災害に強い都市計画

[ 編集者:総合政策学部・総合政策研究科       2015年3月25日   更新  ]

1.学びの概要

マルチハザードの時代

中国四川省2009春 大地震被災者へのヒアリング

中国四川省2009春
大地震被災者へのヒアリング

現代はマルチハザードの時代 (多様なリスクに見舞われる時代)と言われています。大規模な地震や風水害、犯罪、感染症や危険物事故などによって、人々の生命や財産、さらに文化までもが脅かされています。
UNDP(国連開発計画)の2004年の報告によると、世界人口の約75%の人々が、1980年から2000年の間に少なくとも1度は地震、台風、洪水または干ばつに見舞われた地域に居住しています。
災害は、けっしてイレギュラーなものではなく、日常的に発生するものなのです。

急速な都市化と災害リスク

世界的に進行する都市化現象。人々はより豊かな生活を求めて都市部に移動をします。しかし、特に発展途上国では、都市への人口集中があまりに急激であることと、政府に資金が乏しいことから、道路や飲料水など人々の生活や活動の基本となる施設を整備することが困難です。
こうした社会インフラが整備されないままに、都市へやってきた人々が空いていそうな土地に有り合わせの材料で家をつくるため、生活の安全性に大きな問題があります。また途上国でも車社会となりつつあるので、至るところで大渋滞が発生し、大気汚染が深刻化したり、経済活動にマイナス影響を与えたりしています。

このような急速かつ無秩序な都市建設は、ひとたび感染症や自然災害が発生した場合に被害を増大させる要因、災害リスクとなっています。自然災害は不可避なものですが、私たち人間にできるのは、災害に強い都市(まち)をつくることだと考えます。

世界の都市問題

モンゴルの首都ウランバートルでは、都市化により人口が急激に増加しました。モンゴルの厳しい冬を過ごすには、ストーブによる暖房が欠かせませんが、人々の暖房を原因とした大気汚染が、そこに住む人々の健康を脅かしています。

インドネシア・スラバヤ 2002年撮影 再開発による低所得者向け集合住宅

インドネシア・スラバヤ 2002年撮影
再開発による低所得者向け集合住宅

インドネシアでは、住環境に深刻な問題のある地区を中層住宅地区として建て替える事業が行われていますが、政府に資金が乏しいことや、住民が生活の変化に不安を感じていることなどから、必ずしも順調に進んでいるとはいえません。

日本でも、阪神淡路大震災などの大地震はもとより、市街地の火災さらには浸水などで、都市部が大きな被害を毎年のように受けています。こうした中で、阪神淡路大震災などの教訓を活かして、災害に強いまちづくり、人づくりに関する研究や実践が各方面で進められています。

都市マネジメントが命を守る

このように、インフラ整備・都市計画、都市機能のマネジメントや防災に備える社会的な仕組みづくりなど、都市政策に期待される役割は大きいのです。都市政策学科では、さまざまな角度から災害に強いまちづくり・人づくりに挑んでいます。

2.学生の研究テーマ例

*神戸三田国際公園都市における緑地公園政策―開発型都市の復活を考える―
*大阪市内河川における舟運の可能性
*開発途上国の都市と郊外の格差―水・衛生設備の観点から―
*「子どもの遊び場としての道」―子どもが遊べる道―