国際学部 連続講演会(2016年度)

[ 編集者:国際学部・国際学研究科       2017年6月13日   更新  ]

関西学院大学国際学部は「国際事情に関する課題の理解と分析」を教育・研究上の目的とし、その目的の達成を通じて、「国際性」と「人間性」を備えた世界市民として、国際的なビジネス・市民社会で活躍できる人材を養成することを謳って2010年4月に開設されました。国際的視野を育成するための一助として各界の第一線で活躍されている方々を講師にお招きし、連続講演会を開催しています。

連続講演会の概要は以下のとおりです。国際学部の学生に限らず、一般の方々の参加も可能です。参加無料、事前予約は不要です。

第73回 住友林業株式会社 代表取締役社長
市川 晃 氏が講演

2016年12月9日

市川 晃 氏

市川 晃 氏

2016年12月9日(金)に開催された第73回国際学部連続講演会では、本学の卒業生である住友林業株式会社代表取締役社長 市川晃氏にお越しいただき、「日本の森林資源はいま。~資源活用の新たな認識と木造建築の今後~」と題してご講演いただきました。この講演会は関西学院大学産業研究所の協力を得て実施し、会場の図書館ホールには約130名の学生・一般の方々が集まりました。(司会:国際学部 渥美裕之教授)

まず、会社概要として、銅精錬用木材の確保を発端とする社史、「営業は信用を重んじ、確実を旨とし」「浮利に趨り、軽進すべからず」、「自他利他公私一如」といった理念、国内・海外の事業展開エリアや業績などを紹介されました。

次に、日本の森林の現状について、国土の3分の2が森林という資源の豊かさに反して国産木材の利用率は低く、需要拡大を目指して国レベルでの取り組みがあることや、森林には自然林と人工林があり、里山のような人工林では人が手を入れ続ければ未来に資源を残すことができ、必ずしも「木を切る=自然破壊」ではないことなどを説明されました。また、材としての木の特長には、環境にやさしいこと、特性を理解し正しく使用すれば地震・熱に強いこと、α波・β波を誘発するなど人の日常生活にもプラスの効果があることを挙げられ、これらの説明の中で、思い込みの枠を外して正しい知識を得ることの大切さを説かれました。そして、住友林業による木材利用促進活動の具体例として、mocca(木化。非住宅建築物の構造の木造化、内外装の木質化)、古民家の再生、森林資源活用方法のコンサルタント事業などを紹介されました。

最後にお話しになったのは、ご自身の信条についてです。オランダ駐在時代、知人はおらず駐在員は自分一人という状況にも関わらず、仕事や生活を円滑に進められたのは、自分の努力だけによるものではなく、先達に負うところが大きいと実感され、このご経験を機に後進のために何ができるか常に自問されるようになったことや、モットーとしてJ・F・ケネディの「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.」や本学の「Mastery for service」を挙げられました。

ご講演後には多くの手が挙がり、寄せられた質問には、自然林に人の手が及んでしまった場合の修復方法とは、古民家再生時はどのような事に配慮しているのか、地域活性化にどのように関わっているのか等がありました。周囲に流されず自分を持って生きるにはどうすればよいかという質問に対して、人と自分は違うことを認識し「自分の人生は自分で作る」という意識を持って、人との意見交換を繰り返すことが大切であり、議論は勝ち負けの場ではなく、より良いものを生み出すための場であるとアドバイスされ、学生達は真剣な表情で聞き入っていました。

第72回 西宮市長 今村岳司 氏が講演

2016年11月30日

2016年11月30日(水)に開催された第72回国際学部連続講演会では、西宮市長 今村岳司氏に「自治体経営~西宮市の場合~」と題してご講演いただき、200名を超える学生が参加しました。(司会:国際学部 木本圭一教授)

今村氏は、市長の仕事を、サッカーで例えれば監督、企業で例えれば経営者である、と説明を始められました。市長は物を作ったり、政策の判断をしたりするわけではないので、それらが出来る職員を適切に配置する人事が重要な仕事であること、また市長は、社長の経営方針に賛同する社員を採用するベンチャー企業の社長とは違い、歴史のある市制の中で4年という任期のある「中継ぎ投手」であることを理解し、4年後にその自治体をあるべき場所に導くことが仕事であることを詳しく説明されました。

そして、自治体ごとに状況が違う中で、西宮市の市長として、西宮がどのような歴史を持つまちで、今後どのようなまちにしていきたいのかを考えて伝えることがもうひとつの重要な仕事であることを、歴史や現状を具体的に示しながら説明されました。特に、1963年に西宮市が出した「文教住宅都市宣言」は、当時工業開発に日本中が盛り上がっていた中で、西宮市は工業都市ではなく住宅地を目指すことを明確にした重要なできごとでした。1995年の阪神淡路大震災被災により、その後10年余りにわたり復興優先の施策を避けられませんでしたが、復興施策が落ち着き、文化・スポーツ・教育等の分野の政策見直しを進めているとのことでした。

参加者は、市長の仕事、市制、また自分たちが学ぶキャンパスのある西宮市について、熱心に今村氏のお話をきき、理解を深めた様子でした。

第71回 ドイツノルトライン・ヴェストファーレン
(NRW)州 経済省次官
ギュンター・ホーゼツキー 氏が講演

2016年10月28日

ギュンター・ホーゼツキー 氏

ギュンター・ホーゼツキー 氏

2016年10月28日(金)に開催された第71回国際学部連続講演会では、ドイツノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州 経済省次官 ギュンター・ホーゼツキー氏を講師に迎え、「英国のEU離脱決定がドイツおよびEUに及ぼす影響」と題してご講演いただきました。この講演会は関西学院大学産業研究所とEUインスティテュート関西(EUIJ関西)の協力を得て実施し、会場の図書館ホールには約70名の学生・一般の方々が集まりました。(司会:国際学部 ホルガー・ブングシェ教授)

ホーゼツキー氏はまず、ご自身の目から見たEU史からお話を始められました。EEC(欧州経済共同体)加盟国が一丸となって進めた政策の例としてCAP(共通農業政策)を取り上げ、その成果として農産物の価格保護や農家の労働条件の大幅な改善があったことを紹介されました。また、第二次世界大戦後のヨーロッパ各国が、戦争の記憶も真新しい中、様々な問題の解決に向けて共に具体策を模索したことが、現在の平和に繋がっていることを指摘されました。その後1973年のイギリス等のEC加盟を皮切りに、EU加盟国数は28にまで拡大し、現在は各国それぞれに問題を抱えてはいるが、EU加盟によって単一市場へのアクセスと労働者等の移動の自由といった大きな利益を得てきた点を強調されました。

そのようなメリットがあるにもかかわらず今回イギリスがEU離脱を決定した背景には、主権が失われることへの危惧や、移民の増加への反発といった国民感情があると解説されました。その後、本題であるイギリス離脱によるEUへの影響として、投資、貿易、労働市場の縮小、在留資格の変更、再配分システムへの影響などを挙げられました。また、ドイツとNRW州への影響についても述べられました。一方、英国離脱の影響を受けてはならないものとしては、研究開発や文化交流面での協力を挙げられました。パートナーシップを守り、強化していくことにより、英国離脱の悪影響を最低限に抑えられるだろうと締め括られました。

ご講演後の質疑応答では数多くの手が挙がり、このテーマへの関心の高さがうかがわれました。学生だけでなく教授からの質問やコメントもあり、質問は難民問題、EU加盟国間の連帯、中国・ロシア・アフリカへの影響、ドイツ銀行の行方など多岐に渡り、ホーゼツキー氏はそれぞれの質問に丁寧にお答えになりました。

最後に、株式会社エヌ・アール・ダブリュージャパン(ドイツNRW州経済振興公社)代表取締役社長ゲオルグ・K・ロエル氏から学生に向けて、英国離脱問題や欧州について学ぶだけでなく、ぜひヨーロッパ大陸へ足を運び、その実際を感じて欲しいというメッセージが送られました。

第70回 公益財団法人 日本デザイン振興会 理事長
大井 篤 氏が講演

2016年7月7日

大井 篤 氏

大井 篤 氏

2016年7月7日(木)に開催された第70回国際学部連続講演会では、公益財団法人 日本デザイン振興会 理事長の大井篤氏に「リーダーシップ・デザイン・経営」と題してご講演いただき、会場の関西学院会館には約230名もの学生・一般の方々が集まりました。なお、この講演会は関西学院大学産業研究所の協力を得て実施しました。(司会:国際学部 渥美裕之教授)

演題を横断する軸を感じ取ってもらえれば、との前置きで始まったご講演を一貫する言葉は「感性」。前半は「リーダーシップと感性(感じる力)」という切り口で、感じる力がどのような場面でどう活きるのか、著名人の言葉を引きつつ、様々な角度からお考えを述べられました。社会へ出た時に重要なことは危機管理であり、危機に直面した時に打開策をひらめくかどうかは、日頃からの感性を磨く努力に左右されることや、物事を判断する際には「鳥・虫・魚・蝙蝠・心の眼」といった複数の視点から感じてみること、さらに、伸びる部下を判断する要素として、素直、好奇心、忍耐力、準備、几帳面、気配り、夢と目標設定の7項目を挙げられました。また、明治維新以降の教育は知識習得を優先し、従来学ばれてきた経学(四書五経などの哲学)・史学・詩文といった自ら考える力や直感・感性を養う学問を排除した結果、リーダー育成に失敗しているのではないかという説や、人間としての総合力を鍛えるには古典から学ぶものが多いとして、中国の儒教や兵法、江戸の思想家の石田梅岩、佐藤信淵を紹介されました。

後半は「Design Thinking と経営」という視点から、理想とする経営者像を提案されました。そのお考えに至る背景として、まず近代デザインと工業や産業との関わりについて触れられ、イノベーションを生み出す思想として「デザインの本質はユーザーの動機や行動(幸せ)をベースに物事を組み立てること」というTim BrownのDesign Thinkingという考え方を紹介されました。次に、経営者を類型化し、求められているのは目的意識型(真面目な異端。集中力が高くエネルギッシュだが冷静沈着。真に大切な目的遂行に時間を割く)の経営者であると述べられました。そこから発展して、このタイプの経営者がDesign Thinking Mindを持って行動することで、Empathy Management、Integrative Analysis、Tolerance、Navigator、Policy Makerをキーワードとした、これからの経営者であるイノベーティブな“Thought Leader”が生まれるのではないかと問題提起されました。最後に、人を動かすのは知識ではなく感性であり、付いて行きたいと思われるリーダーになるためは、やはり感性を磨く必要があると締め括られました。

ご講演後には多くの学生が挙手し、時間ぎりぎりまで活発な質疑応答がありました。「学生の内に身に付けるべきことは?」との質問に対し、語学力、ただし単に言葉ができるという意味ではなく、自分が心から伝えたいことを相手に届けるために、論理構成力とコミュニケーション能力を合わせて身に付けて欲しいとお答えになりました。その他の質問に対して返された「忍耐力は、目標を強く持って到達しようとする努力によって鍛えられる」「仕事は部下に任せ、責任は自分でとるのがいい上司」「世間ではなく自分を生きよう」「解のない問いを解く力は知力・人柄・コミュニティ力の総合力」といった心の琴線に触れる言葉を、聴衆席の学生達はしっかりと受け止めていました。