。自分が生かされているという想い、そして勇気と希望を持って、たとえどんな小さなことでも、心を込めておこなえる人であってほしいと願う。
 君たちのおかげで、僕はこの中学部を、本当に好きになることができた。君たちが卒業してゆく学校だからこそ、僕はこの中学部を誇りに思う。
 三年間、誠実に、謙虚に頑張った君たち、本当にありがとう。そして、中学部の卒業、本当におめでとうございます。

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