野上 陽子(のがみ ようこ)  准教授

[ 編集者:大学院 言語コミュニケーション文化研究科       2021年4月1日   更新  ]

応用言語学博士

研究内容

 共通語としての英語(English as a Lingua Franca: ELF)を通じた異文化コミュニケーション場面に焦点をあて、特に第二言語(L2)として英語を使用する人のアイデンティティ構築や、彼/女らの言語使用とアイデンティティの関連性について質的な立場から研究しています。主な研究手法は日記観察、インタビュー調査などです。

 またL2話者の言語使用、特に語用論的言語運用とアイデンティティの関連性についても研究しています。語用論とは会話の文脈や状況によってどのようにことばが使われ解釈されるのか、どのような発話をすれば適切なのかといったことを考察する分野です。語用論的言語運用には、話し手の言語文化背景、価値観や倫理観、コミュニケーションの中で流動的に変化するアイデンティティが大きく関係しています。このことは、特に共通語としての英語(ELF)に顕著に現れます。

 このような研究背景をもとに、現在の英語教育のあり方についても考えています。上記のことを考慮すると例えば英米中心の規範にもとづく一元的な(ネイティブ至上主義的な)英語教育は必ずしも適切とは限りません。今日の英語コミュニケーションにおいては、ELFがどのように使われているかを知ること、異なる価値観や文化を理解しそれに適応する国際感覚を身に付けること、そして「英語話者」として肯定的なアイデンティティを構築することは非常に重要だと考えられます。このことからすれば、英語学習者はネイティブスピーカーに対抗できないノンネイティブスピーカーとして捉えられるべきではなく、多言語文化の混ざった知識を持ち合わせ、様々な言語文化的的資源を巧みに操りながらコミュニケーションをとるmulticompetent speakerとして涵養されていくべきなのです。

 最後に、近年は、1)海外留学におけるELF使用について、2)日本の大学における英語で教授する(English as a medium of instruction:EMI)科目のあり方について興味をもっています。まず1)に関しては、海外留学という新しい社会言語文化での学習環境において、ELF話者の様々なアイデンティティのあり方を理解し、言語能力、異文化コミュニケーション能力、社会文化資本の運用能力、自律の度合いといった事柄との関係性を明らかにすることを目指しています。次に2)に関して、アジアの文化背景をもつ学生が受講生の大半を占める日本の大学のEMIコミュニティーにおいて使われる英語(ELF)は、アジアの社会文化の影響を受けたものとなる可能性があります。そしてそうした英語を用いたコミュニケーションは、アジア圏の規範が反映された新たなものとなるのではないかという仮説から、調査を行う予定です。