2013年度

[ 編集者:先端社会研究所   2014年9月5日 更新 ]

2013年度定期研究会(先端社会研究所全体研究会)

開催日:2014年3月8日(土)
時間:14:00~17:00
場所:関西学院大学 西宮上ケ原キャンパス 社会学部棟3階 先端社会研究所セミナールーム
題目:娯楽映画のなかの排除と包摂から見えてくるもの「昭和のメディアミックス -『兵隊やくざ』を中心に」
プレゼンター:李 建志(関西学院大学 社会学部教授)

パネリスト:上水流 久彦 (県立広島大学 地域連携センター講師)
 主著 『台湾漢民族のネットワーク構築の原理―台湾の都市人類学的研究』渓水社、2005年
 訳書 『台湾外省人の現在―変容する国家とそのアイデンティティ』原著ステファン・コルキュフ著、風響社、2008年
 そのほか、共著、論文など多数

上村 崇 (福山平成大学 福祉健康学部准教授)
 『まなびの倫理学的考察』(広島大学に提出した博士論文)、2004年
 そのほか、論文多数

報告主旨:
敗戦後、いわゆる独立プロによって『真空地帯』という映画が撮られている。これは、野間宏の小説を映画化したもので、軍隊を、世俗の社会の常識が通用しない「真空地帯」として描いているのだが、これに対し大西巨人は、軍隊のなかにも部落差別もあり障がい者差別もあるという事実を重視して野間を批判、その議論の結実として大作『神聖喜劇』を発表したことが知られている。
その論争について深く論じるつもりはないが、昭和30年代の娯楽映画ブームに乗ってつくられた映画「兵隊やくざ」シリーズとその原作である有馬頼義の『貴三郎一代』を、この野間、大西によってひらかれた戦争文学(あるいは戦争映画)の影響下にあるととらえ、そのドラマのなかにある歌(浪花節、軍歌など)や、慰安所などの風俗、そしてインチキ中国語などに対する分析を通じて、議論したいと考えている。また、『続貴三郎一代』では、朝鮮人慰安婦が登場するにもかかわらず、映画ではそれを隠蔽しているという事実から、娯楽映画という「非政治」的映画のもつ政治性(非政治の政治性)に対する分析を行うことをめざしている。この分析からは、日本社会の無意識下の「排除」と「包摂」のプロセスが看取されるだろう。

2013年度全体研究会チラシ  [ 811.28KB ]PDFファイル

2013年度定期研究会(社会学研究科大学院「エッジの社会学」研究会と「メディア・文化のインターセクション」研究会との共催)

題目:「生活圏」の行方と社会的なるものの可能性−ジモト/商店街/居場所の現在形
日時:2014年2月12日(水)13:00~16:30
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3階)
報告者:新雅史氏(学習院大学非常勤講師)、加藤裕康氏(関東学院大学非常勤講師)
コメンテーター:阿部真大氏(甲南大学准教授)
司会者:仲修平(関西学院大学社会学研究科博士課程後期課程)、山森宙史(社会学研究科博士課程後期課程)

備考:本研究会は、関西学院大学社会学研究科大学院生が自主的に企画している「エッジの社会学」研究会と「メディア・文化のインターセクション」研究会との共催となります。本研究会に関するお問い合わせはkgu.socgp@gmail.comまでお願いします。


概要:
近年、地方郊外におけるショッピングモールの乱立やロードサイドビジネス等が生み出す画一的な景観が「ファスト風土」と批判されしばしば議論の対象となるが、それと対称的に「まちおこし」等の地域の駅前空間や商店街の活性化が声高に叫ばれる。しかし、これらの議論の多くにおいて、そうした「生活圏」内の商業空間が実際「どのように生きられてきたのか/活かされてきたのか」というリアリティの内実が深く掘り下げられてきたとは言い難い。とりわけ、そこに生きる生活者にとってこれらの商業空間はどのような意味を有しているのだろうか?
 以上の問題意識のもと、本研究会は現代日本の若者に焦点を当て、彼らがそれぞれにとっての身近な空間においてどのような「生」を実践しうるのかという観点から、生活インフラだけでなく働くことや人間関係の形成、居場所の構築といった「社会的なるもの」の基盤としての「生活圏」の現代社会における可能性を模索していくことを目的としている。
 報告者の両氏は、「商店街」や「ゲームセンター」という日常的な商業空間を研究対象に、歴史的な視点やミクロな視点によるフィールド調査を通じて、それぞれの研究対象の課題や可能性について明らかにされてこられた。新氏は、「地域や個人への給付」ではなく「地域に対する規制」によって〈ジモト〉に存在する商店街の理念を再考している。一方、加藤氏は、ゲームセンターをたんにゲームをプレイする場ではなく、様々な利用者の意図と実践がせめぎ合う中でその意味が読み替えられていく空間として捉える。
 これら両氏の視点を踏まえ、本研究会では「生活圏」における社会的なるものが、商店街に代表される地域の商業空間において、若者たちの具体的な実践を組み込む形で、どのようにして生成・維持されうるのか?という点を出発として議論してみたい。


報告者紹介:
新雅史氏(学習院大学非常勤講師)専門領域:産業社会学、スポーツ社会学
主著:2012年『商店街はなぜ滅びるのか−社会•政治•経済史から探る再生の道』光文社、2011年「両大戦間期における商店街理念の生成」『ソシオロゴス』(35号)など。

加藤裕康氏(関東学院大学非常勤講師)専門領域:コミュニケーション学
主著:2011年『ゲームセンター文化論』新泉社、2010年『コミュニケーション•スタディーズ』世界思想社、「初期カルチュラル・スタディーズにおけるサブカルチャーと疎外感 : ホガート、ヘブディジを手がかりとして」『余暇学研究』(16号)など。

阿部真大氏(甲南大学准教授)専門領域:労働社会学、家族社会学
主著:2013年『地方にこもる若者たち−都会と田舎の間に出現した新しい社会』朝日新聞出版,2006年『搾取される若者たち−バイク便ライダーは見た!』集英社など。

2013年度定期研究会第5回(共同研究「南アジア/インド班」研究会第5回)

日時:2014年1月24日(金)16:00~18:00
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3F)
報告者:工藤正子氏(京都女子大学現代社会学部准教授)
題目:英国におけるパキスタン系コミュニティの変容 ―第二世代の女性たちによるエスニック境界の交渉に着目して

概要:
 第二次世界大戦後の英国に旧植民地出身の労働移民として流入したパキスタン系移民は、他のエスニック集団と比べて経済的地位が低いだけでなく、近年のイスラーモフォビアの高まりのなかでムスリムとしても周縁化されてきた。本発表では、こうした在英パキスタン系移民の第二世代の女性たちが、家族やエスニック・コミュニティ、主流社会という重層的な空間を生きるなかで自らの帰属をいかに交渉しているのかを考察する。彼女たちは教育レベルでは第一世代から大きく前進し、一定の職業的地位を獲得した者も多い。一方で、そうした主流社会での地位の獲得が、男女隔離や女性のケア役割と結びつけられた移民社会内の女性性の理念と矛盾するために、結婚市場で周縁化される傾向もみられる。本発表では、第一世代が高齢期を迎えた移民社会における女性たちのケア役割にも着目しつつ、包摂と排除の力が複雑に入り組む第二世代の女性たちの帰属の交渉について議論し、その過程から新たな共同性が切り拓かれる可能性についても考察したい。

報告者紹介:
専攻・専門領域
文化人類学。パキスタンから日本および英国への移住者とその家族を対象に、移動、エスニシティ、ジェンダーの交差について研究。
主な著書・論文
1. 2012年“Mothers on the Move: Transnational Child-Rearing by Japanese Women Married to Pakistani Migrants”, David W. Haines et al. (eds.), Wind Over Water: Migration in an East Asian Context, Berghahn Books, pp.150-160.
2. 2011年「移民女性の働き方にみるジェンダーとエスニシティ:パキスタン系イギリス女性のコミュニティ・ワークを中心に」、竹沢尚一郎(編)『移民のヨーロッパ:国際比較の視点から』明石書店、pp.172-197。
3. 2008年『越境の人類学:在日パキスタン人ムスリム移民の妻たち』東京大学出版会。

2013年度第5回定期研究会チラシ  [ 291.83KB ]PDFファイル

2013年度定期研究会(社会学研究科大学院「『社会変革』の現在」研究会との共催)

日時:2013年12月1日(日)15:00~
場所:関西学院大学・先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3階)
報告者:阿部 小涼 氏(琉球大学法文学部教授)
題目:「廃墟の大学を散歩しなければならない」
備考:本研究会は、関西学院大学社会学研究科大学院生が自主的に企画している「『社会変革』の現在」研究会との共催となります。本研究会に関するお問い合わせはkgu.socgp@gmail.com までお願いします。

概要:
「雲の中を歩まなければならない。」桑原武夫の否定命令をこのようにひっくり返したのは花田清輝だった。花田の「歩み」は目的に向かって邁進するようではない、散歩するような足取りだっただろうから、命令法に従わないステップを、ひとまず想像しておこう。今日、大学はもう世界を見下ろす姿を包み込んでくれる薄もやの中にも、象牙で出来た塔の中にもない。廃墟と化した大学でカルチュラル・スタディーズの波濤を体験してしまった社会学者は、どのように現在を生きているのか。大学のなかで研究を、機能不全の民主主義のなかで運動を、「現場」や「当事者」の語でつなぎ合わせながら散歩するように行うことについて、学生の皆さんと大いに語り合う機会としたい。

報告者紹介:
阿部小涼氏(琉球大学法文学部教授)
専門は、カルチュラル・スタディーズ/カリブ海地域研究/社会運動研究。
主要著書として、「皮膚と反復」 李静和編 『残傷の音:「アジア・政治・アート」の未来へ』岩波書店(2009)、「『集団自決』をめぐる証言の領域と行為遂行」 新城郁夫編 『攪乱する島: ジェンダー的視点』 (沖縄・問いを立てる3)社会評論社(2008)。
主要論文として、「ラディカルな沖縄の<当事者>: 屈折するインテグリティと沖縄戦後史プロジェクト」 『沖縄文化研究』38号 (2012年3月)、「抵抗の領域における邂逅: 出会い損ねる主体の詩学から」 『立命館言語文化研究』 第19巻2号(2007年11月)、ほか多数。

「社会変革」の現在 研究会チラシ   [ 1.28 MB ]PDFファイル

2013年度定期研究会第3回(共同研究「日本班」研究会第6回)

日時:2013年11月29日(金) 15:00~18:00
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3F)
報告者:岡本 雅享 氏(福岡県立大学人間社会学部 准教授)
題目:出雲からみた日本のネーション・ビルディング

概要:
 日本では近代国家形成を目指す過程で、記紀神話に民族のルーツを求め、大和(天孫)民族という概念が創り出された。古事記(712年)と日本書紀(720年)から創り出された記紀神話がネーションビルディングに用いられ、日本人意識が形成されていった。だが記紀神話を、同時期に書かれたもう一つの最古の文書、古代出雲王の後裔とされる出雲国造が編纂した出雲(国風土記)神話(733年)と比べれば、明治以降広められてきた「国の成り立ち」に関する歴史観が崩れるほどの違いがある。ヤマトに「まつろわぬ者」とされた出雲やエミシ(東北)、クマソ等の視点から、大和中心に創り上げられたネーションビルディングを見直したい。そして単一民族論で覆い隠された「日本人」内部の多様性を顕在化させ、多様で固有な郷土の歴史・社会に根ざした、多元社会観に基づくネーションの再構築を目指したい。

報告者紹介:
専門は社会学(多文化社会論)
主要著書
[単著]・『中国の少数民族教育と言語政策(増補改定版)』社会評論社、2008年。
[監修・編著]・岡本雅享『日本の民族差別―人種差別撤廃条約からみた課題』明石書店、2005年。
[共著]・『マイノリティの権利とは―日本における多文化共生社会の実現に向けて』解放出版社、2004年。
主要論文
「日本におけるヘイトスピーチの源流とコリアノフォビア」『レイシズムと外国人嫌悪』明石書店、2013年。
「海の道のフロンティアとしての出雲」『現代思想』2013年11月臨時増刊号。 その他多数。

2013年度定期研究会第2回(共同研究「日本班」研究会第5回)

日時:2013年7月5日(金)15:10~
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3階)
報告者:金 明秀氏(関西学院大学社会学部教授)
題目:現代日本社会における排外主義─日本のグローバル化と市民の政治参加に関する意識調査から

概要:
本報告では、報告者が2012年度に実施した「日本のグローバル化と市民の政治参加に関する意識調
査」のデータから、現代日本社会における排外主義の現状を考察する。同調査は、3種類の都市(1.
外国人集住都市会議の会員都市、2.宮城県石巻市、3.西宮市)の選挙人名簿を母集団としたものであ
る。従来の「排除/包摂」といった二項対立的な枠組みを乗り越えていくにあたり、まず現代日本社
会における排除とは何かを明確にしていくことを試みる。

報告者紹介:
専門は計量社会学。テーマはナショナリズム、エスニシティ、階層など。1968年生まれ。
九州大学文学部哲学科(社会学専攻)卒業。大阪大学人間科学研究科博士課程修了。京都光華女子大
学准教授を経て現職。著書に『在日韓国人青年の生活と意識』(東京大学出版会)、他がある。在日
コリアンについてのウェブサイト「ハン・ワールド」を主催。

2013年度定期研究会第1回(共同研究「南アジア/インド班」研究会第4回)

日時:2013年6月21日(金)16:00~18:30
場所:先端社会研究所セミナールーム(社会学部校舎3階)
報告者:山本 達也氏
(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 日本学術振興会特別研究員PD)
題目:「舞台の上の難民─芸能集団の実践から見るチベット難民社会の排除と包摂」

概要:
 本発表は、北インドヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府が運営する芸能集団Tibetan Institute of Performing Arts(TIPA)の演者たちの活動に着目し、1959年以来醸成されてきたナショナリズムが孕む排除と包摂をめぐる現状を明らかにするものである。チベットをめぐる問題は常に国際関係や経済活動の只中に位置づけられ、彼らが形成してきたナショナリズムもまた欧米諸国やインドの提示する政治的理念や経済的援助の問題とは無縁ではなく、いわば常にグローバルな関係性の中で形成されてきたナショナリズムであった。
 しかし、近年、難民社会の構造が変化し、また難民3世が社会の中心となってきた中で、難民社会内外のまなざしに貫かれたナショナリズムが抱えている排除と包摂をめぐる問題が明らかになってきている。本発表は、チベットの文化やアイデンティティの重要性を説きながらインド国内外で公演するTIPAの活動の分析を通し、難民社会のナショナリズムが抱えている問題を提示する。


報告者紹介:
・専門領域:文化人類学
・主な著作・論文 
2013『舞台の上の難民─チベット難民芸能集団の民族誌』法蔵館。
2011『宗教概念の彼方へ』磯前順一と共編、法蔵館。
2011「音楽をつくる─現代的チベット音楽の制作現場」田中雅一・船山徹編『コンタクト・ゾーンの人文学─Problematique/問題系』晃洋書房。
2008「ダラムサラで構築されるチベット文化─チベット歌劇ラモと祭典ショトンをめぐる記述と言説の考察を通して─」『文化人類学』73(1)。