「冬花」
「冬花」

裸木の美しい季節を迎えました。
冬ざれの中、毎朝子どもたちの登校をひっそりと見守る花があります。
十二月の初冬から開き始めた山茶花(サザンカ)の花。
寒さにこごえる子どもたちを、紅白の明るさで労(いたわ)るかのような姿です。時に切り花として活けられ、色の少ないこの時期に、わたしたちの眼を愉しませてくれる長き盛りは、日々の励ましです。
冬花は、子どもたちと同様にどこか健気(けなげ)です。
二月、如月(きさらぎ)。今月は28日間の暦の中で、20日ばかりの登校となります。
あさって三日は『節分』、四日は『立春』と季節が移ろいます。
===========『 夜の豆まき 』===========
『節分』といえば、夜の豆まき。
昔、宮中で大みそかの夜に行った、鬼を追い払う儀式〈おにやらい〉が原型とか。
「福は内、鬼は外」
と、はやし立てられ、戸外へ追いやられた鬼は、いったいどこに行くのでしょう。
幼な子ほど心を痛めるようです。
絵本で知った強がり者のあの鬼が、誰よりも弱々しく肩をすぼめシクシクと泣いている。
豆に打たれ、闇の中独りぼっちでトボトボと歩く鬼の後ろ姿が、いつかの自分の姿に重なるのかもしれません。
そんな鬼を家に招き入れ、もてなす地方が東北地方をはじめとして日本各地にあるといいます。
群馬県藤岡市鬼石地区。鬼が投げた石でできた町という伝説があり、鬼は町の守り神とされています。全国各地津々浦々から追い出された鬼を、村人皆で喜んで迎え入れる「鬼恋節分祭」という行事があるそうです。
また、赤飯を炊き、お酒をふるまい、さまよう鬼に施(ほどこ)しを与え、深夜、道に迷わぬよう村はずれの四ツ辻まで送りとどける、至れり尽くせりの村も。
「福は内、鬼も内」「福は内、鬼も内」……
「鬼もいつか福になる」「鬼もいつか福になる」。
まるで、雪深い地方の集落から、幾重にも重なり合ったやさしい声が響いてくるかのようです。