2009年度

[ 編集者:先端社会研究所   2014年9月5日 更新 ]

2009年度定期研究会(第11回)

報告者およびタイトル

Ralf FUTSELAAR: Beyond Social Construction: A Critical History of Race
Masashi IWASA: Mediated strangeness and the Location of 'War' in Japan in an Atmosphere of Neo-Liberalist Anxiety
Kohei KAWABATA: Liberated from stigma, fettered by freedom: A case study of young Zainichi Koreans in a regional city of Japan
Yasuto NAKANO: Stable and Unstable Discourse : Readers' Contributes of Japanese Newspapers in the Heisei era
Teruyuki TSUJI: Narrating the Nation through Race: Ethnographic Research and Census-taking in Wartime Japan

2009年度定期研究会第10回(共同研究「戦争が生み出す社会」第12回)

講師:池田貴夫(北海道開拓記念館)
タイトル:日本領期における樺太移民とその後-「文化」から人の生きざまを掘り起こす-

概要:
 日露戦争の結果南サハリンが日本領になると、当然のことながら、多くの日本人が樺太に移住し、樺太における日本人人口はおおよそ40万人規模に達していったとされる。後には朝鮮人も募集や連行などで樺太に渡り、その人口は数万人規模となっていった。日本がアジア・太平洋戦争に敗戦すると、日本人は北海道以南各地に引き上げていったが、朝鮮人はサハリンに残されることとなった。その後、朝鮮人はソ連体制下でサハリンに暮らしてきたが、近年においては、日本領時代を経験した多くの朝鮮人が、韓国に永住帰国するようになった。
 今回の発表では、このような樺太めぐる人の動きのなかでおこった「文化」の動きについて、さまざまな角度から見つめなおし、樺太生活経験者の生きざまを掘り起こしてみたい。

プロフィール:
 現在、北海道開拓記念館事業部展示課学芸員兼学芸部学芸第二課学芸員。著書に、『クマ祭り-文化観をめぐる社会情報学-』(2009、第一書房)、『ウオッカとキムチをどうぞ-体制変化を生き抜いたサハリン朝鮮民族の文化-』(近刊、風響社)。


講師:舟山直治(北海道開拓記念館)
タイトル:北海道における引揚者の年中行事

概要:
 報告者は、北海道開拓記念館が2000年から2009年度まで実施している「北方文化共同研究事業」の分担者の一人として、北方四島の元島民が根室市で行っている神社祭祀と、札幌市周辺に在住する中国帰国者の年中行事について調査を行っている。 根室市における北方四島の神社祭祀は、1945年にソ連軍が千島列島に侵攻したことにより、当時四島に56社あった神社の内、避難島民が12柱の神体を同市内へ遷したことに始まる。現在、10柱の仮殿が金比羅神社内にあり、元島民とその子孫達が祭日にあわせてそれぞれの祭りを行っている。
 また、札幌では中国残留孤児、残留婦人とその家族による「中国帰国者の会」が、会員の交流を目的に、春節頃には新年会、お盆後には秧歌(ヤンガー)祭りを行っている。
 ここでは、二つのグループの年中行事について写真資料を中心に提示し、元島民や中国帰国者が北海道へ移住したことで培った生活文化の一端と、その問題点について報告したいと考える。

プロフィール:
 現在、北海道開拓記念館総務部企画調整課長兼学芸部学芸第二課長兼学芸員。記念館の学芸員として伝統文化に携わるほか、道内の民俗芸能の伝承などについても研究を続けている。

(研究会の報告)
 今般の研究会では、本研究所の島村恭則兼任研究員(関西学院大学社会学部)が進めている戦後引揚者の歴史・社会調査の一環として、北海道開拓記念館から学芸員お二人を招き、サハリン/樺太、中国からの移民・引揚者についてご報告頂いた。

 本報告でも、これまでのものと同様、戦争が依然として「社会」を生み出し続け、多くの人の人生に影響を与えていることが例示された。日本の一部であったサハリン/樺太では、戦前から多くの移民が流入し、彼らの持ち込んだ文化が交錯し、抗争と妥協の中で、それぞれが独自性を強めたり、混交し合って新たな文化を生み出したりしていた。その後もソ連による支配が強まる中で、人々は残留するか、「日本人」、「朝鮮人」として「帰国」するかなどの選択を迫られ、複数のアイデンティティを創出、それらを流動的に表出することで生き残ってきた。これは、移民研究の主要テーマの一つであり、国内のみならず、国際的な研究の動向に、十分資する研究、調査であるとの私見をもった。

なお、本報告を纏めた論文は、島村研究員が来年度の出版を目指して現在編集を進めている書籍に掲載される予定である。

(報告者=辻専任研究員)

2009年度第9回定期研究会

日時:12月4日(金)17:00~19:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
講師:山路勝彦(関西学院大学社会学部教授)

タイトル:日英博覧会と<人間動物園>

要旨:
 19世紀は博覧会の世紀であった。西欧の帝国主義国家が近代の産業界の成果を展示する催しとして華美な装飾を競い合っていたのが、この時代の博覧会には見られる。1851年のロンドンでの万国博は「水晶宮」と呼ばれた派手な展示館が出現した。しかしながら、こうした華美な世界の裏側で、驚くべく光景も見られた。主催者は植民地から住民を連れてきて、その「未開性」をみせるために「人間展示」を行なったのであった。この展示方式は1903年にロンドン郊外で行なわれた日英博覧会でも登場した。そこには、台湾のパイワン族、北海道のアイヌ民族が連れてこられた。
 いったい、その目的は何であったのであろうか。実は、この日英博覧会については2009年4月5日、NHKがスペシャル番組「シリーズJAPANデビュー」の第一回放送として放映している。ところが、この番組に対しては、恣意的な操作を指摘して1万名以上の視聴者が抗議し、裁判闘争を開始した。博覧会研究は、本来は歴史学や人類学の主題であったが、思わぬ方向にさまよい始めた。本報告は、これらの出来事を意識して、博覧会での「人間展示」を考えてみたい。

2009年度第8回定期研究会(共同研究「戦争が生み出す社会」11)

日時:11月20日(金)15:30~18:30 
場所:先端研セミナールーム
講師:篠原徹(人間文化研究機構理事/国立歴史民俗博物館名誉教授)

タイトル:中国からの引揚者の民俗精神誌

要旨:
 中国で現在「偽満」と称せられる旧満州国政府の経済部・参事官として敗戦を迎えた父は、一年間の新京(現・長春市)でのソ連軍による強制労働の後、昭和21年10月ころ長崎県佐世保市に帰還した。以後、10年間ほどいわゆる引揚者生活を送ることになる。愛知県半田市の海抜0メートル地帯にできた市営住宅は60戸あり、生活困窮者や引揚者たちが住む場であった。報告者は小学校5年生まで過ごすが、この半田市は両親にとっては縁もゆかりもないところであり、故郷喪失者として報告者の兄弟は生きることになる。しかし、この地域は1959年9月26日の伊勢湾台風で壊滅的破壊を受け、60戸約300人の市営住宅の人びとのうち200人近くが犠牲者となる未曾有の災害を被ることになる。報告者の家族はこの台風の1年前にここを脱出していた(というべきである)ので災害には遭遇しなかった。しかし、少年時代をここで送ったことは、その後の生活」や思想に大きな影響を与えたと思われる。いわゆる「伝統」や「民俗」というものと無縁な生活であり、そうしたことの意味を考えるようになったのは、ここでの生活があった故であろう。「引揚者」とは現在の日本の文化や歴史のなかで何であろうか、考えてみたい。

講師紹介:
 大学共同利用機関法人人間文化研究機構理事ならびに国立歴史民俗博物館名誉教授。民俗学者。主要著書に『自然と民俗 : 心意のなかの動植物』(1990年、日本エディタースクール出版部)、『海と山の民俗自然誌』(1995年、吉川弘文館)、『民俗の技術』(編著、1998年、朝倉書店)、『自然を生きる技術:暮らしの民俗自然誌』(2005年、吉川弘文館)、『生活世界からみる新たな人間:環境系』(大塚柳太郎, 松井健と共編著、2004年、東京大学出版会)など。

<研究会を終えて>
 自ら民俗学者でもある報告者が、中国からの引揚者(1.5世代)として過ごした幼少期の体験をエスノグラフィックに再構築するという貴重な場に立ち会うことができた。そこで「連関想起」された現在とはかけ離れた日常が、民俗学者として経験を積んでこられた報告者だからこそできる「分厚い描写(thick description)」を通して、参加者に疑似体験された。
印象に残ったのは、無邪気さと大胆さから生まれる子供の逞しさなど、人間の根源的な強さ。本報告には、戦後社会を生きていた人々の現実が、相対する二つのイメージ―「犠牲者」あるいは「抵抗」する民衆―には決して還元できないことを改めて勉強させられた。

(報告者=辻専任研究員)

2009年度第7回定期研究会

日時:11月13日(金)14:00~16:00
場所:先端研セミナールーム
講師:内海博文(追手門学院大学社会学部専任講師/先端社会研究所兼任研究員)

タイトル:原子力イメージと戦後日本:1945年から1965年までの写真雑誌『アサヒグラフ』をてがかりにして

要旨:
 現代の世論調査によれば、日本人の多くは核兵器に否定的であり、原子力発電にも不安を抱いている。だが原子力発電の推進は、少なからぬ人々が必要だと思っており、事実、原発の設置数は世界有数である。原子力をめぐるこれら現代日本の社会意識は、しばしば、「唯一の被爆国」であることやエネルギー資源の乏しさといった理由から説明できると思われている。だが歴史的にみれば、こうした社会意識の成り立ちはそれほど単純なものではない。たとえば核兵器に対する否定的な社会意識ですら、広島・長崎への原爆の投下から直接的に生み出されてきたわけではない。核兵器をめぐる社会意識が広く変化したきっかけの一つは、サンフランシスコ講和条約の発効後に刊行された写真雑誌『アサヒグラフ』の特集「原爆被害の初公開」(1952年8月6日号)であったといわれる。この一事にも見て取れるように、原子力をめぐる現代日本の社会意識は、第二次世界大戦後において徐々にかたちづくられてきたものであるといえる。そしてそのプロセスにおいてマス・メディアの果たした役割は、小さいものではなかったと思われる。本報告の目的は、1945年から1965年までの『アサヒグラフ』を用いて、原子力をめぐるポピュラー・イメージとその変化にアプローチすることである。原子力イメージの形成と変容という観点から分析することにより、静態的な分析からは浮かび上がりにくい日本の原子力イメージの諸特徴と、そうしたイメージの変容に見て取れる戦後日本の社会意識の特徴を考察する。

発表者紹介:
 追手門学院大学社会学部専任講師/先端社会研究所兼任研究員。専門は理論社会学。
おもな業績は、「グローバリゼーションと人間の安全保障論の興隆」(友枝敏雄・厚東洋輔編『社会学のアクチュアリティ:第3巻社会学のアリーナへ』、東信堂、2007)、 「遊びのなかの現実──「フィクションとしてのドキュメンタリー」から人間の科学が学びうること」(『コンフリクトの人文学』第2号、大阪大学人間科学研究科、2009(近刊))など。

2009年度第7回定期研究会

研究会を終えて:
 1945年から1965年までの写真雑誌『アサヒグラフ』をすべて、丹念に調査され、戦後の原子力イメージの変遷を鮮やかに描き出された研究報告であった。
 とりわけ、戦後直後は、原子爆弾の被害がもっぱら強調されていた「原子力」イメージが1950年代の前半にすでに、先端技術として捉えられていたという「原子力」イメージの転換は興味深かった。

報告:先端研RA 雪村

先端社会研究所2009年度定期研究会(第6回)『共同研究「戦争が生み出す社会」10』

日時:7月3日(金)15:00-17:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者:竹沢尚一郎(国立民族学博物館民族文化研究部教授)

題名:「文化・歴史をどう再現=表象するか―ミュージアムからの問い」

概要:
 アウシュビッツ強制収容所は2つの施設からなる。その名を冠する収容所は、もともと政治犯等を収容するためにつくられた施設であり、レンガ造りの堅牢な建物が残っている。一方、隣接するビルナケウ収容所は、ユダヤ人等を収容・処理するために設けられた施設であり、費用を最小限に抑えるべく隙間だらけの板張りの建造物が原野のなかに建っている。何万人、何十万人という収容者の残した靴や歯ブラシ、旅行カバン、髪の毛が山のように保存されているこれらの施設は、大量の殺人の行われたガス室や絞首台などを含め、人類の過去を今に伝えると同時に、来館者に新たな記憶を生産しつづける「記憶の場」として機能している。

 他方、ドイツをはじめヨーロッパ各国では、民族や国家、さらにはユダヤ人の「過去」を記憶するための施設があいついで建設されている。しかし、過去の出来事に結びつけられない土地に設けられたこれらの施設は、どのようにして「過去」を再現・表象しうる場になりうるのか。それらは、施設であるかぎりで「場」としての具体性をもつが、そこではどのような「記憶」が生み出され、そこで表象される「過去」は国家や民族についての既存の語り=歴史以外のものであることができるのか。

 すぐれて近代的施設としてのミュージアム(博物館=美術館)については、「国民国家のカルト」(ポミアン)とか、「文明化の装置」(ダンカン)とか、さまざまの説明が付与されてきた。近代が、時間と空間の脱埋め込み(ギデンズ)、再帰性(ベック)、管理と矯正(フーコー)、公共性(アーレント、ハーバーマス)などを固有の特性とする時代であるとすれば、これらの要素を骨子とするミュージアムこそは、近代が作り出した装置というより、近代をかくあらしめた装置というべきではないか。

 本発表は、文化や歴史を再現・表象するためにミュージアムが活用する技術や手法に注目しつつ、そこでどのような記憶や語りが生み出されているかを明らかにすること、さらに、ミュージアムそのものの社会的機能を考えること、を目標とするものである。

共同研究「戦争が生み出す社会」10

(研究会の報告)
 報告者の竹沢教授によると、「近代」が作り出した装置というより、近代そのものを表象した装置という視点から博物館を捉えた相対的研究は、日本ではあまり行われていない。本報告は、その数少ない研究の成果でした。発表者には、博物館がその時代時代で「正しい」と考えられている「記憶」を如何に(再)生産してきたかを複数の博物館の歴史的変遷を示しながら例証していただきました。その上で、教授が所属する国立民族学博物館を含め、公共の場、「フォーラム」としての役割を果たすために、博物館はいかにあるべきかについても意見が出されました。

 私個人は、本発表を聞いた後、「他者」を意図的に生産し続けなければならない博物館が真に「公共」の場になることはできるか、その場合、博物館が語る「公共」とはいかなる意味を持つのか、などについて考えています。

 なお、今回の研究会には、教員のみならず、社会学研究科から多数の大学院生の参加を得ました。今後の研究会へも大学院生の積極的な参加が望まれます。また、そうなるように研究会の企画、運営を考えていく必要があろうと思います。

(報告:専任研究員 辻)

先端社会研究所2009年度定期研究会(第5回)『共同研究「戦争が生み出す社会」9』

日時:6月26日(金)14:00-16:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者:池埜聡(関西学院大学人間福祉学部准教授)

題名:「在米被爆者の心理社会的状況と今後の課題―サーベイおよびライフレビュー調査結果から」

概要:
 在米被爆者は、アメリカ合衆国に在住する広島・長崎被爆者であり、他の在外被爆者と同様、長期間あらゆる支援策を享受できない立ち場におかれてきた。一方、高齢化が進む在米被爆者の現状と実態は、これまでほとんど省みられておらず、戦争、そして原爆の長期的影響について「在北米被爆者健診事業」による疾患に関する報告にとどまっている。研究会では、2006年から2008年にかけて「北米在外被爆者の会 (North America A-bomb Survivors Association)」の協力によって実施されたサーベイおよびライフレビュー調査結果をもとに在米被爆者の心理社会的状況と今後の支援および政策的課題を探索する。

共同研究「戦争が生み出す社会」9

(研究会の報告)
 この研究会では、まず在外被爆者への法的・人道的支援をめぐる状況が概観されました。その上で、在米被爆者のライフヒストリーについて、特に被爆による外傷体験が与えた長期的影響に注目した考察がなされました。トラウマを抱えた人々が何を語ることができるのか(できないのか)といった課題をめぐり、それを研究する研究者の立ち位置をも考慮した検討がなされました。研究課題およびそれに対するアプローチ、調査方法など、さまざまな点で示唆に富む内容であり、会場ではさまざまな角度から活発な議論が展開されました。

(報告:岩佐将志)

先端社会研究所2009年度定期研究会(第3回)『共同研究「戦争が生み出す社会」8』

日時:5月29日(金)14:00-16:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者:難波功士(関西学院大学社会学部教授)

題名:「満洲国とプロパガンダ」

概要:
 満洲国に関しては政治史・経済史・文化史・社会史などの領域で多くの研究の蓄積があり、また日本の植民地・占領地に関するメディア史研究にも一定の蓄積がある。しかし、満洲国の対外的・対内的なプロパガンダの実際や、満洲電々の新京放送局が内地に先駆けて広告放送(ラジオCM、番組スポンサー)を軌道にのせていた事実は、まだあまり語られてはいない。本報告では、満洲国のメディアやプロパガンダのあり方を概観することで、メディア制度・産業においても満洲が「壮大な実験場」であったことを指摘し、戦後日本社会を考える上で満洲を再考することの意義を論じたい。

共同研究「戦争が生み出す社会」8

(研究会の報告)
 発表者が冒頭で言及したように、この調査・研究は始まったばかりであり、本報告は、これまでの文献調査で得た原典や既成の研究を引きながら、今後の方向性について、いくつかの可能性が示唆されました。研究会としての収穫は、本研究が第二次大戦、満州、(開拓)移民、メディアといった専門を超えて広く関心を引く学際的なテーマを扱ったものであったため、普段よりも学外からの出席者も多く、発表後の質疑応答でも、様々な意見が交わされたことです。

(報告:辻輝之)

先端社会研究所2009年度定期研究会(第2回)『共同研究「戦争が生み出す社会」7』

日時:5月27日(水)13:30-14:30
場所:先端社会研究所セミナールーム

発表者&題名:
雪村まゆみ(先端社会研究所リサーチアシスタント)
"War and Animation Industrial Base"

岩佐将志(先端社会研究所専任研究員)
"Cultural Reshufflings Induced by War and Their Long-Term Effects:The Case of Japanese 'War Brides'"

概要:
 先端社会研究所は、国際社会学機構(IIS)第39回世界大会にて、レギュラーセッション"War and Society"を主催する。これを受け、同研究所からの報告者2名による事前報告会を開催する。
 雪村報告では、なぜ、第二次世界大戦期において、国家がアニメーション制作を支援したのかについて明らかにし、国家と文化の関係を他者問題という観点から考察する。
 岩佐報告では、戦後米軍兵士と結婚してアメリカに渡った日本人「戦争花嫁」を取り上げ、彼女たちが戦後長きに渡り、自己喪失の不安を抱えながら日本とアメリカの狭間で生き続けてきた経緯を振り返る。

備考:
 発表および質疑応答は英語で行われます。通訳はありません。

共同研究「戦争が生み出す社会」7

(研究会の報告)
 今回の研究会では、国際社会学機構(IIS)第39回世界大会において、先端社会研究所が主催するセッションWar and Societyで発表する予定になっている2名の研究所スタッフが、その予行もかねて報告しました。研究所のスタッフの他、アラン・ブレイディ(Alan Brady)関西学院大学社会学部教授が出席して意見が交わされました。両研究は、「アニメーション」、「戦争花嫁」という具体的かつユニークなケースから戦争と社会の相互作用について論じたものであり、将来、更に発展が期待されるとの意見が出席者から出されました。

(報告:辻輝之)

先端社会研究所2009年度定期研究会(第2回)『共同研究「戦争が生み出す社会」6』

日時:5月15日(金)14:00-16:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
発表者:中野康人(関西学院大学社会学部准教授)

題名:「『声』の声 -読者投稿の計量テキスト分析-」

概要:
 日刊新聞に掲載される読者投稿欄の記事は、毎日のように蓄積される人々の意見表明のデータである。そこにあらわれる意見が社会のどの部分から滲み出したものなのか、という議論を留保したとしても、長年にわたって蓄積された記事データは社会のある側面を切り取る貴重な資料といえる。データ化された投稿記事の分析から、記事内容の変遷を投稿者の職業や年齢などの属性とからめて報告する。

共同研究「戦争が生み出す社会」6

(研究会の報告)
 この研究会では、主に1980年代から1990年代の読売新聞と朝日新聞の記事を中心として、計量テキスト分析の手法を用いた調査の途中経過が報告されました。ここでは「戦争」とその関連語の変遷や、一般読者の投稿記事に「戦争」の言葉が用いられている事例などについて報告がなされました。そこでは「戦争」と「責任」という言葉の関連性が近年になり弱まりつつあるなど、いくつかの興味深い知見が示されました。
 なお、この研究会は神戸新聞の取材を受け、記事として取り上げられました。

神戸新聞に研究所定期研究会に関する記事が掲載されました関連ページへのリンク

(報告:岩佐将志)

先端社会研究所2009年度定期研究会(第1回)

日時:4月24日(金)14:00-16:00
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
発表者:辻輝之(先端社会研究所専任研究員)
コメンテーター:鈴木慎一郎(関西学院大学社会学部教授)

題目:HypheNation―分離/接合された「他者」

概要:
 「多様な人種、文化から如何にして秩序ある社会をつくるか」。欧州列強による植民、移民労働者の導入によって、多様な社会が形成されてきたカリブでは、どの地域よりも早くからこの問いに取り組んできた。植民地エリート層の「格差ある同化」に対して、反植民地主義ナショナリストは、「公正な多様性」を志向してきた。
 問いに対するこれらの答えは、一見対照的であるが、人種・文化の起源が相互に排他的であるという仮説だけでなく、秩序ある社会を作るには、その起源が混交し、一つの人種・文化を漸次形成することが不可欠という結論を共有している。その結果、植民地主義、反植民地主義いずれの理論でも、人種・文化の「真正性」とその混交は、either-orの関係を成している。本報告は、トリニダッドの事例を基に、カリブにおける文化混交と社会統合に関する既存の概念、理論的枠組みを批判的に検討する。

2009年度定期研究会(第1回)

(研究会の報告)
 本研究会ではまず、トリニダッドにおいて黒人系やインド系などのさまざまな人種が混交することにより「クレオール・ナショナリズム」が生起してきたことについて、その歴史的背景に遡って詳細な考察が成されました。また現代のトリニダッドにおいて、従来インド系の人々が崇拝してきた神々を祭った寺院を一部の黒人が巡礼するようになっていることについて、検討が成されました。現在アメリカの人類学で注目されている「移民と宗教」というテーマに基づく詳細なフィールドワークの事例は、他者問題を考える上で刺激に富むものでした。

(報告:岩佐将志)