「中木へ」

[  2016年2月29日   更新  ]

中木へ

「寡黙な彼ら」


『緑の木々に囲まれた校舎、校舎が子どもたちに語りかける学校』

創設時の「関西学院初等部トータル・デザイン」のコンセプトです。

コブシ、アカシア、タイサンボク。
ケヤキ、クスノキ、ハナモクレン。
カツラ、モミノキ、ヤブツバキ……。

植えられた木々は百数十種類にのぼります。そこに場を得て根を伸ばし、互いに譲り合い支え合い中木へと育ちつつあります。大きい小さいがあり、太い細いもあり、強い弱いもある木々は、風雨を受けその場を動くことなく立ち続けました。

「多く集めた者も、余ることはなく、わずかしか集めなかった者も、不足することはない」

奥行きのある森造り。寡黙(かもく)な彼らは、8年を経てずいぶん逞しくなりました。




======== しっかり抱いて ========

三月の声を聞くと、いつも思い出す出来事があります。

桜が満開を迎えようとする三月末、「粘土像展」に行きました。
能勢電鉄山下駅前の小さなギャラリー。三十点ばかりの作品が静かに置かれています。

造ったのは、神戸市立盲学校の子どもたち。会場に足を踏み入れるなり、その力の大きさに気圧(けお)されました。目に不自由さのない私達にありがちな似た作品はありません。

ひとつひとつ、こうしたい、こう造りたいという気持がまっすぐに現われたものばかりです。

その中で『しっかり抱いて』と名付けられた作品に心が引きつけられました。

作者は、小学五年生の西弘子さん。

太い腕で子どもを抱いている母の姿。大きい方が弘子さん。
弘子さん自身が自分の赤ちゃんを抱いた像です。

「落としたらあかん。しっかり、しっかり抱いておかないと」

腕の太さは、まだ見ぬ我が子に対する弘子さんの命の願いそのもののような気がしました。

「自分は、こんなにも太い手で子どもをしっかりと抱いてやっただろうか」

展覧会のたびに、こうした感想が数多く届けられると聞きました。

冬が一歩過ぎ去り、また小さな日々の営みと新しい春を迎えます。