[ 文学部 ]美学芸術学専修AESTHETICS AND ART STUDIES

メッセージ

ものの本質に迫り究める

人間は何に、なぜ感動するのでしょうか。感動した時、人々は「美しい!」と口に出します。ただし、芸術は美しい姿を多くの場合描き出しますが、芸術だけが美しいものでもありません。桜の木を前に、人は芸術作品ではない淡い色合いの花を美しいと感じることは事実です。その美しさは、理論的理解ではなく、それこそ理屈抜きに直感的に人の心に入ってきます。

美学はそのような「美しい」「気高い」「ユーモラス」など感覚的に人の心に素早く反応する気分(感性的認識)の働きを研究する学問であるといえます。

ある人が世界のあまりの美しさに心を動かされ、カンバス、楽譜、フィルムなど各自の芸術の形に移し換えて作品をつくり、他人がそれを楽しむのが芸術であるとすれば、世の中には芸術家と鑑賞者しか存在しなくなります。ここで、なぜこの作品は美しいのかを分析、研究する人々が登場します。芸術に関するさまざまな問いを投げかけ、それに対して自らの考えを示すのが芸術学であるのかも知れません。若い皆さん。あなた方の、ものの本質に迫ろうとするエネルギーが今日の美学、芸術学研究を支えるのです。期待しています。

教員紹介

日本美術史、染織、服飾Research keywords

河上 繁樹 教授

布を織ったり、染めたりすることは、古くから世界の各地で行われてきました。染織品は衣服に用いられるように、人間にとってもっとも身近な存在です。それだけにでき上がった布は民族により、地域により、あるいは時代によって表情が違ってきます。そのなかで日本の染織はいかなる歴史的な展開を遂げてきたのか、その特色について考察しています。

染織品にあらわされた文様とそれを表現する技法を分析することで、日本人が求めてきた「美」を追求しています。

演劇、映像、アニメーション、現代の諸芸術Research keywords

桑原 圭裕 教授

アニメーションの本質とは「動き」であるという観点から、日本のアニメ表現の特異性を研究テーマとしています。現在は、1960年代以降のアニメーション・スタジオの乱立にともない、「動かさない表現」が様々な発展を遂げて、日本特有の作画技術として確立されていくまでの推移を追跡しています。

また、実写映画、マンガ、舞台芸術など、幅広いジャンルと関連させた考察も行ってきました。中でも近年注目を集めている群像劇映画において、1990年代から数多く制作されているアンサンブル・フィルムという新たな群像劇映画の形式に着目。これまでのモンタージュ理論とは異なる視点からの説明を試みています。

音楽史、メンデルスゾーン、オーケストラResearch keywords

小石 かつら 教授

私は、自身が演奏にたずさわってきたこともあり、音楽が「演奏者によって音にされる現場」に興味をいだき、近代的な演奏会の成立とその変遷について研究しています。

具体的には、世界最古の民間オーケストラであるドイツのライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、1781年以来現在まで、実際にどのようなプログラムで演奏会を開催してきたのかを調査・研究。同時に、この楽団を、世界のスタンダードとなる存在へと大きく舵をきった音楽家、F.メンデルスゾーンについても研究しています。 これらの研究は、現代日本の文化政策にもまっすぐにつながるものがあります。

西洋美術史、美学、表象文化論Research keywords

古川真宏 准教授

西洋の美術、なかでも19世紀から20世紀にかけての近代美術を、隣接する学問や思想、あるいは同時代の社会との関わりから問い直す研究をしています。いつの時代でも、美術作品の制作と受容には、政治や科学、経済、思想など、様々な要素が大きく関与しています。私は、そのような文化的ダイナミズムの中で芸術を捉えることに興味があります。

とりわけ、あらゆる分野で知の地殻変動が起こった特異なトポスとして知られている世紀末ウィーンの文化・芸術が私の研究対象です。世紀末ウィーンがいわゆる世紀末美術の中心地であると同時に精神分析の揺籃の地でもあることに着目し、美術と精神医学の関係に様々な角度からアプローチしています。また、そこから範疇を広げて、18世紀末のロマン主義から20世紀の近代美術に至るまでの「芸術と無意識」の系譜を描き出す研究にも着手したところです。

日本絵画、近世やまと絵、住吉派Research keywords

下原 美保 教授

私の研究分野は江戸絵画です。特に伝統的な絵画であるやまと絵に興味をもち、幕府の庇護を受けて活躍した住吉派に注目しています。この流派は、長い間、忘れ去られていましたが、正統派でありながらも、大胆でドラマティックな、時にマンガのような人物描写が、近年、評価されつつあります。

現在の研究テーマは二つ。一つ目は「作品や作家の評価はどのように決められるのか」。その理由が解明されれば、住吉派のように忘れ去られた作家たちに、再び光を当てることができるからです。二つ目は「19世紀に形成された海外の日本美術コレクションがどのような目的で収集され、どのように評価されてきたのか」です。

授業紹介

造形文化論
西洋・東洋といった地域、時代などの相違に注目し、あらゆる造形芸術(建築、彫刻、絵画、造形)の意味を検証します。「はたして、芸術活動には進歩があるのか」などの問いに気づかされることでしょう。
美学芸術学資料研究Ⅰ
ルネサンスからロココまでの西洋絵画を題材として、イメージを読む能力を養います。学生はミュージアムの学芸員になりきり、課題作品に対する自身の研究成果を発表します。
人文演習Ⅱ
「私が企画する展覧会・上映会」をテーマにして、各自の企画した内容に即したチラシを制作し、パワーポイントをもちいて企画案を聴講者にわかりやすく伝えます。また、聴講者として発表者の説明をいかに評価するかをトレーニングします。