「季節と共に」
「季節と共に」

暦(こよみ)が残り一枚になりました。
樹々は最後のいのちの輝きを放ち、今年の物語を結ぼうとしています。十一月にはさして意識しなかった月日の流れが、十二月の声と共にあわただしさを連れてきたようです。
晩秋を飾った『第五回文化祭』はいかがでしたでしょうか。子どもたちが奏(かな)でる、さまざまな「音」を「楽」しんでいただけたことと思います。その日、ご家庭で話が弾(はず)んだようすが初等部にも伝ってきました。子どもたちにとって何よりのご褒美です。
学校行事は季節と共にあり、季節と共に歩んできました。こうして、大きな行事を終えるとほっとすると同時に、「終わってしまった」寂しさが残ります。
今学期の終業礼拝は12月22日(土)。学期のまとめに入ります。
===========『 ほんとうは 』===========
10月の最終週のことです。
日暮れが早まる午後4時20分頃、子どもたちは家路を急ぎます。
多くが電車通学で、その中に阪急電車「逆瀬川駅」で下車しようとした6年生がいました。
扉が開きます。少し急いでいましたので小走りで改札口に向かいます。
すると目の前に、別扉から出られた年配の女性が倒れられています。
「だいじょうぶですか」
と声をかけました。返答はありません。
私に何ができるのだろうか。 彼女は考えます。
じゃまにならないようにと思いをめぐらせていると、周りの大人達が気付きました。
駅員さんも来て、目撃者から聞いた話として
〈駆け込み乗車をした人がいて、その人がぶつかった〉
と知りました。
「何かお手伝いすることはありませんか」
男の人が中心になり、女性を待合室の方へゆっくりと移動させました。
「ありがとう。あとは私達大人でするから、大丈夫よ」
翌朝、関係機関から学校に連絡が入りました。
年配の女性とぶつかったのは、6年生ではないかと。
幾度ものやりとりを経て誤解は解けました。校内外にも、その事実を広く伝えました。
誤解は解けましたが、善行を成す難しさと同時に、彼女の名誉について深く考えてしまいます。