2010年度

[ 編集者:先端社会研究所   2014年9月5日 更新 ]

2010年度定期研究会第10回

日時:2011年3月24日(木)13:00-15:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
報告者:白石壮一郎(関西学院大学大学院社会学研究科特任助教)
コメンテイター:三浦耕吉郎(関西学院大学社会学部教授)
村田泰子(関西学院大学社会学部准教授)

題目:『文化の権利、幸福への権利─人類学から考える』をめぐって

研究会概要:
 「文化的多様性」と「普遍的人権」はともに、現在のクローバル世界において目指すべき価値として掲げられる。それぞれの文化や個人の違いを尊重しつつ、それらを対等かつ平等に保障することの必要性が、そこでは素朴に想定されている。だが、理論的・思想的に考えてみたとき、個別の文化の独自性をそれ自体として尊重することと、すべての文化に通底する普遍的な価値として人権を擁護することが、ときとして矛盾や葛藤に見舞われるであろうことは想像に難くない。こうした文化間の接触や交流の場面で浮かび上がる文化の個別性/普遍性をめぐる困難な状況に対して、「文化を語る知」である人類学はどのような思想のもとで、どのような介入を試みてきたのだろうか。

 白石壮一郎著『文化の権利、幸福への権利─人類学から考える』(2011年、関西学院大学出版会)は、具体的な事例や論争を取り上げながら人類学の歴史における「文化を語る」ことに伴う困難を描き出す試みである。今回の研究会では、本書執筆に至った人類学者としての白石氏の知的経歴やフィールドでの体験なども踏まえつつ『文化の権利、幸福への権利』の概要を報告してもらう。それを受けて、二人のコメンテイターから今日的な政治・社会状況において「文化」や「人権」を語ることをめぐる課題と可能性について問題提起をしてもらう。

報告者紹介:
 現在、関西学院大学大学院社会学研究科特任助教、関西学院大学社会学部非常勤講師、近畿大学農学部非常勤講師。専攻は、人類学・アフリカ地域研究。大学院生時代より、東アフリカのウガンダ共和国東部、エルゴン山域にくらす農耕民サビニについて、参与観察的フィールドワークに基づく生活誌研究に従事。論文に、"From Beer to Money: Labor Exchange and Commercialization in Eastern Uganda". African Studies Quarterly, Issue 1 & 2. University of Florida. pp.39-53、(2006年)、「パートタイムの牧夫たち―ウガンダ東部、山地農耕民サビニの放牧キャンプから」、田中二郎・菅原和孝・佐藤俊・太田至編 『遊動民―アフリカの原野に生きる』、昭和堂、pp.687 -709、(2004年)など。

2010年度定期研究会第9回(共同研究「共生/移動」研究会第3回)

日時:2月23日(水)10:00~12:00 
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者: 西村正男(関西学院大学社会学部准教授)
コメンテータ:荻野昌弘(関西学院大学社会学部教授)

タイトル:「日本ロック創成期に中国系音楽家が果たした役割―在日華僑・華人音楽史の一環として」

要旨:
 本報告では、20世紀半ば以来の日本における中国系音楽家の活動の社会史的考察の一環として、日本のロックの創成期において中国系音楽家が果たした役割について検討する。日本における朝鮮系音楽家の活動については、宋安鍾『在日音楽の100年』が「在日」と認識される音楽家たちの苦闘の足どりをまとめている。宋は「在日音楽」を固定された音楽として捉えるのではなく、アイデンティティを摸索しつつ新たな局面を切り拓く多様な音楽と捉えている。
本報告は、同書の啓発を受け、日本在住の華僑・華人の手による流行音楽の足どりをその越境性、地政学、アイデンティティ等の視角から分析する試みの一部として、1960年代から1970年代初頭のロックにおける中国系音楽家を取り上げるものである。

報告者紹介:
 専門は、中国近現代文学、中国メディア文化史。中国の近代化=国民国家建設の言説として、作家王西彦(1914-1999)を中心とする文学テクストを読み解いてきた。現在は、共同研究「1940年代の中華圏における文学の複数性」に参加するとともに、メディア文化、特にレコード文化に関心を持ち、中国におけるレコード産業史と、レコードというメディアが中国の近代化に果たした役割について考察している。主要業績は、「抑圧された「音の小説」―蕭乾『夢之谷』を読む」『野草』第85号(2010)、「中国現代作家と流行歌曲――魯迅、張天翼の事例から」『中国21』Vol.24(2006)、「<民間>の表象―王西彦における<知識人>と<民間>」小谷一郎他編『転形期における中国の知識人』(波古書院、1999)等。

2010年度定期研究会第8回(共同研究「セキュリティ/排除」研究会第3回)

日時:2月18日(金)15:00~17:00 
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者:前田至剛(皇學館大学文学部コミュニケーション学科講師)

題名:「排除を助長する/排除に抗うネット」

概要:
 本報告では、ネットが普及した社会において、ネットが社会的な排除にどのような影響を与えるのかについて、精神疾患患者などの排除された人々の活動や、抑圧された人々がネットでデモを呼び掛ける事例を通じて検討する。
ネットの有無にかかわらず、社会的な抑圧や排除は存在しているものの、ネットはさらに排除を助長することがある。匿名性により責任の所在が不明確になりやすい点はいうまでもなく、集団成極化を促進することで、過激な表現や行動を誘発する。他方で同じ仕組みは、排除され抑圧された人々にも積極的に活用される。匿名性はスティグマや監視を掻い潜る隠れ蓑となり、集団成極化は運動を拡大するのに役立つ。一見抑圧や排除に抗う可能性があるようにみえて、これらの活動が社会的な集団や組織といった基盤を持たないがゆえに、徹底して個別化されたままであり続ける傾向は、「ネット社会」における排除問題をより複雑にしている。

発表者紹介:
 研究関心はメディア/コミュニケーション、特にインターネットを通じた社会関係。
 ネット上の掲示板とそれを介して形成されるモブや、精神疾患患者による流動的な活動形態の自助活動について調査し研究している。主な業績は 「精神疾患を患う人びとのネットコミュニティ」(遠藤薫編『ネットメディアと <コミュニティ>形成』東京電機大学出版局、2008年)、「ネット空間と自由の可能性―繋がりの構造」(阿部潔・成実弘至編『空間管理社会』新曜社、2006年)。

2010年度定期研究会第7回(共同研究「セキュリティ/排除」研究会第2回)

日時:12月3日(金)16:00-18:00(開催時間帯が普段とは異なりますのでご注意ください。)   
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者:ラルフ・フッツェラール(先端社会研究所専任研究員)
コメンテーター:石井香江(四天王寺大学人文社会学部専任講師)
備考:発表は英語で行いますが、参加者の希望により適宜通訳を行います。

タイトル:From security threat to security responsibility. Postwar reparations and care for Danish resistance veterans.「セキュリティへの脅威からセキュリティの責任へ:デンマーク旧レジスタンス軍人に対する戦後補償とケア」

要旨:
 During the German occupation of Denmark (1940-'45), both the Danish elites and the majority of the population chose to accommodate rather than fight Nazi Germany. Only a small section of the population decided to actively resist. During the war, this small underground army was routinely described as a terrorist organization, and its relation with the indigenous political elites was particularly bad. After the war, former resistance fighters were elevated to the status of national heroes. Their new status had profound consequences for their treatment, especially when they suffered long term psychiatric damage as a consequence of their wartime experiences. Once considered a threat to national security, their security had now become anational responsibility.

 ドイツがデンマークを占領していた時期(1940-45)、デンマークのエリートおよび大多数の国民は、ナチスドイツと戦うよりは同調することを選んだ。ナチスドイツに果敢に抵抗することを選んだのはごく少数の人々だった。地下に潜伏していたこの小規模の軍は、戦時中には常にテロ組織として語られ、彼らとデンマークの政治エリートとの関係は特に険悪であった。
 終戦後、かつてのレジスタンス軍の兵士たちは国民的英雄の地位に祭り上げられた。彼らに与えられたこの新しい地位は、社会における彼らの扱いに大きな影響を与えた。特に彼らが戦中体験に起因する精神疾患を長期間患っていた時の社会の対応にそれは見られた。
かつては国家のセキュリティの脅威とみなされていた彼らだったが、今や彼らのセキュリティを保証することが国家の責任となったのである。

報告者紹介:ラルフ・フッツェラール
 フローニンゲン大学(オランダ)、コーク大学(アイルランド)、アムステルダム大学(オランダ)にて経済史、社会史を学ぶ。オランダ戦争資料研究所を経て、現在、関西学院大学先端社会研究所専任研究員。第二次世界大戦をめぐる経済史、医療史について幅広い業績がある。主要著作・論文は、“From Camp to Claim: The KZ syndrome and PTSD in Scandinavia: 1945-2010,” in Jolande Withuis and Annet Mooij (eds.), The Politics of War Trauma: The Aftermath of World War II in Eleven European Countries (Amsterdam: Aksant, 2010)、Lard, Lice and Longevity: The standard of living in occupied Denmark and the Netherlands, 1940-1945(Amsterdam: Aksant, 2008)等。

コメンテーター紹介:石井香江
 四天王寺大学人文社会学部専任講師。専門は歴史社会学。日独の電話交換手・電信技手の社会・日常史について研究。主要著作・論文は、「近代ドイツにおけるトラウマ・労働・ジェンダー:電話交換手の<神経症>をめぐる議論の変遷を事例に」(『西洋史学』通号222、2006年)、「<詐病>への意思:<災害神経症>をめぐる知のせめぎあい」(川越修・辻英史編『社会国家を生きる:20世紀ドイツにおける国家・共同性・個人』法政大学出版局、2008年)等。

2010年度定期研究会第6回(共同研究「景観/空間」研究会第2回)

日時:10月15日(金) 15:10~17:10
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者: 若狭健作(尼崎南部再生研究室)

タイトル:「工都尼崎の記憶を伝えるまちづくり」

要旨:
 阪神工業地帯の中核都市として発展した兵庫県尼崎市。高度経済成長という輝かしい歴史は、大気汚染公害という負の遺産も生み出した。2001年に大気汚染公害訴訟の和解金を活用して設立された市民団体「尼崎南部再生研究室」では、幻の郷土野菜「尼いも」の復活栽培により高齢者の原風景を取り戻す活動や、工業地帯に船を走らせ工場景観をガイドする「尼崎運河クルージング」により新たな景観整備ではなく現在あるものの価値を再確認している。また地元商業者らによる「メイドインアマガサキコンペ」では尼崎らしい製品や商品を顕彰し、アンテナショップのオープンや地域連携による商品開発につなげるなど、地域ブランドの育成も進行中。これらの活動紹介を通して、工場景観の価値やそれに付随した「工都」の記憶を伝え、地域の活性化へつなげる取り組みを報告する。

報告者紹介:
 1977年大阪市生まれ。㈱地域環境計画研究所取締役。まちづくりプランナーとして京阪神の地域活性化に携わる。市民団体「尼崎南部再生研究室」で発行する情報誌「南部再生」の編集を通して、尼崎市の活性化について実践活動をおこなっている。商業活性化アドバイザー(中小企業基盤整備機構)、地域活動推進コーディネーター(尼崎市)、関西学院大学地域・まち・環境総合政策研究センター客員研究員など。

2010年度定期研究会第5回(共同研究「共生/移動」研究会第2回)

日時:9月18日(土)15:10~17:10
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者:高原基彰(東京工科大学メディア学部非常勤講師)

タイトル:『現代日本の転機』をめぐって

要旨:
 近著『現代日本の転機』(NHKブックス)をテクストとして、戦後日本の左右対立の成立と崩壊を概観した上で、政権交代後の現在も続く内政・外交における混乱を乗り越えるための視座がどこにあるのか討論する。

報告者紹介:
 2007年、東京大学大学院人文社会系研究科社会文化研究専攻社会情報学専門分野博士課程単位取得退学。帝京大学、立教大学非常勤講師、中国社会科学院訪問研究員などを経て、現在、東京工科大学メディア学部非常勤講師。専門は、社会学、東アジア研究。近年は、日韓文化交流の展開を、日本側の「アジア観の変化」としてだけではなく、韓国を含めた文化生産の現場の変容という観点から検討するため、フィールドワークを行っている。近著は、『現代日本の転機――「自由」と「安定」のジレンマ』(NHKブックス,2009年)、『不安型ナショナリズムの時代』(洋泉社新書,2006年)など。

2010年度定期研究会第4回(共同研究「景観/空間」研究会第1回)

日時:7月30日(金) 15:10~17:10
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者: 林幸史(大阪国際大学人間科学部心理コミュニケーション学科講師)

タイトル:「観光行動における旅行者の心理過程」

要旨:
 近年の観光旅行者の増加にともない、心理学においても観光行動は研究課題の一つとして注目され始めている。本報告では観光旅行者の経験現象に対する心理学的アプローチの中でも、旅行者のモチベーションがどのような経験によって充足され、満足へとつながるのかについて検討を行う。具体的には、観光行動を旅行前、旅行中、旅行後という3つの段階から捉え、各段階での旅行者の心理現象を明らかにしていく。旅行前の段階では、人々を観光旅行に導く心理的要因である旅行者モチベーションおよび、観光行動の生起を妨げる阻害要因について述べる。旅行中の段階に関しては、訪問先での旅行者の心理状態に移動距離、環境、同行者といった状況要因がどのように影響するのかについて明らかにする。また、旅行後の段階では、訪問先での心理状態が経験内容の評価・満足にどのように影響するのかを明らかにする。

報告者紹介:
 大阪国際大学人間科学部講師。専門は社会心理学。観光行動、レジャー行動について研究。主な業績は、「社会的動機」(藤原武弘編著『社会心理学』晃洋書房、2009年)、「訪問地域、旅行形態、年令別でみた日本人海外旅行者の観光動機」(『実験社会心理学研究』第48号、2008年)など。

2010年度定期研究会第3回(共同研究「セキュリティ/排除」研究会第1回)

日時:7月26日(月)15:10~17:10
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者:岩佐将志(先端社会研究所専任研究員)

タイトル:「メディア空間論から見た『セキュリティ/排除』関係へのアプローチ」

要旨:
 先端研の本年度共同研究プロジェクト「セキュリティ/排除」の始動に伴い、本研究会では発表者が現在構想中の以下のアイデアに基づき、参加者と自由に意見交換を行うブレーンストーミングの機会を設けることとする。 
特定領域の内部に帰属意識を持つ集団は、そこに参入しようとする外部の存在を「他者」とみなし、管理可能な存在として想像することにより、自己の安心感や優越感を維持・確認しようとする。とりわけ国境線の内側と外側をめぐって行われるこうした自己と他者の分離は、これまで「包摂/排除」の問題として定式化されてきた。
 それでは「包摂」という概念を一旦「セキュリティ」に置き換え、「セキュリティ/排除」について問うことにはいかなる意義を見出せるのだろうか。ここでは自己の帰属する領域の外部に有意味な実体としての他者を見出すというよりは、自己の中に「内なる他者」を見出し、それを「境界線上の存在」として「他者化」してゆこうとする契機がより強くなるのではないだろうか。 本発表ではこうした意味での「他者化」された存在が生み出されてゆく状況に現代のメディアがいかに関与しているのか、いくつかの事例を用いて検討する。またこのことを空間の認識をめぐる権力の問題として捉え直すことにより、メディアの強調する「今・ここ」とは異なる心象地図を描き出すような、日常生活における実践の重要性を指摘する。

報告者紹介:
 主に英米圏のメディア・コミュニケーション研究に依拠しつつ、コスモポリタニズムと国民意識との共鳴と相克、「アジア太平洋」という空間認識の編成におけるアメリカの影響、新自由主義の文化的影響などについて考察している。主な論文に「現代の沖縄の平和運動を考察するための新たな視座─カルチュラル・スタディーズの発想を導入した社会運動の調査を通じて─」(『年報社会学論集』第19号、2006年)、「戦争がうみだす『異邦人としての他者』─日本人『戦争花嫁』を事例として─」(『先端社会研究所紀要』第1号、2009年)など。

2010年度定期研究会第2回

日時:7月16日(金)15:10~17:10
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
報告者:Matthew Marr氏(フロリダ国際大学グローバル・社会文化学部助教授)

タイトル:「ホームレス、グローバル/ローカルの文脈─東京と米国Los Angelesの比較を通して─」
備考:報告・質疑応答は日本語で行われます。

要旨:
 グローバル化とネオリベラリズムの影響、ローカルな文脈の相互作用が、世界の趨勢となりつつあるホームレスの増加と定着化に、どのような影響を及ぼしているのだろうか。本発表は、LAと東京の事例比較を通して、このプロセスの解明に社会学的なアプローチを試みる。特に、自立支援センターの動向、近年の行政の取り組みと「寄せ場」や「どや街(skid row)」の変化に着目して議論する。東京とLAのホームレスを巡る問題は、同様に、経済のグローバル化とネオリベラリズムに影響を受けている。しかし、それらの影響を受容、解釈するローカルな文脈の違い、たとえば、福祉行政のあり方や社会資本の文化的側面が、異なったホームレス性(homelessness)となって具現している。

報告者紹介:
 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)社会学部博士課程(2007年修了、Ph.D.)、ハーバード大学ライシャワー日本研究所ポスト・ドクトラル・フェロー(2007-08年)を経て、現在、フロリダ国際大学グローバル・社会文化学部および同大学アジア研究所兼任助教授。主要業績は、「地方政府のホームレス生活者対策:ロサンゼルスの<ケアの継続>とホームレス問題の経営上の限界」中山徹著『欧米のホームレス問題:実態と対策』(法律文化社、2004)、“Any Space Left? Homeless Resistance by Place-type in Los Angeles County,” Urban Geography, 30(6), 2009: 633-651(Geoffrey DeVerteuil、David Snowとの共著)など。

2010年度定期研究会第1回(共同研究「共生/移動」研究会第1回)

日時:6月25日(金)16:10~18:10
場所:先端社会研究所セミナールーム
講師:岡田浩樹(神戸大学大学院国際文化学研究科教授)

タイトル:「多文化共生」言説の意味作用に関する批判的検討 -神戸市長田区の事例を通して-」

 本報告は、今日の日本社会においてある種のclicheとなっている「多文化共生」言説が社会に普及する出発点とも言える神戸市長田区の事例を通し、その意味作用について人類学の立場から批判的検討を行う。「多文化共生」の意味作用によって、「ethnic」商品の生産という様式に従う形でマイノリティの主体性構築がなされ、国家による周縁化が創り出され、強化される過程に着目する。同時に、「多文化共生言説」の中で隠蔽されてきたマイノリティの文化的差異の問題にも着目したい。そして「多文化共生」の言説空間がマイノリティの再配置を試みる国民国家の政策とリベラル・ヒューマニズムが接合する契機を提供する状況を明らかにし、結果としてマイノリティの「封じ込めと取り込み」(Jordan and Weeden1995)を促している問題を提起したい。

NIOD合同ワークショップ報告会

日時:2010年4月23日(金)11:00-12:00
場所:先端社会研究所セミナールーム
報告者:
中野康人(関西学院大学社会学部 准教授/関西学院大学先端社会研究所 副所長)
岩佐将志(関西学院大学先端社会研究所 専任研究員)
辻輝之 (関西学院大学先端社会研究所 専任研究員)
Ralf FUTSELAAR(関西学院大学先端社会研究所 専任研究員)
川端浩平(関西学院大学大学院社会学研究科大学院 GP特任助教)