1.TV番組で
あるTV番組で,次のような実験を行なっていました。
800人の視線をある一人の背中に向け,一人におくったりおくらなかったりする試行を,ランダムに合計100回繰り返しまし行なっていました。結果は正解が59回でした。
このような実験は,1913年オーストラリアのスタンフォード大学にも行われたそうで,その時の正解率は 50.2% だったそうです。その後も,イギリスでも実験が行なわれたそうですが,結局のところ,人間は後ろの気配が感じられるかどうか分からなかったみたいです。
今回,その番組で,上の実験を行なったみたいですが,結局,後ろの気配が感じられるとも,感じられないとも明言されないまま終了しました。
そこで問題です。みなさんは,今回の正解率 59% は,人間は後ろの気配を感じられると判断しますか,それとも,この情報だけでは判断できないと思いますか。
次のような,流れで考えていきます。
Step1.
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この後ろを向いた人が,適当に手を挙げたと考え,それを基準にします。つまり,当る確率が 1/2(50%) と仮定します。
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Step2.
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このことは,適当に手を挙げても,だいたい 50 回程度は当るだろうと仮定になります。
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Step3.
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上の仮定をもとに,誤差の範囲を決めましょう。つまり,適当に手を挙げてたとしても,偶然当ってしまう範囲を考えることにします。ここが重要です。今,仮に,このような 100 回手を挙げるような実験を 100 回行なって,
a. 95 回はその範囲に入るならば,それは珍しいことではない,つまり,適当に手を挙げても当る値なので,人は後ろの視線を感じることはできないと判断する。
b. その範囲を超えているのであれば,大変珍しいことが起こった,つまり,適当に手を挙げても絶対に起こらない,人には後ろの視線を感じる能力があると判断する。
と判断基準を制定します。
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では,これを式で考えていくことにしましょう。今まで,利用してきた誤差の考え方を用います。
[仮説] 適当に手を挙げたと仮定します。つまり,当る確率は 0.5 であると仮定します。
すると,当る確率を r とすると,当る平均は 0.5 となりますので,
を満たす k の値を求めればよいことになります。
すなわち,誤差の範囲は 0.402<r<0.598 となります。今回の実験では,59 回正解したので,この誤差の範囲に入ってしまいます。したがって,珍しいことが起こったのではない,人は後ろの視線を感じることができるとは言えない,という結果を得ます。
とまあ,このような流れで判断基準(仮説)を設け,判断を行なう,このような考え方を検定と言います。次に,これらのことを数学的に定義していくことにしましょう。
その前に,またまた休憩。2 人で行なう数当てゲーム。例えば,
1.1 人が 200 までの数字を心に思い浮かべます。
2.次に,もう一人の者がその思い浮かべた数字を相手に言います。
3.そして,数字を最初に思い浮かべた者は,その言われた数字が自分の思っている数字と同じであれば,「当り」と言ってゲーム終了。当っていなければ,言われた数字が,自分の思っている数字よりも大きければ「大きい」と,小さければ「小さい」と相手にヒントを与えます。
4.何回のヒントで当たるか競い合うゲームです。
このようなゲームを行なったとき,どのようにすれば勝つことが可能であるか,それを知るためのシミュレーションです。2分探索は,得た情報の最大値と最小値の真ん中の数字を言っていく方法です。それに対し,変形2分探索(これは勝手に私が言っているだけ)は,その範囲の数字を適当に言っていく方法です。
シミュレーションによれば,2分探索の方が良いように思われます。
探索についてのシミュレーションを製作しました。