§3 個数の処理
 
1.集合の表現方法
 
 りんご,みかん,バナナ・・・というような「もの」の集まりを「果物」と呼びます。このように,含まれる「もの」が明確な「もの」の集まりを 集合 といいます。そして,その集合に含まれる一つ一つの「もの」を,その集合の 要素 と呼びます。
 
● 属する
 a が集合 A の要素であるとき,

と表し,b が集合 A の要素でないとき,

と表します。「∈」を「属する」と呼びます。利用するときは,向きに注意し,開いている方が集合で,閉じている方が要素であることに注意しましょう。
 
● 集合の表記方法
 たとえば,1から10までの自然数のうち,奇数全体の集合を A とすると,1,3,5,7,9 を要素とする集合となります。このことを記号で表現する時,次の2つの方法があります。
 
T.具体的に要素を書く方法
 
 中括弧{ }を用いて A={1.3.5.7.9}
 
U.条件を書く方法
 
 A={x|1x10, x は奇数}
 
 これは,A という集合は,
 
 x という要素から成り立っている
 その x は,1x10 で,しかも,奇数である
 
ということを意味します。つまり,「 | 」は,英文法でいう関係代名詞のような役割を果たしています。
 
 T,Uをどのように使い分けるか,次の例で示しましょう。
 
例1.1から100までの偶数全体の集合Aは,

となります。Tの表現方法とUの表現方法を比較すると,Uの表現方法の方がコンパクトにまとまっています。次の例では,もう少し,TとUの違いが分かります。
 
例2.自然数のうち,3の倍数全体の集合Aは,


ワンポイント
数の種類は上のようにいろいろとあります。
実数は,分数の形で表現できる有理数と,
分数の形で表現できない無理数から成立っ
ています。また,実数で表現できない数
(??)を含むような数からなる集合(???)
もあります。(???=複素数,??=虚数 「数学B」
参照)

となります。また,Tでは表現できない場合もあります。
 
例3.0より大きく,1より小さいすべての実数の集合Aは,

となります。これは,Tの表現方法では表現できません。
 
 これらの他に,集合で用いられる記号を紹介します。今まで見たこともない記号が登場しますが,怖がらないで頭の中に収めていきましょう。慣れれば,どうってことないですよ!
 

練習問題1 3で割って2余る自然数全体の集合をCとする。集合Cを,T,Uの表現方法を用いて表せ。ただし,2∈C とする。

 


 
● 部分集合


 2つの集合 A,B について,

とき,A は B の 部分集合 であるといい,

という記号で表し,「A は B に含まれる」,または,「B は A を含む」といいます。たとえば,

のとき,A は6の倍数,B は2の倍数であるから,集合 A の要素はすべて集合 B の要素となりますので,A⊂B となります。特に,A⊂B,B⊂A が成り立っている とき,A と B は等しい と言って,A = B と表します。記号 ⊂,= などで表される集合の間の関係を 包含関係 という。
 
● 共通部分と和集合



 2つの集合 A,B について,

を,A と B の 共通部分 といい,

と表します。すなわち,AB={x|x∈A かつ x∈B} ということです。
 
 また,

を,A と B の 和集合 といい,

と表します。すなわち,AB={x|x∈A または x∈B}ということです。
 
 また,

と呼びます(「∩」は帽子に,「∪」はカップに似ていることからこの呼び方ができたのでしょう)。「かつ」と「または」の方がよく呼ばれます。
 
 要素を1つももたない集合 空集合 といい,記号 φ (ギリシャ文字の"ファイ")で表します。例えば,自然数のうち,A を偶数全体の集合,B を奇数全体の集合とするとき,A ∩ B = φ となります。空集合 φ は,任意の集合 A の部分集合となります。すなわち,任意の集合 A に対して,φ⊂A となります。
 

練習問題2 次の集合のうち,集合 A={1,2,3,6} と包含関係のあるものをあげよ。
 

(1) B={n|nは3の正の約数}
 
(3) D={n|nは12の正の約数}

(2) C={2n|1≦n≦3,nは自然数}
 
(4) E={n|nは6の正の約数}

 
 
 

練習問題3 次の各場合について,A∩B と A∪B は,それぞれどんな集合か。
 

(1) A={1,2,3,4,6,12}, B={1,2,3,6,9,18}
 

 
 

(2) A={x|-2≦x≦2},  B={x|-1<x<3}


 
● 補集合


ワンポイント
和集合の 「」 と
全体集合の 「
を区別するため,全体
集合のアルファベット
U の上を,少しつぶし
ておきます。


 1つの集合 を指定して, の要素や, の部分集合だけを考えるとき,全体集合 といいます。
 今,全体集合 の部分集合 A に対して,A に属さない の要素全体の集合を に関する A の補集合 といい, と表します。このとき,右の図(このような集合の図のことを ベン図 と言います)からも分かりますように,次の関係式が成り立ちます。

例4.={1,2,3,4,5,6} を全体集合とするとき,A={1,3,5} とするとき,A の補集合は,={2,4,6} となります。
 
 ここで,補集合に関する有名な法則を紹介しておきます。
 

ド・モルガンの法則

   


 ここで,どうしてこのような法則が成立するか,(1)の式を利用して説明しておきます。
 
 左のベン図を見て下さい。A∩B の補集合を考えますと,左辺の水色部分となります。一方,右辺において,A の補集合は水色部分,B の補集合も水色部分となり,その互いの水色部分の和集合をとってみます。すると,左辺の A∩B の補集合部分と一致します。(2)についても同様に証明できますので,各自行なってみて下さい。
 

ミニ知識
ド・モルガンの法則は,次のよう
にも言えます。(1)について言
葉でいうと「(AかつB)でない」
ことは,「(Aでない)または(B
でない)となりす。「りんご
かんを食べる」の否定は,(りん
を食べない)または,(みかん
を食べない)となります。


● 要素の個数 
 要素の個数が有限である集合を 有限集合,無限に多くの要素からなる集合を 無限集合 と呼びます。
 
 そして,集合 A が有限集合のとき,その要素の個数を n(A) で表します(n は,numberの頭文字)。
 
例5.次の集合(ただし,Z は整数全体の集合とする)

の n(A),n(B) は

であることから,n(A)=6,n(B)=7 となります。
 
 そろそろ,記号が多く登場しましたので,頭が混乱してきました。これが,最後の記号紹介なのでもう少し続けて下さい。では次に,有限集合 A,B の和集合 A∪B の要素の個数 n(A∪B) を求めてみましょう。
 


 今,黄色の部分の個数を p 個,緑色の部分の個数を q 個とします。そして,n(A∩B)=r とすると,n(A)=p+r,n(B)=q+r となります。一方,n(A∪B)=p+q+r となりますので,

となることが分かります。つまり,A∩B の部分が重なる ことに注意すると上の式が簡単に求められますね。上の事がらをまとめておきます。

 
例6.1 から 100 までの整数のうち,3 の倍数全体の集合を A とし,4 の倍数全体の集合を B とするとき,n(A),n(B),n(A∪B)を,それぞれ求めてみましょう。これらの集合を,それぞれ,具体的に要素の形で表しますと,
 

となります。また,A∩B はどのような集合を表すかと言いますと,A に属し,B にも属する要素の集合なので,A∩B の要素は,3 の倍数であり,4 の倍数でもあるので,12 の倍数であるといえます。したがって,

となります。よって,

なので,

となります。
 

練習問題4 A,B は全体集合 の部分集合であって,次の条件を満たしている。


このとき,n(A∪B),n(A),n(B) の値を求めよ。

 
 
 
 


 


 いかがでしたか。いろいろな新しい記号が登場しました。見慣れないものなので,初めは戸惑うかもしれません。でも,確率を学習していく上において,役に立つ事がらなので,覚えておいて下さい。では,今回のおさらいを最後にして,終わりにしましょう。
 
 括弧の上に正確においてください。全て記号があっていると,評価のところに合格の文字が出てきます。