リサーチコンペ 2020年度


[ 編集者:先端社会研究所   2020年6月23日 更新 ]

 

2020年度先端社会研究所リサーチコンペ採択者の研究計画要旨および審査講評

採択者による研究計画要旨と審査の講評は、以下の通りです。

生の技法としてのサブカルチャー:長野県松本市のインディー音楽を媒介とするネットワークの事例から

生井 達也(社会学研究科)

研究概要

現代社会においてサブカルチャーは、「労働」に対する「趣味」や「娯楽」に位置づけられ、たんなる消費として回収されてしまっているかのように思える。しかし、サブカルチャーは、D.ヘブディジが示したように「市場に流通する商品の記号をブリコラージュして新たな意味世界を作り出す」という特徴を持っている。本研究では、そのようなサブカルチャー実践の持つ特徴を、人々が日々の営みを紡いでいくための「生の技法」として捉え返すことを目指す。具体的には、長野県松本市におけるインディー音楽を媒介とした人々のネットワークや生活実践を取り上げ、音楽を媒介とした生きられる場の構築と維持の過程を、現地調査から丁寧に描出し検討する。

講評

 「まるも」のように、古くからローカルな文化交流の場として機能した場所が、あらたな文化とネットワークにいかに関わりをもつのか興味深い対象である。ライブハウスから広がるネットワークをどのように記述するのかが明確でなく、また研究の質からいっても、客観的なネットワークの広がりよりは、実践者にとっての主観的意味世界の広がりを記述するほうが実り豊かな研究になるのではないかとの期待がある。一方、ネットワークの範囲の観測に際しては、可能な限り一般化できるワーディングでの聞き取りも目指していただきたい。また、音楽に関心のない地域住民の認識や態度に関わる視点も必要であろう。

鉄道システムが地域再生産に果たす役割

家高 裕史(社会学研究科)

研究概要

 人間は各々のライフステージにおいて、様々な資源―「就業」「買い物」「医療」「教育」など―へアクセスする必要がある。これらの資源にアクセス困難な地域では人間は生活し続けられない。本研究では、これらの資源が「各住民がアクセス可能な範囲に」かつ「資源提供者側にとって持続可能な形で」存在する地域を「再生産されうる地域」と定義し、「地域再生産性」について考えていきたい。そして、「誰が」「どのような資源へのアクセスのために」鉄道を必要とするのかを明確にしたうえで、「地域再生産性」に「鉄道廃止」がどのような影響を与えてきたのかを解析し、「鉄道という交通機関の社会における役割」を明らかにしようと考えている。

講評

 鉄道は社会的コミュニケーションの基盤であり、本研究の通時的・共時的な価値が現代日本の社会認識に役立つことを期待する。また、都市交通以外の場で、鉄道がローカルな地域といかに関わるかは興味深い。計量分析とは別に、現地の状況について質的に理解し、定量データにいかに接合できるかについて周到な計画を期待する。また、対象地域を選定した理由並びに説明変数、目的変数の明確化を求めたい。

中国における現代説話の伝承動態―湖南省ミャオ族の事例―

李 軒羽(社会学研究科)

研究概要

中国湘西地方には、少数民族のミャオ族の民俗宗教を題材にした世間話が数多く存在する。「趕屍」(客死した人の遺体を故郷まで運んで戻る呪術)、「蠱毒」(虫を用いて他人を害する呪術)、「落洞」(美女の魂を奪って嫁にする洞窟の神)をめぐる語りが特に盛んであり、湘西地方・ミャオ族を代表するイメージとしても定着するようになった。このような語りを扱う論文はわずかに存在するものの、その形成と展開、現代で商品化されているなどの現状に対する考察が極めて不十分である。本研究は、こうした事例を中心にし、「少数民族地域における不思議説話の生成過程」を把握することを通して、消費社会の中で再生産される民俗文化の位相と真正性を解明することを目的とする。

講評

 現代の民俗学研究のテーマとして興味深く、文献調査と現地調査の双方の充実を期待したい。「民俗文化の商品化」というテーマはすでに多くの先行研究があり、本研究の立場をどこに置くかが問われる。「伝承」とその現代における「商品化」、マジョリティによる「内的オリエンタリズム」とマイノリティ自身のオーセンティックなアイデンティティ形成という交差する文脈を結び付ける分析枠組みは期待できる。1年弱の研究期間を考慮し、研究対象または範囲の絞り込みも検討が必要であり、現地調査が叶わなかった場合の計画についても準備しておくことが望ましい。

2020年度リサーチコンペ プレゼンテーション審査会のお知らせ

先端社会研究所が取り組む「大学院教育支援事業」の一環として、全研究科大学院生・研究員を対象に、本研究所の「文化的多様性を尊重する社会の構築を目指した、社会調査を基軸とした研究の拠点」*という目標を理解し、将来それに貢献することが期待される「優れた先端的な研究」を募集しました。厳正な書類選考に基づき、以下3件の研究課題のプレゼンテーションが行われます。助成受領者は、この中から、申請書類と、研究計画に関するプレゼンテーションの審査によって決定されます。


先端社会研究所の目標は以下の通り。
①社会調査を中心とする社会科学的手法によって、
②互いに異なる人々の関わりにまつわる問題群に対して
③学術的視点から未来の指針を示すような研究を実施・支援する

プレゼンテーション審査会当日スケジュール

日時:2020年6月13日(土)9:30~10:55
※2020年度の審査会に関しましては、オンライン(Zoom利用)での開催となります。

9:30  開会挨拶(所長)

9:35  生井 達也(社会学研究科)
      生の技法としてのサブカルチャー:長野県松本市のインディー音楽を媒介とするネットワークの事例から
      
9:50  質疑応答

10:00  家高 裕史(社会学研究科)
       鉄道システムが地域再生産に果たす役割
       
10:15  質疑応答

10:25  李 軒羽(社会学研究科)
       中国における現代説話の伝承動態―湖南省ミャオ族の事例―
       
10:40  質疑応答

10:50  閉会挨拶(副所長)

2020年度先端社会研究所「大学院教育支援事業」リサーチコンペ募集

2020年度先端社会研究所「大学院教育支援事業」
リサーチコンペ 募集要項


*申請書は、下記のリンクにアクセスしダウンロードして下さい。
/cms/kwansei_i_asr/file/2020/2020年度先端社会研究所リサーチコンペ研究計画申請書.xls

1.本事業の趣旨

先端社会研究所が取り組む「大学院教育支援事業」の一環として、全研究科大学院生・研究員を対象に、本研究所の「文化的多様性を尊重する社会の構築を目指した、社会調査を基軸とした研究の拠点」という目標*を理解し、将来それに貢献することが期待される「優れた先端的な研究」を募集します。
 採択者(個人、もしくは数名のグループ)に対しては、一定額の研究助成を行い、当該研究のより一層の発展を支援し、研究者の養成を図ります。

*先端社会研究所の目標は以下の通り。
①社会調査を中心とする社会科学的手法によって、
②互いに異なる人々の関わりにまつわる問題群に対して、
③学術的視点から未来の指針を示すような研究を実施・支援する

2.応募資格者

2020年度の時点における関西学院大学各研究科所属の大学院生ならびに大学院研究員・研究科研究員

3.助成内容と採択件数

1件につき20万円を上限とします。採択件数は、2020年度予算枠(80万円)の範囲内で決定します。
対象となる経費は、物品(消耗品・消耗図書)の購入、学会発表旅費、調査旅費等、研究遂行に必要な費用とします。
※本制度による助成は、主として調査・研究活動に必要な経費を対象としているため、設備・備品等の購入は原則として認めません。

4.助成年限

2020年度内(研究期間:採択通知日~2021年3月31日)

5.募集締切/申請書提出方法 
2020年5月15日(金)15:00(締切日時厳守)

/先端社会研究所(asrあっとkwansei.ac.jp)宛に添付ファイルで提出してください。
※必ず本学のメールアドレス(@kwansei.ac.jp)から送信してください。
(あっと)は@に置き換えてメールを送信してください。

6.応募方法および採択決定までの流れ

1)応募
「2020年度 先端社会研究所リサーチコンペ 研究計画申請書」【様式1、2】に必要事項を記入のうえ、先端社会研究所事務室に提出してください。英文での申請も可能です。
申請書は、先端社会研究所ウェブサイト( http://www.kwansei.ac.jp/i_asr/index.html )よりダウンロードしてください。

2)書類審査
「2020年度先端社会研究所リサーチコンペ審査委員会」において、次の評価ポイントにより書類審査を行い、「4)プレゼンテーション」に進む課題を選考します。
①先端性 ②親和性 ③計画性

3)リサーチコンペウィーク
2020年6月1日(月)~13日(土)をリサーチコンペウィークとし、「研究計画申請書」を先端社会研究所ホームページにて公開します。

4)プレゼンテーション審査
書類審査を通過した応募課題について、公開でプレゼンテーション審査を実施します。
開催日 2020年6月13日(土) 13:30~
場 所 先端社会研究所セミナールーム(社会学部棟3階)
※プレゼンテーション審査においては、研究計画や予算使途などについての審査を行います。
※なお、遠隔(Zoom)での開催となる場合があります。その場合、別途連絡します。

5)採択決定
書類審査およびプレゼンテーション審査を通じて、本事業の趣旨に掲げる目標を理解し、将来それに貢献することが期待される「優れた先端的な研究計画」を採択します。

7.採択決定通知

2020年6月下旬 申請者宛にEメールにて通知します。

8.研究成果の公表
本制度に採択された者は次のとおり研究成果を公表しなければなりません。

① 「中間報告」の提出
       先端社会研究所紀要(2020年度発行予定分)に掲載されます。
② 「研究成果報告書」(研究所所定様式)を2021年4月末日までに提出。
       研究成果報告は一括して先端社会研究所のウェブサイトに掲載します。
③ 「リサーチコンペ報告会」(2021年5月開催予定)での報告
④ 「先端社会研究所紀要」(2021年度発行予定分)への研究報告の投稿

9.問い合わせ先

本募集に関する問い合わせは、全てEメールにて受け付けます。
問い合わせ先メールアドレス: asr(あっと)kwansei.ac.jp
※(あっと)を@に置き換えてメールを送信してください。