「やわらかな土」
やわらかな土

「春は空から そうして土から かすかに動く」
そう言ったのは、明治時代の歌人であり小説家である長塚節(たかし)。
病を得てふる里に戻り、療養に努めるなかで村を舞台に農民を生き生きと描いた「土」という作品を残しています。
本校をそうした眼で見ると、雨を受け日一日柔らかくなる土壌の力を借りて、ネコヤナギが花穂をふくらませ、梅がわずかずつ花をつけてきました。
初等部には、小さな畑があります。滑り台付きの総合遊具の傍らに位置し、生活科や理科の実習園として活躍。しかし、冬の期間は出番少なしというところでしょうか。
その畑に、2月半ば鍬(くわ)が入りました。土が耕され、盛り上がった山はやわらかな布団のようです。人の姿がなくなると、どこからともなく小鳥たちが来校。小さな虫たちを見つけ、ついばみます。
人も植物も動物たちも、この小さな土地でそれぞれの営みを繰り返し春を迎えます。
========『 そうなんだ 』========
いよいよ、6年生が初等部を巣立ちます。
3月16日(月)の当日まで、登校は12日間。
週明けの卒業式は、初等部にとり初めてのことです。土曜日に諸準備を行います。
誰よりもお世話になった1年生、多くを学びました。その分、さみしくなることでしょう。
もう通学路でケガをしても、おぶってくれる6年生はいません。
ケンカをしても、止めてくれる6年生もいません。
立派で大きく力を備えていたお兄さんはいなくなります。
広い心を持ち、やさしい気持ちで接してくれたお姉さんはいなくなります。
「そうなんだ。いなくなってしまうんだ」。
そうした気持ちのつぶやきが、これから何度も心の中に顔をのぞかせることでしょう。
1年生のあなたたちに注がれた小さな「あんなこと」「こんなこと」。
何かを受けたことが分かる日は、そう遠くはないように思います。
過ぎ去るなかに “ Mastery for Service ”があります。