4つの領域
言語科学領域
人が言語を駆使する仕組みを言語、心理、社会など多角的に追究
ことばを科学的視点から分析し、言語の実態を明らかにする
言語構造、言語コミュニケーションを有効に成り立たせる条件、人間が言語をどのように駆使するかなどを科学的に解明します。研究分野としては、音声学、音韻論、統語論、意味論といった言語 科学の基礎を成す分野や、文と文脈との関連性を考える語用論、生得的な言語獲得能力と外国語習得との関わりを研究する言語習得論、言語と社会との関わりを研究する社会言語学、言語と心理との関係を研究する心理言語学、言語使用の実態研究を行うコーパス言語学、言語表現論など、言語コミュニケーション能力の解明に関する分野があります。後者は言語教育や文化に関する研究とも関係しています。基礎分野を概観する講義で言語を科学的な分析の対象にすることの意味を学び、さらに各論の講義において、その分野での研究方法を身につけることができるようになっています。
修士論文・課題研究論文テーマ(抜粋)
- On the Licensing of Negative Polarity Items in the Complement of Inherently Negative Verbs
- 日本語かき混ぜ文におけるフィラーギャップ依存関係の処理過程 ―事象関連電位を指標として―
- 聾学校におけるろう児と教師の関係性についての社会言語学的研究
- Adjectival Comparison with Less: A Corpus-Based Semantic Approach
- Revival and Revitalization of Minority Language: The Case of Chamorro in Guam
- Aspect Markers in Kochi Japanese in Comparison with Tokyo Japanese and English: Their Syntax and Semantics
クローズアップ講義
音声科学
言語の音声面における規則や現象に焦点を当てます。講座の後半では音韻論(音体系中の規則を明らかにする分野)も扱います。研究対象言語は主に日本語と英語ですが、音声学の範囲は大変広いので、外国語教育に役立つ調音音声学を主に取り扱います。
心理言語学
認知心理学や生理心理学で使われている実験方法から得られるデータに基づいて、言語の理解や発話生産の過程及び 言語の獲得・喪失のしくみを明らかにする学問分野です。母語話者だけではなく、第二言語の学習者についての研究も扱っています。
対照言語学
まったく系統の異なる日本語と英語について、言語そのものはもちろん、文化や発想などにも踏み込んで、両言語の体系を対比します。生成文法、機能文法、言語類型論などの観点からの研究成果を参照しつつ、片方の言語を分析するだけでは分からない両言語の特徴を明らかにします。
コーパス言語学
コーパス言語学とは何か、そして、英語のコーパスを使った実際的な研究方法について学びます。コーパスの基礎的理論を理解したうえで、コーパスをどのように言語研究や辞書編纂に活かしていくことができるか検討していきます。
言語文化学領域
英語圏、フランス語圏、ドイツ語圏、中国語圏などさまざまな言語と文化を研究
境界線を超える ~多言語・多文化社会への学際的アプローチ~
多言語・多文化社会を積極的に理解し、異文化理解の視点からグローバルに行動できる人材を養成します。「比較文化学」「異文化理解」などの科目は言語や文化の境界線を超えようとする科学です。各プログラムの特徴ですが、まず「地域文化研究プログラム」はヨーロッパ、北米、日本を含む東アジア地域の言語や文化にかかわる基礎研究を踏まえて、言語と文化の問題をさまざまな角度から扱います。「多言語多文化学際プログラム」は境界線を超えた言語・文化事象に関わる多彩な問題を扱います。また「映像演劇文化プログラム」は、映画・演劇という文字テクストの枠を超えた表象文化に関わる問題群を扱います。
修士論文・課題研究論文テーマ(抜粋)
- 日本の安楽死議論における「家族」が果たす役割 ―日本思想と西欧思想の比較検討を中心に―
- ウィメン・オン・ザ・ロード ―『テルマ&ルイーズ』におけるジェンダーとジャンル―
- 清末民初の劇場の変遷と上海社会 ―「上海戯園変遷志」を中心に―
- ベトナム戦争映画のモチーフと二重化―『地獄の黙示録』におけるウィラードの揺らぎについてー
- 英語教科書における異文化理解題材の分析
- カナダ在住国際結婚の日本人女性達のライフストーリー
クローズアップ講義
日本文化
近年、「日本的なもの」を他国の文化から差別化し、再評価する動きが日本国内にあります。和食、富士山、桜など。この講義では「日本的なもの」という表象の起源をさぐると共に、それを徹底して「外から」相対化することをめざします。
多言語主義・多文化共生
人の移動が激しくなり、社会は多文化・多言語化しています。その現象を、シティズンシップ教育、海外と国内の日本語教育、ヨーロッパの言語政策、ヘイトスピーチ、猪飼野の民族関 係、日本の多言語化などを題材にして質的に考察します。
言語文化学
4人の教員によるオムニバス形式の授業。英米文化・文学におけるモダニズムおよびポスト・モダニズム期に焦点をあて言語文化の多様性と歴史を学ぶと同時に、人文科学研究の在り方そのものも批判的に考えます。「言語文化」を研究するとは? ぜひ一緒に考えましょう。
映画学
映画学Aではアメリカ、映画学Bではアジアを軸に、映画/映像の分析を通じて、文化を多面的に理解することを目指します。テクストとコンテクスト(文化的・社会的・歴史的文脈)を意識し、クロスメディア研究から見えてくる複雑な文化体系を学問しましょう。
言語教育学領域
学際的、実証的に言語教育を探究
言語教育の変容に柔軟に対応できる確かな教育力を養成
今、外国語の学習・習得研究が脚光を浴びています。なぜでしょうか。これまで言語教育学の主な目的は、その研究成果を教室での教授法に応用することでした。しかしそれだけでなく、外国語の習得(acquisition)という「窓」から、言語習得という「知的いとなみ」、さらには人の「こころの仕組み」を調べる…そんな領域へと変貌したからです。言語の習得や教育の基本を扱う言語教育学、第二言語習得、早期英語教育理論などから、中高生に英語を教える実践を学ぶ英語教育実践、教育評価や、小学校での外国語活動のための小学校英語教育実践まで、言語教育学の全領域をサポートします。現代の言語教育学の潮流へと、しっかりとしたチャート(海図)をもって、皆さんをご案内します。
修士論文テーマ(抜粋)
- Effective Vocabulary Learning for Japanese High School EFL Learners: Prefix Mnemonics
- Intergenerational Transitions of English Education: Toward the Acquisition of Linguistic Capital
- Japanese Students' Communication Strategies During Their ELF Experiences in the U.K.
- 生徒の自主的発話が促されるとき―集中の持続が難しい生徒のインタラクションから―
- Applying the Keyword Method to Learning English Idioms: Considerations for Native Japanese Speakers
- Differences in the Degree of Gender Stereotypical Beliefs and Motivation towards EFL Learning among Male and Female Students in the Japanese Context
クローズアップ講義
第二言語習得
外国語の学習・教育実践に応用できる言語学習理論について深く学べる科目です。心理言語学、応用言語学、神経科学などの知見に基づき第二言語習得を可能にしている「こころの仕組み」について探求します。
言語教育政策
言語政策を教育の視点からマクロに議論します。文部科学省、教育委員会、学校は公的な制度です。教科書検定、常用漢字、ヨーロッパ言語共通参照枠、識字教育、日本語教育推進法なども言語教育政策の話題です。。
小学校英語教育実践
2020年度から「外国語活動」の開始が小学校中学年に引き下げられ、高学年には教科としての「外国語」が導入されました。「聞くこと」「話すこと」を中心に外国語に慣れ親しむ「外国語活動」、「読むこと」「書くこと」も含め総合的に学ぶ「外国語」、それぞれの指導計画、教材研究、評価の在り方などについて学びます。
教育評価
授業ではいろいろなテストが実施されます。しかし、それらのテストは生徒の英語力や授業で教えたことを適切に測れているのでしょうか。この科目では、「測ること」の基礎と、評価への応用の方法について学びます。
日本語教育学領域
外国語・第二言語としての日本語教育の実践者を育成
多くの修了生が日本語教育の専門知識を活かして国内・海外で活躍
日本語教育を通じて地域社会・国際社会へ貢献できる人材輩出を目指します。それに関わる言語・文化・教育学の内容であればいずれもここで研究することができます。たとえば、音声学や語彙・文法の研究、日本語と他言語の対照、言語習得論、教授法と教材開発、コミュニケーション論、談話分析、社会言語学、心理言語学、言語教育政策、日本文学・文化論、メディアとカルチャーなどが挙げられます。また、多様化する日本語教育のニーズに合わせた実践授業に加え、現職日本語教師のリカレント教育も行います。各分野の専門家である指導教員が温かく指導に当たっており、満足のいく研究ができます。修了生は、日本語学校や中高の教員、海外の大学教員、会社員などとして国内外で活躍しています。
修士論文・課題研究論文テーマ(抜粋)
- 日本語教育における文学教材の可能性
- 相互文化理解を目指した授業づくりに関する一考察―自他表象のディスコースに注目してー
- 初対面における日韓ほめについての対照研究―会話分析によるアプローチー
- 言語間音韻類似性の単語認知に与える影響―中国語を母語とする上級日本語学習者の単漢字語に対する語彙性判断時間を指標として―
- 日本語目的語残存受身文における目的語の機能について―中国語の" 保留宾语被动句"との対照の視点から
- 2010 年以降の中国における日本映画の受容
クローズアップ講義
日本語教育研究(実践)
日本語学習者向け教材の分析、教案作成、模擬授業などを行いながら、日本語を教えるために必要な知識やスキルを身につけるための科目です。授業活動を通じて、問題解決の方法や効果的な指導法などを各自の実践をもとに考えます。
日本語語彙・文法教育
日本語非母語話者を対象とする日本語教育を円滑に行うためには、日本語の語彙や文法の知識が必要です。この授業は、日本語非母語話者への日本語教育に必要な語彙や文法の基礎知識を学ぶことを目的としています。
日本語会話分析法
対人コミュニケーションのプロセスを分析するためのツールとして社会学の分野で確立された「会話分析」(Conversation Analysis)の方法論について学びます。会話分析の理論的背景や基本的な考え方を押さえたあと、日常会話の構造を分析するためのさまざまな切り口を紹介し、各自が収集した具体的な会話データを分析できる素地を養成します。
日本語フィールド調査法
この授業では、多文化間コミュニケーションにおける「共通語としての日本語」をテーマとしたフィールド・ワーク調査を実施します。調査の全ての段階(企画・実施・データ分析)を共同で行い、社会言語学的観点からの言語/コミュニケーション研究の様々な調査/分析方法を紹介、検討、そして応用することが主な目的です。