2015.3.14 第66回卒業式式辞「祈り、そして震災20年」

[ 2015年3月14日 更新 ]

2015年3月14日  中学部長 安田栄三

中学部長 安田栄三
 いよいよ中学部卒業の日を迎えました。保護者の皆様には、いつも支えていただき、心から感謝申し上げます。
 三年生には、今から最後の授業をしたい。真新しい制服に身を包んでから、三年の月日が流れた。ここから見ていても、みんなの制服姿が、男子も女子も、とても輝いて見える。
 「個の灯火を多(他)に灯そう」今年度の生徒会のスローガンは、心に響く言葉であった。そこから生まれたみんなの明るさが、この三年間を思いやりの溢れる毎日にしてくれた。

 美しい長崎の五島列島を舞台にした「くちびるに歌を」という作品。主人公は、悩みを抱えながらも、前向きに生きようとする15歳の中学生たち、その主題歌は「手紙~拝啓十五の君へ」、NHKのコンクールで、全国の中学生の心をひとつに繋げた。この歌を作ったアンジェラ・アキさんは、15歳の時に強い決意を持って、単身アメリカへ渡った。2番の歌詞には、「荒れた青春の海は厳しい……でも、人生のすべてに意味があるから 恐れずにあなたの夢を育てて」とある。
 「右か左か判断に迷うことがあれば、厳しい道を選べ」僕は若い時、そう信じて生きてきた。15歳という最も多感な時期、そんな君たちにも、胸が張り裂けそうになった瞬間があったと思う。しかし、その経験があるからこそ本当に人の痛みがわかる人間になれる。
 「勇気を失うな、くちびるに歌を、心に太陽を持って」夢を見失わず、「前進」してほしい。
「私たちが入学して、関学がだめになったとは絶対言わせない」一人の生徒が3年前に語ってくれたこの言葉通り、みんなの意気込みは、様々な場面で感じられた。
 新入生を迎えた千刈キャンプ、選ばれたリーダーたちは、泥んこになって下級生のために力を尽くしてくれた。「私の周りに、こんなにたくさんの素敵な同級生がいること、みんなのことが、とても頼もしく輝いて見えました」そう語ってくれる三年生がいた。
 吹奏楽部の演奏による入場行進から始まった体育大会では、溌剌(はつらつ)とした競技、伝統の応援合戦、まるで一つのクラスのように気持ちが一つになった女子生徒全員のダンス、趣向を凝らしたクラブ紹介など、中学部生らしい姿を見せてくれた。
 秋には、「万華鏡」という言葉をテーマに、見事な文化祭を展開してくれた。圧倒された文化部の展示、心のこもった歌声で魅了された合唱コンクールや、素敵なメッセージがあふれた演劇コンクール。吹奏楽部やダンス同好会は、三年生最後を飾るにふさわしい演奏と演技を披露してくれた。
卒業生

 弁論大会での弁士のメッセージは勿論、弁論の演題を何日もかけて、何回も書き直して準備してくれた三年生にも頭が下がる思いだった。
 クラブ活動で頑張っている姿、引退してからも、下級生の試合や練習を助けてくれた三年生たち。足を痛め、充分な練習ができないながらも、仲間のために少しでも良い練習や試合ができるよう力を尽くしてくれた生徒もいた。
 人は歌うことができる。歌には人の心を変えていく果てしない大きな力がある。三年生のみんなが中学部に残してくれた美しい歌声と、さりげない優しさは、下級生にとって大きな宝物となった。「中学部生活はとても楽しいです。感謝の気持ちを伝えるために、卒業まで自分にできることを一生懸命にやりたい」そう語ってくれた三年生の言葉は、僕に確かな勇気をくれた。
 皆から愛されている君たち一人一人は、必ず誰かに必要とされている。命は、ほかの誰かを幸せにするために使うもの、僕はそう信じている。中学部を卒業し、これからはそれぞれの道が待っている。でも何があっても大丈夫、主に用いられることを感謝し、すべてを神様にゆだねて生きてゆけばよい。ここで培った絆が、どんな時にも目に見えない支えとなる。
 神様は、決して乗り越えられない試練を、お与えにはならない。丁寧に生きること、それは試練さえも感謝して受けとること。試練の向こう側にこそ、明るい希望の光が、きっと輝いている。
 125年に渡り、受け継がれてきた中学部の精神、それを表す「感謝・祈り・練達」この言葉を生涯忘れずに、三日月の輝きを放ち、人の痛みのわかる、人に奉仕できる立派な人間に成長してほしい。自分が生かされているという想い、そして勇気と希望があれば、どんな困難があろうとも真っ直ぐに生きてゆける。君たちが卒業してゆく中学部だからこそ、僕はこの学校を誇りに思う。
   
 「友~旅立ちの時」ゆずの二人は、4年前、被災地でコンサートを開いた。あと1週間で迎えられるはずだった卒業式……「親友が津波で亡くなったという実感はまだありません。この歌声が友に届けばいいと願います」参加した高校生はこう語った。行き場を失った人々に残ったのは、人が人を救い、支え、寄り添う「絆」であった。
 阪神淡路大震災からも20年の月日が流れた。受験を前にして、命を落とした6年生の親御さんが、中学部の制帽を買いに来られ、棺に納められた話を君たちにした。もっと生きたい、そう願って亡くなられた方々の分まで、私たちは、しっかりと生きる使命がある。
 昨年秋に倒れた時に、僕の脳裏をよぎったのは、一生懸命に頑張る君たちの姿であった。意識が遠のく中、もう一度みんなに会いたい、その気持ちが僕を救ってくれた。みんなに励まされ、助けてもらってばっかりの三年間、できることなら社会人に、そして人の親となった君たちに、もう一度会いたい、その時まで、この心臓の鼓動が止まらぬことを願うばかりだ。三年間、謙虚に、誠実に、おおらかに頑張った君たち。本当にありがとう。そして、卒業、本当に、本当におめでとうございます。15歳の、君たちへ。