§2 数 列

14 フィボナッチの数列

 最後に,一味違った数列を紹介致しましょう。

 次の数列の各項は,一体どのような規則にしたがって生成されていっているのでしょうか?。

そうですね。初項,第2項 が与えられたとしましたら,

という具合に生成されています。与えられた数列を {an} として,漸化式で表現しますと,


となります。 上の数列が フィボナッチの数列 と呼ばれるもので,イタリアの有名な数学者 フィボナッチ(1180〜1250または1170〜1240) が 1202 年に出版した 算盤書(Liber Abaci) の中のクイズがもととなっています。彼は,もともと数学の専門家ではなく,父とともに商業を営みながら,多忙な中に寸暇を見出しては数学の研究をしていました。そして,その算盤書で商人たちのために,次のような数学の問題を掲載しました。


 問題の意味が少々分かりにくいので,右の図を用いて説明することにしましょう。(満という言葉は,最初の月や年を 0 ヶ月,0 歳と勘定します。)

 一匹の雌のウサギに着目します。そのウサギは,最初の満2ヶ月は子を産むことができないのですが,3ヶ月後から次々と子を産んでいき,その子も満2ヶ月後から子を産んでいく場合,一体12ヶ月後には何匹のウサギがいることになるでしょうか(a13 を求めよ)? という意味です。

 月ごとのウサギの数を an としますと,ご覧のように,

これをみますと, an

という漸化式を満たしていることが分かります。これがフィボナッチの数列と呼ばれるもので,この数列は,いろいろ面白い性質を持っています。その主なものを紹介していくことにしましょう。

例1.黄金比と黄金分割
 この数列の隣接する 2 項の比

は収束して,

となります。この極限値は 黄金比 としてよく知られている値となります。この値はそもそも,ユークリッド原論に

という命題があります。これを図で示しますと,右のような図となります。つまり,上記を式で表現しますと,

すなわち, φ:1-φ = 1:φ で,φ は φ2 + φ - 1 = 0 の解となります。よって,この式より解は,

で,φ は正の値なので, となります。このような分割を 黄金分割 と呼び,上で求めた極限値,黄金比 と同じ値であることが確かめられます。このような比を利用した長方形は,最も美しい長方形であると言われています。黄金分割を説明しました図は,縦横の比を黄金比としました。いかがでしょうか?
 このように,黄金比は美しい比率であるとされ,名詞の縦横,ギリシャのパルテノン神殿の縦横,ミロのビィーナスのおへそから上と下の比率に見られます。

例2.フィボナッチの渦巻き
 フィボナッチの数列は,左図のように最初に2つの辺の長さ1の正方形を横に並べて書き,その2つの正方形の辺をあわせた長さ2を一辺とする正方形を,それらの正方形の上に記入します。次に,その横に長さ3の正方形を記入していきます。このようにして,数列を図形で表現することができます。

 また,左図のように新しい正方形の1/4円を順に重ねることによって,渦巻きができ上がります。この渦巻きのことを,フィボナッチの渦巻きと呼びます。この渦巻きは,カタツムリの殻や,オウムガイに見ることができます。

例3.ひまわりの種にもフィボナッチ
 ひまわりの花をよく観察しますと,左回りと右回りの渦巻きのあることに気がつきます。その個数は右回りが8個なら,左回りは5個か13個で,右回り左回りの渦巻きの個数は,フィボナッチの隣接2項の組み合わせ

のどれかになっているということです。他に,植物に関しては,茎の上での葉の配列の順序にもフィボナッチの数列が見られるようです。フィボナッチの数列の順で葉をつけていけば,太陽光線の恵みを最大限に享受することができる仕組みになっているそうです.

例4.剰余の周期性
 少し数学的なことに入る前に,頭のトレーニングです。右の図1と図2を比べてみて下さい.図1では面積が 82 = 64 の正方形において,オレンジ色の直線に沿って切って,もう一度図2のように貼りあわせると,いつのまにか面積が増えてしまっています。どうしてでしょうか? 増えた原因ではありませんが 5,8,13 と,ここにもフィボナッチの数列が潜んでいます。

 さて,上の剰余の周期性のお話に戻ります。フィボナッチの数列

を,今度は p = 11 で割り,その余りを順に並べていってみて下さい。すると,

といった具合に第 11 項からまた最初の数字が登場します。このとき,周期が 10 であると呼びます。そこで,右のようなソフトを製作しましたので,本当に周期性があるかどうか確かめてみて下さい。



 これは,a1,a2 の値を,座標平面の格子点ごとに,変化させていき,その点に対する剰余の周期を色分けしたものです。つまり,

(a1,a2) =
  ( 1,1), ( 1,2)…( 1,20)
… ( 2,1), ( 2,2)…( 2,20)
   :   :   :
… (20,1), (20,2)…(20,20)

としたときの,余りの周期を色分けしています。テキストボックスに入れる値は,フィボナッチの数列の値を割る数で,2〜50までの値を入力し,最後にエンターキーを押して下さい。すると,それぞれの初期値に対する周期が下に出力されます。この性質には,以下のような美しい定理が成り立っています。

 実際に,そのような性質が保持されているかどうか,確かめてみて下さい。

 この定理の証明はフィボナッチの一般項と,整数論のあるレベルの結果を仮定しなければなりません。整数論に関しては,触れないことにします.しかし,フィボナッチの数列の一般項は求めることが可能です。「できないよぅ!」と思われるかもしれませんが,いえいえ,皆さんはもうできるはずです。この数列の一般項を求めることが,この章の目標です。

練習問題1 次の関係式

    a1 = 1, a2 = 1, an+2 = an + an+1 (n1)

によって定義される {an} の一般項を求めよ。




 このフィボナッチの数列は,音楽の分野でも,バルトークの作曲に関し,エルネ・レンドヴァイ著「バルトークの作曲技法」では,

とあります。これは,フィボナッチの数列となっていることに気がつくでしょう。

 上の例は,音楽の世界の例ですが,自然界には,多くのフィボナッチの数列が潜んでいます。それらを調べてみるのも面白いかもしれません。全く無秩序に見える自然界も,厳然たる数学的法則に支配されていることが分かります。受験界にも,時々登場しています。

 数列,フィボナッチの数列に関し,もっともっと多くのことをお話したいのですが,もうそろそろ,飽きてきたかもしれません。これで長かった,数列に関するお話を終えることとします。お疲れ様でした。