2008年度シンポジウム

[ 編集者:先端社会研究所   2014年7月24日 更新 ]

先端社会研究所 2008年度国際シンポジウム「戦争が生み出す社会PartI」

 本シンポジウムでは、戦時期における植民地支配や占領が、戦後いかなる影響を及ぼしたのかという点について、主に知の支配という観点から討議する。
近代植民地支配が、単なる侵略と異なるのは、植民地支配に関する明確なプログラムが組まれるという点である。たとえば、日本では、すでに19世紀前半に、中国や朝鮮半島の植民地支配に関する計画が、思想家のあいだで議論されはじめていた。戦争を引き起こす要因のひとつが、領土の拡張にあるとすれば、植民地支配が他者に関するいかなる知によってプログラム化されたのかについて問うことは、戦争を考えるうえで不可欠である。本シンポジウム第一部では、特に満州国成立にいかなる知識人が関わり、どのような役割を果たしたのかについて討議する。
 また、第二部は、第一部の議論を受けて、戦時下に構築された知が、現在の知の枠組を支えているのか、あるいは、今日の他者に関する知は、新たな様相を呈しているのかについて議論する。また同時に、単に知に関する分析だけではなく、実際に占領や支配の結果、人生が大きく代わってしまったひとびとや家族のその後について、インドネシアの事例を通じて問い直していく。

プログラム

13:00 ~ 13:15 シンポジウム趣旨説明  荻野昌弘(関西学院大学)

第一部 「アジア太平洋戦争と他者に関する知」

13:15 ~ 13:40 第一報告 色音(北京師範大学)
        「満州国民族政策における植民地民族学の役割について
         -大東亜戦争で活躍した日本人学者たちの群像-」

13:40 ~ 14:05 第二報告 全京秀(ソウル大学校)
        「帝国日本の戦争と京城帝国大学の学術調査
         -大陸文化研究会の活動を中心に-」

14:05 ~ 14:20 第一部コメント 山泰幸(関西学院大学)

14:20 ~ 14:35 第一部討論

14:35 ~ 14:50 ≪休憩≫

第二部 「『歴史』の現在 -第二次大戦後、他者表象は変容したのか」

14:50 ~ 15:15 第三報告 エヴェリーネ・ブッフハイム(オランダ戦争資料研究所)
        「変容する忠誠心、転換するアイデンティティ
         ―戦争によりオランダ人と日本人の間に生まれた子供たちの戦後―」

15:15 ~ 15:40 第四報告 阿部潔(関西学院大学)
        「戦後日本の『健忘症』とポスト植民地主義的な『外国人嫌悪』
         ―民衆意識における『多民族国家日本』の抑圧―」

15:40 ~ 15:55 第二部コメント 渡邊勉(関西学院大学)

15:55 ~ 16:10 第二部討論

16:10 ~ 17:00 全体討論


司会 荻野昌弘


更新日:2009-02-25; 著作権者:ASR

関西学院大学先端社会研究所 2008年度第2回シンポジウム 「大阪国際空港『不法占拠』はなぜ補償されたのか―住民・行政・研究者の立場から―」

日時

2008年10月9日(木) 13:30~17:00

場所

関西学院大学上ヶ原キャンパス 関西学院会館レセプションホール

この中村地区は、第二次世界大戦中に徴用で飛行場建設に従事させられた朝鮮半島出身の人びとの飯場をもとに形成された集落です。地区の立地が大阪空港内の国有地に位置したため、戦後半世紀の長きにわたり国からいわゆる「不法占拠」地区とみなされてきた歴史をもちます。しかし、2001年以降の国・県・市と地元自治会とのねばり強い話し合いの結果、このたび、近隣に建設される市営住宅への集団移転が実現しました。
このシンポジウムでは、パネラーの方々に、集団移転までの歴史的経緯や移転事業の進め方、さらには、この事業の社会的意義等について、地元住民・行政・研究者といったそれぞれの立場からご発言いただくとともに、市民・行政・大学との連携のなかから新しい公共的な知を紡ぎだす道を模索しました。

ポスターおよびプログラム  [ 3.44 MB ]PDFファイル

先端社会研究所創立記念シンポジウム 「大学と市民をつなぐ学問の可能性」を聞いて

先端社会研究所創立記念シンポジウム「大学と市民をつなぐ学問の可能性」が2008年7月13日(日)に行われました。

関西学院大学先端社会研究所創立記念シンポジウム「大学と市民をつなぐ学問の可能性」を聞いて

 嘉田滋賀県知事の報告は、たいへん興味深いものであった。長い間携わってきた琵琶湖調査の内容を示しながら、人々の生活に根ざした水と人との関わりを、具体的かつわかりやすく解説していただいた。特に、過去の写真から過去の出来事や生活を掘り起こしていく調査や、市民を巻き込む「ホタルダス」のような調査は、大変興味深いものであった。

 今回のシンポジウムからは、私自身多くの示唆をえることができ、大変有意義なシンポジウムであった。それゆえ、シンポジウムの内容に触発されていくつか考えさせられる点もあった。

 第一に、我々研究者の位置取りの問題である。市民、行政、大学が連携していくとしたら、研究者あるいは大学は、当然市民、行政に対して完全に中立的な立場から研究をしたり、提言したりすることはできないだろう。また中立的であることが必ずしもいいとは限らないかもしれない。そのとき、我々研究者はどのような立場で、市民や行政と連携していけばいいのか、明らかにする必要があるのではないか。ただそこで重要なのは、行政とは誰か、市民とは誰かについて、きちんと議論しておく必要があるということである。市民や行政に対して、研究者は何ができるのかと考えたとき、市民や行政がだれであるのかがわからなければ、どのような連携、貢献ができるのかわからない。

 第二に、ミクロな視点とマクロな視点の問題である。今回の嘉田知事の報告は時間の関係で、詳細な話を伺うことはできなかったが、知事職という立場は、全体を俯瞰する立場から政策を実施していく必要があるだろうから、当然マクロな視点が必要となる。ただ知事がこれまでおこなってきた調査はミクロな視点による詳細な調査であった。数量主義に代表されるマクロな視点に対して、知事は批判的であったように感じられたが、実際にミクロな視点とマクロな視点をどのように調整して、実際の政策実施につなげているのかが、「市民と大学を架橋する」というテーマを考えたとき、重要な視点であると思われる。社会学における調査研究の利点は、ミクロな視点、生活者の視点に立った調査が可能であるという点であろう。しかし、それを実際の政策に転換していく、あるいは市民や行政に貢献していくためには、ミクロな視点をいかにしてマクロな視点につなげていくかが大きな課題であると思われる。

 第三に、第一、第二の点にも共通しているが、具体性が必要であるということである。「市民と大学を架橋する」というキャッチフレーズはとても心地よいが、具体的に何ができるのか、何をすればいいのか、について我々は考えなければならない。議論も必要であるが、結局は実践の問題であるのではないかと思われる。実際に「市民と大学を架橋する」試みをおこなっていく中で、市民、行政、大学の間のよりよい関係を構築していくことができるに違いない。


渡邊勉(関西学院大学先端社会研究所副所長)

更新日:2008-08-27; 著作権者:ASR

先端社会研究所創立記念シンポジウム「大学と市民をつなぐ学問の可能性」

基調講演: 嘉田由紀子
日時: 2008年7月13日(日) 13:30~16:30
場所: 関西学院大学上ヶ原キャンパス 人間福祉学部G号館202号室

市民と大学を架橋する

 子どものいじめ、環境破壊、食の安全をはじめとして、私たちの身の回りでは数多くの問題が日々起こっています。このような問題を解決するためには、今までのように行政に任せようという陳情型の市民運動によるのではなく、市民が自分たちで政策提言をしていくことが必要でしょう。そこでわれわれ市民に求められるのは、市民それぞれが自分たちの身の回りで起こっていることを知り、分析し、政策提言をする力を養うこと、つまり「市民の調査力」を涵養することです。
 今春開設した関西学院大学先端社会研究所では大学の研究を市民に開いていくことを基本方針にして、市民、大学、行政の共同研究の可能性を追求していきます。今回の開設記念シンポジウムでは、ホタルダス、水環境カルテなどユニークな住民との共同調査を研究の柱としてこられた嘉田由紀子さんに、大学と市民、行政をつなぐ研究のあり方について講演をお願いしました。その講演を受けて、当研究所の高坂健次氏(社会学)、芝野松次郎氏(社会福祉学)で、市民に開かれた研究のあり方についてディスカッションを展開します。

プログラム

13:30~13:45
挨拶: 荻野昌弘(先端社会研究所長)

13:45~14:45
講演: 嘉田由紀子(滋賀県知事、元京都精華大学教授)

15:00~16:30
パネルディスカッション: 嘉田由紀子
             高坂健次(関西学院大学社会学部長)
             芝野松次郎(関西学院大学人間福祉学部長)

司会: 古川彰(関西学院大学社会学部教授)

嘉田由紀子氏プロフィール

京都大学大学院修了(農学博士)、滋賀県立琵琶湖博物館、京都精華大学教授を経て2006年から滋賀県知事。専門は環境社会学。琵琶湖での人々の暮らしについての詳細な研究を30年以上つづけている。また学部時代に探検部員として訪れたアフリカ・マラウイ湖での調査も継続している。著書に『水と人の環境史』、『生活世界の環境学』、『水辺遊びの生態学』、『水辺ぐらしの環境』、『環境社会学』、『生活環境主義でいこう!―琵琶湖に恋した知事―』など多数。

お問い合わせ先

関西学院大学先端社会研究所
〒662-8501
兵庫県西宮市上ケ原一番町1-155
TEL:0798-54-6085 FAX:0798-54-6089 
E-mail: asr@kwansei.ac.jp

大学と市民をつなぐ学問の可能性チラシ
大学と市民をつなぐ学問の可能性チラシ裏

更新日:2009-02-25; 著作権者:ASR