2026年度手話言語研究国際共同セミナー~手話の多様性と共通性を探る~を開催しました
2026年6月13日(金)に、韓国の朝鮮大学言語融合研究所の研究員の方々をお招きし、「2026年度手話言語研究国際共同セミナー~手話の多様性と共通性を探る~」を開催しました。朝鮮大学の講演(午前の部)と関西学院大学の研究発表(午後の部)の2部構成にて実施しました。
午前の部では、「複合発話と視点:KSL(韓国手話)と韓国語におけるモダリティ特有の違い」をテーマに、朝鮮大学言語融合研究所所長のチェ・ヨンジュ氏に講演いただきました。韓国手話(KSL)と韓国語音声データを比較し、手話では身体の各部位を分割して複数の視点を同時に表現できる一方、音声言語では視点が時間的に切り替わるというモダリティの違いが明らかにされました。「ライオンとネズミ」の物語分析を通して、手話における複合的な視点表現の豊かさが具体的に示されました。
続いて、博士研究員のアハメド・マイ氏に「手話における感情の概念分析」をテーマに講演いただきました。韓国手話、アメリカ手話、フランス手話を比較し、感情が身体部位や動きによってどのように表現されるかを分析するとともに、文化差を伴いつつも共通する概念的枠組みの存在について考察がなされました。感情を「上/下」や「容器」として捉える比喩的表現は、複数の手話に共通して観察される点として紹介されました。
午後の部では、本センターから下谷奈津子主任研究員および前川和美主任研究員が、「小学校教科書に向けた手話学習教材制作の試み」と題し、現在取り組んでいる研究プロジェクトについて報告しました。ろう学校における国語授業の参与観察およびアンケート調査から得られた結果を元に、ろう児が学びやすい教材や、教員のための指導書について、具体的な教材設計や開発の方向性が示されました。
さらに、朝鮮大学からは、韓国におけるろう児向け教科書作成に関する取り組みが報告され、両大学における教育実践の比較を通じて、今後の教材開発に向けた多くの示唆が共有されました。日韓それぞれの教育制度や言語環境の違いを踏まえつつも、ろう教育の充実に向けた共通の課題と可能性について活発な意見交換が行われました。
各発表後には質疑応答の時間が設けられ、研究方法やデータの扱い、言語間の共通性と差異、さらには教育応用に関する課題について多角的な議論が交わされました。参加者からは「手話で語りを行う際に、表情、手、胴体を使って一人でナレーター、登場人物と何役も表現していることを学んだ。また、感情と身体部位がメタファ的にどう関わっているかについても興味深い内容だった。」 「プロジェクトの取り組み、日本と韓国の違いなどを知る・学ぶことがあまりないのでとても良い機会になりました。これからのろう児教育が良き方へ進むよう願っています。」などの感想が寄せられ、充実した交流の場となりました。
本セミナーを通じて、手話言語の多様性と共通性に関する理解が一層深まるとともに、国際的な研究連携の重要性が改めて確認されました。ご登壇いただいた先生方、ご参加くださった皆様、ならびに手話通訳・日英通訳・文字通訳により情報保障を担ってくださった皆様に、心より御礼申し上げます。