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共同研究

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[ 編集者:先端社会研究所   2016年5月21日 更新  ]

2016-2018年度先端社会研究所共同研究 研究計画

ソーシャル・ディスアドバンテージの社会的構成とその支援実践に関する研究(ソーシャル・ディスアドバンテージ班)

 本研究課題は、いまだ周縁化されている人びと(ソーシャル・ディスアドバンテージ)──LGBT、障害者、難病患者、薬害被害者、ホームレス、薬物依存者、特定労働者、部落差別、エスニック・マイノリティ等──をめぐり、その社会的構成過程と維持過程を「ナショナルなもの」の創出という観点から分析する。さらにそれに対する支援実践のなかで周縁化カテゴリー間の確執などの諸問題を記述し、これを上記の分析結果から捉え直すことで、現代的な支援活動の可能性を検討する。最後に、以上を再帰的に捉え返し、周縁化とそれに対抗する支援実践全体を、後期近代社会の適応問題として理論的に検討する。

メンバー

代表者:三浦 耕吉郎(社会学部・教授)
班員:
<研究員>
佐藤 哲彦(社会学部・教授)
金 明秀(社会学部・教授)
榎本 てる子(神学部・准教授)
白波瀬 達也(社会学部・准教授)
<客員研究員>
前田 拓也(神戸学院大学現代社会学部・准教授)

文化の国際移動と表象の政治(文化表象班)

 本研究は国境を越えて移動する表象文化を分析対象とする。人が出身国と受入れ国との狭間に置かれながらこれを乗り越えようとする力学が働くように、表象文化をめぐっても、その受入れ国、地域に根付いた文化との間で巧妙な折衝が確認できると想定される。これに着目することで、移動する対象の取捨のみならず、移動の方向性や反復性を左右していると想定される政治力学を明らかにする。世界の諸文化を事例として、その担い手が特定の国民には限られないという前提に立脚したうえで分析を進める。そのうえで、文化とその新たな担い手との「接続の諸相」を明らかにする。

メンバー

代表者:鳥羽 美鈴(社会学部・准教授)
班員:
<研究員>
島村 恭則(社会学部・教授)
荒山 正彦(文学部・教授)
大石 太郎(国際学部・准教授)
<客員研究員>
若松 邦弘(東京外国語大学・教授)

「フードスケープ」から見るグローバル化(食研究班)

 グローバル化が進む世界において、その派生現象まで含め、理論的、メカニズム的な水準で理解を深めることが、社会科学全体の大きなテーマになっている。グローバル化については、主として「新自由主義」に対するリアクションとして現代の世界を捉える理念的な理解と、政治学・経済学を中心とした実証的な実態把握の間で乖離が生じ始めている一方、現実に即したメカニズムの解明、モデル化は進んでいない。
 他方で、この課題に向き合うには、取り上げなければならない要素が無数に存在するという問題もある。GDPの増大、人口構造、産業構造、民主主義体制の広がりといったマクロな指標から、価値意識に関わるものや、先端的であるために量的には把握できないような事例まで、扱う幅は広い。こうした課題に対応すべく、本研究班では広く「食」に関わるテーマを切り口としつつ、それを入口にして研究を進めていきたい。
 特に、生産過程の複雑化により、産地と加工地と消費地がそれぞれ異なるようなケース、多国籍企業による食流通の寡占といった現代的な事象に対して、日本を含む先進社会がどのように対応しているのかといった論点など、今世紀に入ってからより重要性を増した問題は多い。これらの問題にひとつひとつ取り組みながら、中長期的な目標として、冒頭に掲げた理論的・メカニズム的な理解を深めていきたい。以上が、本研究テーマの趣旨である。

メンバー

代表者:鈴木 謙介(社会学部・准教授)
班員:
<研究員>
高原 基彰(社会学部・准教授)
山田 真裕(法学部・教授)
<客員研究員>
柴田 悠(京都大学・准教授)
富永 京子(立命館大学・准教授)

2012-2015年度先端社会研究所共同研究 研究計画

アジアにおける公共社会論の構想―「排除」と「包摂」の二元論を超える社会調査―

1.目的

 欧米では1970年代以降、「包摂型社会」から「排除型社会」へと移行し、さらに1990年代以降、グローバリゼーションとネオリベラリズムの大波の中、この傾向は急激に強化されて現在に至っている(ジョック・ヤング)。そして、ほぼ同様の動きは、日本社会においても、グローバリゼーションの浸透下、顕在化するようになってきている。
 これに対して、社会のあり方を再創造する新たな社会思想の登場が期待されており、日本においても、たとえば、西欧思想史を援用しつつ、社会を多様性と複数性、流動性と包摂性からなる、「多にして一」の世界として再構想する思索(竹沢尚一郎『社会とは何か』)などが現れるようになっている。
もっとも、社会の再創造は、西欧思想史を導きの糸としてその作業を行なう立場とともに、西欧とは異なる地域における生の経験に学びつつ、これを行なうという道筋もありえるであろう。
本研究は、欧米における社会思想形成の動向に配慮しつつも、後者の立場に立った社会構想研究を実施するものである。具体的には、アジアにおける「排除」と「包摂」をめぐる経験の多様性の中から、「排除型社会」とは異なる社会のあり方を構想する知的資源、あるいは「排除型社会」を生き延びるための社会理論を取り出そうとする試みである。そこでは、たとえば、「排除」と「包摂」の二元論的思考を超え出て、対立のまま共存する「排除の無効化」の理論的展望の獲得が行なわれることになる。
 本研究では、その理論的展望を「公共社会論」と呼んでいる。社会学分野では、“For Public Sociology”と題した2004年アメリカ社会学会大会のブラウォイ会長の講演から、新しい社会学の方向性をめぐって広範な議論が巻き起こった。そこで人々に共有されたのは、社会学は単に研究者のための学問にとどまるべきではなく、一般社会と積極的にかかわりながら政策的、規範的な課題にも取り組む学問を志すべきだという問題意識である。ほぼ同時期、文化人類学分野でもロバート・ブロノフスキーらがPublic Anthropologyを構想し、公共の関心の高い社会問題に取り組み、その解決を目指す学問を提唱した。
本研究は、これらの北米的関心とは異なるルーツから「人類の幸福に資する学問」を出発点としているが、同時に、学界のための学問を乗り越え、実践的な課題への取り組みを通じて新たな公共性の構築に寄与するべきだという問題意識に深く共鳴している。本研究の知的展望を指して「公共社会論」と称する理由は、その問題意識を明示するためである。

2.方法

 このプロジェクトの遂行は、先端社会研究所のこれまでの研究成果をふまえた上で、「南アジア/インド」班、「中国国境域/雲南」班、「日本」班の3つのブランチを設定し、3年の研究期間をかけて行なう。
 対象地域をインド、中国周縁部、日本に設定した理由は、「排除」と「包摂」をめぐる実態分析と理論構築の場として、言語、宗教、カースト等において多くの多様性と対立を抱えるインド、民族間関係の多様性と流動性に富む中国周縁部、およびこれまでの多文化共生論等では看過されてきた日本の周縁社会が、最も明確な分析結果を得られるとの見通しによる。
 研究期間を3年とする理由は、初年度を予備調査、2年目を本調査、3年目を比較および補足調査にあてるためである。本研究の課題は、これまでの先端研の成果を踏まえながらも新たに設定したものであること、とくにインドについては、まったく新しいフィールドであること、また新規参加(指定研究)の研究員も構成員全体の半数を超えることから、3年の研究期間が必要であると判断した。

 「南アジア/インド」班は、関根康正をリーダーとし、インドを中心とする南アジア社会における「排除」と「包摂」のあり方を検討する。多年にわたってインドをフィールドに生活世界における「排除」と「包摂」の実態を調査研究してきた関根の蓄積をふまえ、「ストリート(路上空間)」や「カースト」、「不可触民」、「地域言語」等をめぐる「排除」「包摂」のあり方の動態を分析する中から、西欧近代型の「排除と包摂」パラダイムとは異なる原理からなる社会理論の構築をめざす。
 「中国境界域/雲南」班は、荻野昌弘をリーダーとし、中国雲南省を中心とする中国国境域(中国と東南アジア諸国との国境地域)の社会に見られる「排除」と「包摂」のあり方を検討する。これまで雲南省をフィールドに少数民族と国家との関係のあり方を分析してきた荻野の成果と、2010・2011年度先端研研究プロジェクト「共生/移動」における雲南少数民族調査の成果をふまえ、市場経済の浸透下における民族間関係とそこに見られる「排除」と「包摂」のあり方を検討し、西欧近代型の「排除と包摂」パラダイムとは異なる原理からなる社会理論の構築をめざす。
 「日本」班は、山泰幸をリーダーとし、日本社会史および日本の周縁社会(マイノリティ社会)に見られる「排除」と「包摂」のあり方を検討する。近代日本社会は、欧米の近代社会をモデルに近代化を進めてきたが、一方で、「排除」と「包摂」をめぐっては、歴史的、階層的、地域的等さまざまな次元で多様なあり方が存在してきた。民俗社会研究や差別史研究、マイノリティ研究等ですでに多くの蓄積を有する班員が、アジア諸地域との比較を視野に入れつつ、日本社会における「排除」と「包摂」のあり方を再検討し、西欧近代型の「排除と包摂」パラダイムとは異なる原理からなる社会理論の構築をめざす。

 それぞれのブランチにおいては、如上の課題のもとに「排除」と「包摂」をめぐる知見を抽出する作業を遂行してゆくが、あわせてプロジェクト全体での共同討議を定期的に実施し、欧米型排除社会(包摂社会)のフレームを転換し、無力化する(もしくは、「生き延びる」)社会理論の構築作業を進める。

 なお、アジアをフィールドとする本研究の課題は、西欧近代の社会観にもとづく調査枠組みを持ち込むことによっては解明することが難しい。アジアの現場は、アジアの現場で立ち上げた社会調査の枠組みによってはじめて把握することが可能となる。そして、そのようにして構築された新たな調査枠組みは、既存の社会調査のパラダイムを乗り越える、新たな可能性に満ちたものとなろう。先端研の研究には、COE時代からの「社会調査」研究の蓄積がある。本研究は、その到達点をさらに一歩踏み出した研究成果の産出を期して実施するものである。

3.研究の独自性と期待される成果

 排除と包摂については、これまで社会学、人類学等において研究の蓄積があるが、貴重ないくつかの試みを除くと、依然として西欧流の「排除/包摂」二元論の理論的優越状況を十分には乗り越えられていない。その点を焦点化するのが本研究であり、「排除/包摂」二元論を超えた社会理論の構築をより自覚的に前進させることになる。すなわち、この問題に正面から取り組み、「排除/包摂」二元論では捉えきれない軋轢界面の複雑な入り組みの諸現象を説明する理論―たとえば、「対立のまま共存するという排除の無効化の理論」―を構築し、提示する。
この成果は、人文社会学研究に理論的革新と新たな研究領域の創出をもたらすのみならず、現代の「排除型社会」を生き抜くための生活戦術創出の理論的バックボーンを提供することにつながる。このことは公共社会論の一つの実践としての意味を有するものにほかならない。
 また、これらの成果は、最終年度におけるシンポジウム「アジアにおける公共社会論の構想―「排除」と「包摂」の二元論を超えて―」(仮題)の開催、および論集『「排除」と「包摂」の二元論を超えて―アジアにおける公共社会論の構想―』(仮題)の刊行として社会へ公開する。

4.各班のメンバーと活動

共生/移動「『マチ場的なるもの』からの多文化共生論-近代都市の経験と生の多様性-」

本研究は、「複数の多文化共生論」という観点に立って、地域社会の文脈/社会史に即した「内発的多文化共生論」を構想・構築することを目的としている。これにより、外発的な理論、政策のストレートな移入に傾きがちな多文化主義の現状を相対化し、従来の多文化主義をめぐる議論に新たな知見を提示しようとするものである。

ここでいう「多文化」とは、「外国人の文化」「多民族文化」のみならず、階層、世代、ジェンダーによる文化的差異、身体的マイノリティの文化的個性、地域的個性(地域アイデンティティ)、などを広くさすものとする。また、「共生」は、単に「他者と仲良く生きる」ことを意味するのではなく、「他者(多様性、混沌)と折り合いをつけながら生抜いてゆくこと」を意味するものとしてとらえる。こうした意味での「多文化共生/生抜きの作法」(の可能性と課題)を都市、とりわけ近代都市の多様な経験―対面関係としての他者接触とそこでの「共生/生抜きの作法」の実践など―の蓄積の中に見出し、既存の「多文化主義」を相対化したところで新たな「多文化共生」のビジョンを模索する。 具体的には、日本国内および中国の近代都市をフィールドに、都市における他者接触の多様な経験の中に見られる「共生/生抜きの作法」(の可能性と限界性=課題)の蓄積=「マチ場的なるもの」を抽出する。またそれをふまえて、「マチ場的なるもの」を喪失しつつある現代社会での「共生/生抜き」のあり方について新たな知見を獲得しようとするものである。

2011年度公募研究

研究テーマ:「英国と米国におけるカリブ海系住民の文化実践についての研究」
研究代表者:鈴木慎一郎(社会学部・教授)

研究内容:カリブ海地域は、居場所喪失やハイブリッド化をめぐる人文社会系諸学問分野の議論の中で、特権的な位置を与えられてきた。そして、同地域の英語圏の人々にとっては、(旧)宗主国である英国への20世紀中葉における人的移動、及び、西半球の大国である米国への20世紀末における人的移動は、セカンド・ディアスポラ(二度目の離散)にあたるものであり、これについては近年精力的に研究がなされてきた。そうした研究は、おおよそ1980年代までは、白人的なものとして人種化されてきた英米それぞれのナショナル・アイデンティティーに対しての抵抗、という文脈でカリブ海系住民の文化実践を捉える傾向が目立っていたと言える。しかし、英国と米国の双方で公定の多文化主義やいわゆる官製の多文化共生の言説が一定程度まで浸透した1990年代以降においては、「人種化されたナショナル・アイデンティティーへの抵抗」という視点のみにとらわれるのではなく、とりわけ都市部において多様な主体の間の接触を通じて展開していると考えられる、より複雑化した日常的な文化実践に注意を払うことが必要だと考えられる。本研究はその点についての研究を志すものであり、これを通し、「共生/移動」プロジェクトに、指定研究が扱うのとは異なった民族誌的事例に即しながら理論的な考察を深める、という貢献をすることが期待される。


研究テーマ:「フィリピンの先住民族コミュニティの内発的発展を促進させる文化再発見型アクションリサーチ」
研究代表者:高杉公人(人間福祉学部)

研究内容:フィリピンを含めて世界には「開発」という名の下に自らの居住地を失い生活を脅かされている先住民族は数多く存在する。しかしながら、近代化とグローバリゼーションの潮流の中で以前のように先住民族が現代社会から隔離した環境で生活するのは今や不可能となっており、その中で先住民族が外発的な開発によって生活を脅かされるのではなく、自身の文化や歴史、ライフスタイルを継承しつつコミュニティの持続的発展を目指す内発的発展型の社会開発を行うようパラダイムをシフトする必要性が生じている。

 本研究者はフィリピンにおける先住民族の内発的発展型社会開発をトピックとし、その実践手法の創造を研究主題として研究を行っている。その研究は本研究者(現在、日本社会福祉大学 国際社会開発 博士課程に在籍)の博士論文「フィリピンの先住民族コミュニティにおける内発的発展型社会開発の方法と実践に関する研究」としてまとめられつつあり、本研究はその一環として位置づけられる。
 
博士課程の研究では、フィリピン先住民族の内発的発展を説明する為のフレームとして髙田の内発的発展モデルを採用しており、髙田が社会の内発的発展を促す条件としている政治(Politics)、経済(Economy)、文化(Culture)、の相互作用(PEC構造)を機能させる要因の解明を研究目標としている。とりわけ本研究においては、フィリピン先住民族の文化にスポットを当てて、外部者との接触により失われつつある伝統文化を再発見し、文化的強みを活かしてコミュニティの内発的発展型社会開発の実践方法を探ることを研究主題とする。

 本研究は、研究者本人とフィリピンの先住民族支援NGOであるPAFIDとの協働により実施される。しかしながら、研究者自体が先住民族にとって「外部者」であり、先住民族コミュニティの内発的発展の阻害要因となりかねない。そのような事態を避け、本研究者が先住民族コミュニティに溶け込んで内発的発展を促す社会開発の後方支援者となる為に、「文化再発見型アクションリサーチ」を実施する。この手法は、研究者が「調査者」として先住民族コミュニティに入り込むのでは無く、口頭で伝承してきた文化(Traditional Knowledge -TK)を文章化して次世代に残すというアクションの協力者となり、先住民族のコミュニティとの参加型ワークショップを通して共に文化を学び合うことで価値を再発見するというものである。その結果、先住民族と研究者が文化を強みとしてコミュニティを内発的に発展させる社会開発プロジェクトを共同考案することも可能になる。この手法には、伝統的な農法や病気の治療法等、失われつつある文化的価値を先住民族の若者や子ども達が再発見して先住民族のメンバーである事に自身を持つ事ができるというエンパワーメントの効果も期待できる。研究者とPAFIDは15年間の共同研究やプロジェクト発案の実績があり、本研究の実施可能性は極めて高く、成果も期待できる。

2010年度公募研究

研究テーマ:「アメリカ合衆国都市におけるラティーノ系およびカリブ海系住民の社会運動と文化実践についての研究」
研究代表者:鈴木慎一郎(社会学部・教授)
研究分担者:辻 輝之(先端社会研究所専任研究員)

研究内容:アメリカ合衆国のいくつかの大都市では、多民族化・多言語化、要塞化、中心部のスラム化などの動きの中、ラティーノ系(ラテンアメリカのスペイン語圏に出自を持つ者)住民やカリブ海地域に出自を持つ住民が、他の諸集団との接触や交渉を重ねながら社会運動や文化実践を展開させている。本研究ではこのような社会運動と文化実践を、地球規模で進行する新自由主義的な都市統治の再編への、反応として考察する。この考察を通じて本研究は、「共生/移動」研究プロジエクトに、指定研究とは別の地域からの事例に即しつつ理論的な考察を深化させる、という貢献をすることが期待される。研究の分担は次の通りである。まず鈴本は、都市研究のロスアンジェルス学派に位置づけられる論者であるマイク・デイヴィスのMagical Urbanism: Latinos Reinvent the US Big City (London and New York: Verso, 2000) の緻密な検討を通し、同書の研究を、ネオリベラル・グローバリゼーションに関するデイヴィスの研究全体の中に的確に位置づける作業を行なう。鈴木はまた、研究代表者として本研究の取りまとめを行なう。辻は、合衆国諸大都市のうちで特にフロリダ州マイアミを対象とし、この都市におけるカリブ海系住民の社会運動や文化実践について、エスノグラフィックな研究に基づいた理論的検討を行なう。

景観/空間「空間をめぐる/景観をえがく」

【景観意識調査と景観インデックス班】
都市景観の構成要素とそれに影響する社会的要因を、特に社会移動と地域移動に注目して探求する。調査地としては、長野県安曇野市と兵庫県西宮市を中心にして研究をすすめる。各地の景観行政担当者と連携しながら調査票調査の実施、景観インデックスの作成、分析結果の行政・地域活動へのフィードバック(S-cube)を行う。

【空間情報のデータ分析班】
官庁統計を中心とした空間情報を含むデータ分析について、データを収集・修正・蓄積し、データアーカイブとして蓄積していく作業をすすめる。

【景観/場所表象をめぐる質的研究班】
空間上で確認される景観的(・場所的)差異は自然発生的にある「本質」ではなく、様々な主体による文化的・社会的な諸実践の重層によって創出されている。景観が社会的構築物であることはもはや周知のことである。ここで重視したいのはその具体的な構築のなされ方である。各種のメディアによる表象を通じて、あるいは特定の空間的・社会的コンテクストにおける行政主体などの諸実践を通じて構築される景観(ないし場所)表象を,質的なデータの収集・整理を通じて明らかにする。具体的には観光ガイドブックを歴史的に通覧することによる観光地表象の変遷、軍港都市・広島県呉市や国立公園のある鳥取県大山地域などをめぐるアイデンティティや記憶をキーワードとした行政主体による景観・場所創出の活動、さらには博覧会のようなイベントで確認される空間創出の政治性などを詳細に見ていきたい。

2011年度公募研究

研究テーマ:「境界線上の世界遺産保護をめぐるセキュリティ/排除の政治言説の構築-プレアビヒア寺院を事例にして-」
研究代表者:重政公一(国際学部)

研究内容:タイとカンボジアとの国境未確定地域には2008年にユネスコ世界遺産に登録された11世紀の建築物といわれるプレアビヒアヒンズー教寺院がある。これまでの領土・領域をめぐる主要な争点は問題となる地域の帰属と包摂(帰 属先を認められた側)と排除(帰属を認められない側)との二面性の関係から捉えられてきた。しかし、本研究が対象とする人類共通の遺産ともいうべき世界遺産が含まれる国境未確定地域の領有権をめぐる対立への解決は従来の国益が対立する包摂/排除の構図を越えて人類の公共益の視点から捉えなければならない。

 1962年の国際司法裁判所の帰属先の判断(カンボジア領)以降、この国境未確定地域は両国間で顕在的な紛争とはならなかったが、なぜ2008年のユネスコ世界遺産登録以降、5度にわたる両国間の紛争に転じてしまったのか。この問いへの鍵は、国境未確定地域に関与する人々の紛争を潜在的抑制させておいた政治的言説空間が ローカル・アクター(主に住民、軍部、メディアなど)によって安全保障問題化(セキュリタイズ)され、リージョナルな顕在的な対立へと言語空間を昇華させ、武力行使に至ったと考えて、その政治過程を分析することにあると考える。本研究で明らかにする事柄は次の2点である。

1 領有権を主張する当事国(タイ、カンボジア)のプレアビヒアを含む国境未確定地域に対する政治言説のフレーミング調査をそれぞれの新聞、雑誌記事、オピニオンリーダーの著した論評、論文及び現地で の聞き取り調査などから2008年以降を中心に分析する。このため実情をよりよく反映させるために両国への現地調 査が不可欠になる。
2 国際関係論でいうセキュリタイゼーションの枠組みを活用し、1の調査を元にいかなる理由 で潜在的対立に抑制されていたものがなぜ安全保障化されたのか、そこに関わる言語空間の変容をもたらしたものは何かを明らかにする。

2010年度公募研究

研究テーマ:「戦前期の満州・朝鮮半島・台湾・千島樺太におけるツーリズム空間に関する研究」
研究代表者:荒山正彦(文学部・教授)

研究内容:20世紀前半期における、日本や日本人をゲストとした植民地へのツーリズムを事例として、東アジアの空間経験を描くことが本研究の目的である。19世紀末から20世紀前半期にかけて、台湾や千島樺太、朝鮮半島、満洲などを自国の版図に組み入れた日本では、これらの植民地を目的地としたツーリズムが非常に盛んに行われた、それは、政府高官やアカデミシャン、文人などの社会的エリート層による旅行ばかりではなく、学校の修学旅行、職場の団体旅行、旅行社が主催した一般向けの団体旅行などのかたちをとっても数多く実施された。

これまでの研究においては、それら数多くの植民地ツーリズムのなかで、個別の旅行について実証的な事例研究がなされるか、あるいは満洲や台湾などある特定の目的地へのツーリズムの一面が断片的に明らかにされてきた。しかしながら、同時代における植民地の領域全体を見渡して、その空間的な経験を総合的に俯瞰した研究はいまだなされていない。申請者も同様に、これまでの研究においてその全体性の野面を整理するには至っていない。そこで本研究課題「戦前期の満洲・朝鮮半島・台湾・千島樺太におけるツーリズム空間に関する研究」では、植民地のツーリズム空間の全体像を把握し、俯瞰することを目的とする。かかる研究課題に対して本年度は、植民地ツーリズムの実態を有効に読み取ることができると考えられる1) 旅行案内書(ガイドブック)、2) 一枚もののリーフレット、3) 『旅』、『海』、『海の旅』などの旅行雑誌監事の3項目を調査分析対象とする。具体的な研究においては、 これら3項目の書誌一覧を作成し、あわせて資料の収集を行い、 植民地を目的地としたツーリズム空閲を明らかにしたいと考える。

セキュリティ/排除「境界線上の空間と経験」

 ここで扱う「セキュリティ」とは、物理的な暴力や災害などに対する警備・警戒だけに限定はされるものではない。現代社会においては、明確な敵や加害者などが存在する「わかりやすい危険」の方が、むしろ稀なように思われる。潜在的なリスクに対する漠とした不安が、かつてないほど、われわれの周囲に漂っているのではないだろうか。明示的な姿形をとるものではないからこそ、現在われわれはそれに強くとらわれているのではないだろうか。
そう考えてくると、ここで言う「排除」も、ある人々を物理的な境界の向こう側に、強制的に追いやるといった単純なもののみではありえなくなってくる。ある人々を不可視化する、もしくは他者としてカテゴライズし、有徴化し、その人々との間に心理的なバリアを築く、あるいはそうしたバリアを排除される側に植えつけることで、排除する側の領域を不可侵なものとするといった行為も視野に入れたいと思う。
また時には、排除される側をある類型的な語りの中へと押し込めることで、他者の馴化や包摂を試み、「リスクを飼い慣らす」といった方略がとられることにも留意したい。このように「セキュリティ/排除」に関して多角的な問いをたてることで、本研究プロジェクトを通じて、人々の間での「自明性の共有=安心」の減退が、セキュリティへの過剰な要求や異質なものへの不寛容へと帰結しかねない現代社会について考察を深めていきたい。
その際、基本的な方針として、ここまで述べてきたように、①「セキュリティ/排除」というテーマを物理的な空間および身体をめぐる問題に限定しないことに加え、先端社会研究所が続けてきた②「戦争が生み出す社会:戦後空間と米軍基地」プロジェクトの蓄積をいかす、また2010年度より始まる③「景観/空間」「移動/共生」プロジェクトとのブリッジを試みるの2点を挙げておきたい。
 基地をめぐっては、「セキュリティ/排除」というテーマ設定のみならず、基地およびその周辺の「景観/空間」の変容・変質や、基地に関わる人々の「移動/共生」にともなう干渉・摩擦も、重要な問題であることは多言を要さない。このように「セキュリティ/排除」「景観/空間」「移動/共生」という問題群は深く相互に連関しており、研究プロジェクト間の交流を心がけ、その関連性を意識することが、各研究プロジェクトの活性化につながるであろう。

2011年度公募研究

研究テーマ:「日系ペルー人における日本文化の伝承」
研究代表者:鳥羽美鈴(社会学部)

研究内容:本研究の目的は、日系ペルー人における日本文化の伝承の実態を、リマ市内の日系教育機関における参与観察と日系ペルー人コミュニティーにおける聞き取りから明らかにすることである。ペルーの日系人は第五世代まで含めると約5万人に及び、世界においてペルーは大きな日系コミュニティーを抱えている国の一つである。日系という血統ゆえに日系ペルー人は、日系ブラジル人らとともに日本入国や在留資格の面で優遇されてきた。
しかし、「日系」でありながら日本文化を必ずしも継承しているわけではない「彼ら」と地元住民との文化的軋轢は絶えない。そして、南米日系社会への派遣員たちは、「外国人」である日系人と出会い、期待とは異なる現実を前に戸惑いや諸問題を訴えている。「他者」と位置づけられた人々は、「セキュリティ/排除」研究プロジエクトが注視する「潜在的なリスクに対する漠とした不安」を抱かれやすいが、そこには「彼ら」に対する無理解があるだろう。
本研究の成果は、多言語化・多文化化が進む日本社会にあって、相互理解の促進と、言語や文化の違いによって差別や排除を被ることのない公正な多文化社会の実現に寄与しうるものである。

研究テーマ:「女性のオンライン社会参加と市民性の変容についてのアジアにおける構造分析-包摂と排除の境界線をさぐる-」
研究代表者:吉野太郎(総合政策学部)
研究分担者:清末愛砂(島根大学男女共同参画推進室)、葉 蔭聰(中国・嶺南大学文化系学科)

研究内容:インターネットとブロードバンドが偏在するようになった現在、ICT(情報通信技術)が社会の中にすでに埋め込まれている多様な格差・差別を縮めることにも、そしてときには拡大することにも使われるようになった。本研究ではとりわけ女性のオンラインを利用した社会参加の状況、すなわちさまざまな社会的地位からの女性がICTを媒介してどのような市民的権利に関わる活動を行っているのか焦点をあてる。そして日本・香港・中国本土間の差異の分析を行う。                     
かつて、パソコン通信・インターネットと言ったニューテクノロジーが、新しい市民社会や公共圏を構成しうるのではないかという分析が行われており、ジェンダーの観点では1995年の北京世界女性会議後の動きがポイントとなっている。日本の女性運動内においても1990年代後半からICTにたいする強い注目が生まれるようになっている。共同研究者の葉蔭聰氏らによると、香港という英国による占領と中国本土による強大な影響を受けてきた地域・国であっても、もしくはその影響があるからこそ、ジェンダーイクオリティについての諸制度が構築されてきたという。その上で、他の強い植民地化を経た他のアジアの国の諸制度との状況との違いを指摘しつつ、香港と中国本土の比較研究が行われている。
 香港・日本・中国本土等における社会変革への道を切り開く試みを比較しその差異に注目し、それぞれの地域の体験から、ICTというツールが包摂する社会運動とそこから排除されるものの境界線上の「空間」のあり方について研究を進めていく。

2010年度公募研究

研究テーマ:”The battle against 'virtual exclusion':Civil society media activism around Internet and media policy”
研究代表者:ガブリエレ・ハード(社会学部・助教)

研究内容: Migrants, indigenous peoples, political activists, NPOs, homeless people, feminists and other groups have traditionally been excluded from the mass media. For them, media dedicated to making their voices heard are, in some cases, essential to their personal and cultural survival. Even for the 'average person', civil society media, especially alternative, activist media, community media and the media of social movements and marginalized peoples play an important role: They bring to their attention issues usually unheard and unseen, build empathy for how 'others' think and feel, and help encourage questioning of traditional 'mechanisms of exclusion', and provide a space for dialogue beyond 'social barriers'.
Yet in Japan, unlike many other countries, there is no official recognition of such media. For example, there is no policy promoting indigenous media (as there is e.g. in Canada or Australia) or recognizing non-commercial broadcasting of any kind (such as public access TV or community radio). NPOs as media producers are considered an anomaly within the media market. Without access to such means of distribution, many citizens' groups have eagerly seized upon the Internet, and pioneered a number of now-popular online formats and genres since the 1980s. Since the early 2000s, there has been a surge of online civil society media best epitomized by groups like ourplanet-TV (an on-demand and livestreaming citizens' media center and public access station) , allNEETnippon (an Internet radio station co-founded by Amemiya Karin) and uniontube (a kind of you-tube for labor issues).
However, recent Japanese mass media reports portray the Internet as a space where aggression, crime and fraud is rampant. In the name of reducing 'harmful content' and increasing 'Internet security' consecutive governments have been planning ever tighter controls of Internet content. While this has elicited shouts of censorship from parts of the Internet and content industries, the perspective of civil society media has rarely been heard. Yet, these media, and the people depending on them, stand to lose the most in the looming 'convergence' of media and telecommuniction laws. Once again, they are in grave danger of being systematically excluded from the new media system (as they have been from the broadcast media system).
This project will document the struggles of civil society media practicioners (実践者)in their ongoing battle against exclusion from access to communication channels and provide an international context of theory and existing research in the field.

共同研究「戦争が生み出す社会」

先端社会研究所は、関西学院大学内外の研究者とともに共同研究「戦争が生み出す社会」を進めていました。戦争をテーマにしたのは、それが他者と遭遇する機会を増大させるきわめて重要なできごとで、しかも戦争が終わったあとの社会も、戦争というできごとにさまざまなかたちで影響されるからです。この意味で、本研究所は、戦争とそれが生み出す社会こそ、他者問題解明のうえでいち早く取り上げられなければならない研究対象であると考えています。
 なお、この共同研究に関しては、メイン・ページ上のバナー「共同研究」、あるいは、下記のリンクをクリックしてください。


共同研究では、定期研究会を開催するほか、以下のように、2008年度は、国際シンポジウムを開催し、2009年度は、国際学会にセッションを設けています。


「戦争が生み出す社会」研究の成果は、書籍として近日中に刊行予定です。

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