野瀬 正治教授(1)

[ 編集者:社会学部・社会学研究科      2015年5月7日   更新 ]

探究心と社会学

社会学との出会いはどのようなものでしたか?

高校時代の思い出のひとつに、文化人類学の学術書を買ってきて地理の時間に読んだことを思い出しました。高校時代は自由奔放に興味のあるものには何でも取り組みましたが、その頃持っていた疑問、人間は一体なんなんだろう、という疑問が高1の時そうさせたのだと思います。でもそれは、特に社会学という体系的な意識からではなく純粋な疑問からでしたね。高校の頃は、夢や新たな疑問が大きくなる時代ですからそうしたこともあったんだなと思います。
それからそのころ持ったもうひとつの疑問は、個人と集団の関係についてで、これは今に繋がってる問題意識です。
その頃どちらかというとスポーツ派だったので、自分自身がスポーツに関わる中で、個人スポーツと団体スポーツでは、個人のあり方が違うのかな、という疑問でした。というのも、個人戦が好きだったので集団スポーツの個人はどんな気持ちなんだろうと不思議に思ってたからでした。視点は違うのですがこの延長線上に今の研究テーマ「個別的労使関係論」があります。

どのような学生時代でしたか?

(右から8番目が野瀬教授)

私の過ごした学生時代は高度成長が終わっていわゆる低成長に転換した時代で公害問題や製造物責任問題などそれまでの社会のひずみが恒常化してきた時代でした。当時ローマクラブは、成長の限界を提唱しエネルギー問題も表面化した時代でした。けっして暗い時代では無かったけど危機感はありましたね。自然と、なぜそうした問題が生じるのだろうか、と関心を持ち始めました。それから、当時は工業化社会の産業構造で、今の様にサービス産業は発達しておらず、春闘をとおして重厚長大産業の労働組合の影響が大きい時代でした。なので自然と私の大学でのテーマは「使用者責任」と「労使関係」になっていきました。私の取り組んだ「使用者責任」というのは今日で言うところの企業の社会化やCSRで、別の言葉でいえば「信頼」や「規範」といった視点からの取り組みでした。
「労使関係」は、当時は労使関係といえば集団的労使関係で、労組と経営間の問題が中心でしたが、私は今でいう個別的労使関係に興味を持ったのでそれに取り組みました。今言ったように労使関係といえば集団的労使関係の時代ですから個別的労使関係は極めて異端であったと思います。授業では集団的労使関係のルールをオーソドックスに学ぶのですが、集団は個人を強くすることによって強くなる、との直感があったのとそうした視点に興味があったのでそれに関わることには学問領域に関係なく首を突っ込みました。若いときですからいろんな切っ掛けを通して多くの先生にコメントをもらったことを思い出します。
それと取り組みとしては面白いと思うのですが、大学のボート部での生活でした。エイトは上から見るとシンメトリーで綺麗なので引かれたこともあるのですが、集団スポーツと個人の関係はどうなっているのか自分で実際に理解したいという気持ちもあって取り組みました。大学での勉強は、そういう意味では必ずしも講義だけではなく、もっと多様な取り組みから得られるのかも分からないと思います。 

社会学部ではどのような授業をされているのですか?

私のゼミのテーマは、「経営と労働の社会学」で、現代社会で生じている様々な事象を、経営現象、労働現象として把握し、それらの現象を、経営・産業領域の社会学理論や法規範を踏まえて取り組んでいます。それを支える講義科目として、経営社会学、企業と人材の社会学や仕事と法など経営と労働に関わる講義をしています。
複雑に機能分化した現代社会で、企業や仕事とのかかわりの中で身近な出来事として経験しながら私たちは生活をしていますが、出くわす出来事は偶然ではなくそこには必然性があります。もちろんいつ出くわすかなどは分かりませんが、いつか必ず出くわすという意味では時間の問題です。
例えば学生ほとんどの人が大学で体験する「就活」は、社会現象であると同時に経営現象・労働現象ですが、こうした馴染み深い事柄にも、実は多くのメカニズムや原理・原則が働いて、毎年、新たな特徴を持った社会現象となって現れています。就活に限らず今社会でクローズアップされているホワイトカラーエグゼンプション問題や男女共同参画社会問題などもやはり多くのメカニズムや原理・原則が働いて社会現象・経営現象として表れています。私はこれらの諸現象を解明するための講義と演習を行っています。

野瀬教授のインタビューは(2)まで続きます!
(2)では研究テーマである「経営社会学」についてについて詳しく伺います。

野瀬 正治教授(2)関連ページへのリンク