国際社会貢献活動  瀧川 奏子 さん

[ 編集者:経済学部・経済学研究科      2013年11月1日   更新 ]
瀧川さん(写真中央)

 瀧川 奏子
(たきがわ かなこ)
 (経済学部3年生)
 
 【プログラム】
  国際社会貢献活動(2013年度春学期派遣)
 【派遣地】 
  ラオス人民民主共和国
 【派遣機関】
  NGOクワトロ 
 【派遣期間】
  2013年4月18日~2013年8月25日

派遣中の喜怒哀楽や困ったことは?

瀧川さん

私はラオスの一村一品運動(One District One Product)プロジェクトに取り組むNPOに約5か月間派遣されました。

一村一品運動とは技術支援・マーケティング支援により、地域の特産品を開発し、地域の伝統文化を尊重し、村人の生活水準を向上させることを目的としています。対象は南部ラオス5県の地域の人々です。ラオス人の同僚3人と日本人の上司2人の職場でまさに体当たりの毎日でした。

瀧川さん

ラオスを一言で表現すると、とてものどかな国です。しかし、仕事をする上で困ったことは、ラオス人は「緩すぎる」ということ。ラオス人は「ボーペンニャン(問題ないさ)」の一言で全てを片付けてしまいます。驚くことに、自分が遅刻しても、自分がミスをしても「ボーペンニャン」と言うのです。
ちなみに、「ぱにゃにゃーん」とは「頑張る」という意味です。可愛すぎますよね(笑)。そして「頑張って」は「ぱにゃにゃんだー」です。励ましの言葉なのに、なんて緩いのでしょうか。でも、そこが「緩く頑張る」ラオスの良さなのかもしれません。

また、ラオスでは道を歩いているだけで色々な動物に出会えます。道端で草を食べる牛、昼寝をする豚、雛を連れて歩く鶏。そんな動物のせいで道路が渋滞するのは日常茶飯事です。高温多湿の気候、英語すら通じない言葉の壁、膨大な仕事に追われながらとにかく必死でした。そんな私を癒してくれたのがこんな風景でした。ゆったりとした時間が流れる美しい国でした。

象と牛
瀧川さん

中でも、少数民族の家でのホームステイが心に残っています。ラオス語ではなく、少数民族語を話し、独自の文化を持つ彼らと寝食を共にし、言葉が通じない中で相手の気持ちを推し量り、私がこの村に来たことを喜んでもらおうと大健闘しました。

ドアのないトイレ、屋外の水浴び中の鶏の乱入…様々なハプニングもありました。衝撃的だったのが、茶色い川で自分の顔・体を洗い、歯を磨いていたこと。これはさすがに断りました。

このような現実を目の当たりにし、国連でも最貧国と分類されるラオスを実感した体験でもありました。幸せに暮らしているように見えても、最貧国の闇を考えずにはいられませんでした。

派遣先の同僚や友人とどのようなコミュニケーションをとっていますか?

お互いに英語は第二言語のため、ためらうことなく積極的に英語でコミュニケーションをとることができたと思います。お互い正確な英語を使えなくても、聞こうという意思があれば伝わると思いました。

また、オフィスではラオス人は全員英語が話せますが、私生活で会うラオス人はほとんどラオス語しか話すことができませんでした。つまり、オフィスを出ればラオス語しか通用しない世界、ということで同僚からラオス語を教えてもらいました。おかげで、生活には困らない基本会話はできるようになりました。ラオス語はタイ語とよく似ているので帰国後はタイ語を勉強したいと思っています。また、ラオス人は日本に好意的であり、私が日本語を教えることもありました。同僚は、よき仕事のパートナーであり、なんでも話せる友達でした。私が膨大な仕事で焦っている時、仕事はきつくない?行き詰っていない?など常に気をかけてくれる有難い存在でした。

仕事終わりや週末に、自分の家に呼んでくれたり、旅行に連れて行ってくれたり本当に親切にしてもらいました。その優しさに涙が出そうでした。

瀧川さん

1週間の生活を簡単に教えてください。

基本的に平日は朝の9時から17時まで、土曜日は午前中仕事をしていました。
まずメールチェック、その後は一日にやることを整理し、一つずつこなしていきました。日によって仕事の内容は様々でした。というのも、私の主な業務内容は、広報活動全般、生産地の調査、ジャムを使った産品開発、旅行会社や学校向けのツアー計画、産品のタグやカタログ作り、ODOPショップのマネージメントなど多岐に渡っていたからです。

仕事量が多いため、一つ一つの仕事に対し、目標を設定しそれに向けてどうアプローチするか、成果はどうか。次のステップは何か。と常に意識していました。最初はがむしゃらに突き進んで、思うように行かず失敗の連続でした。このようにマネージメントしていくことで五か月間を乗り切りました。

また、幸運なことにオフィスワークだけではなく、各地域の出張にも多く同行させていただき直接現地の村人たちと交流する機会に恵まれました。週に三度か四度は村を訪問し、上司の仕事補佐または自分のプロジェクトの情報収集など行っていました。月に1度は車で4時間程度かかる他県まで行き、三泊四日村で過ごし事務所に帰るという具合です。私のプロジェクトの対象範囲は南部ラオス5県という広範囲だったため、各地を飛び回りました。それだけに自分の体調管理や仕事のマネージメントが必要不可欠でした。

瀧川さん

仕事後や週末は同僚や上司と出かけ、プール、バトミントン、テニス、ボーリングなどで体を動かしてリフレッシュしていました。私は泳ぐことが好きなので、ほぼ毎週末ラオスに1つだけあるホテルのプールでひたすら泳ぎました。

また、南部ラオスには観光地の遺跡と滝があり、何度か足を運び、大自然を感じました。

私の住む町はタイ・ベトナムに国境を面しています。隣国とはいえ、ラオスとは全く異なる世界が広がっていることに驚きました。例えば、タイの国境を超えるとすぐに道がきれいに舗装されていたこと。ベトナムを超えると、山が禿げている光景、ゴムの木が大量に植林されている光景を目の当たりにしました。

このように隣国は急速な発展を遂げています。今後のラオスの国の在り方が懸念されます。

派遣のために大切な準備は?

瀧川さん

この国際ボランティアプログラム・国際社会貢献活動は、途上国に単身で渡り、そこで世界を見てみたい、知りたいという熱い思いがとても大切です。そして、留学とは違い、ボランティアと言われながらも仕事に位置づけられると私は考えます。仕事とは、責任感を持ち、自発的かつ主体的に行動しなければなりません。もちろん結果も求められます。その覚悟がまず必要です。

私は派遣までの短い期間、ビジネス英語、TOEIC・TOEFLの勉強をしながら、インターネット技術(HP作成・動画作成)やプロジェクトサイクルマネジメント(開発途上国におけるプロジェクトの計画・実施・評価を運営・管理する手法)の研修を受けました。

渡航前にその国の歴史・政治・経済など様々な面から知っておくことも大切です。日本との関わりも勉強しておくことをお勧めします。

私はラオス派遣決定まで、ラオスについての知識はほぼ皆無でした。しかし、調べていくうちに日本はラオスの最大の支援国であること、ODAによってラオスには日本橋・友好橋という橋があることを知りました。

この活動で得たものは?帰国後は、その経験をどういかしたいですか?

瀧川さん

日本を離れ、開発途上国に飛び込み、自らを厳しい環境に身を置く。そこで仕事をする。この5か月間は予想外の苦労と喜びの連続でした。常に全力を尽くそうと体当たりの毎日でした。何もできない自分に驚き、悔しい思いをしました。社会のことも、世界のことも、日本のことも、そして自分のことさえも知らなかったことを思い知らされました。厳しい上司に認めてもらいたい、少しでも結果を出したいという焦りからプレッシャーで押しつぶされる毎日でした。しかし自分の能力の限界を認め、必要な時は上司や同僚に助けを求める。そんな柔軟性を持つことを学びました。

また、日本と大きく異なる生活環境の中で暮らし、いかに自分が恵まれた環境で育っていたか分かりました。最初は、娯楽がない・交通手段がない。これじゃあリフレッシュできないと不満ばかりでした。しかし、次第に自分の世界と価値観で全てを見ることは大間違いだと気づきました。

「開発」の現場に五か月間携わり、開発途上国での市場開拓に興味を持ちました。特にラオスは未開の地であり、大きな可能性を秘めていると確信しています。例えば、後発開発途上国と位置づけられるラオスであっても、女性は美容、特に日焼けに関してとても気にしています。34°を超える暑い日中でも、長袖のTシャツを着て、マスクをつけています。あまりにも、気候と彼女たちのスタイルが合っていなくて不自然であったため、なんでそんな厚着をしているのかと尋ねると、どの女性も「日焼けが嫌だから。テレビで見るタイ人の女優のように真っ白なのに憧れるから。」と口を揃えて答えました。それは少数民族の女性においても一緒でした。

私の住む町には廃れた資生堂の店舗がありました。お客さんが入っているところは一度も見たことがありません。私が試しに入ろうとしたところ、なんと鍵をかけた中に店員さん一人ぼーっと座り、なかなか気づいてくれませんでした。ラオスの女性たちは「資生堂は高すぎる。絶対に手が届かないよ。」と私の化粧品を見て羨ましそうにしていました。

そこで私が思ったこと。東南アジアの貧しい地域に住む女性にも、オシャレになって気分が上がるお化粧品を提供したい。東南アジアの女性の肌にあった、日焼け止めなんてどうか。こんな小さなニーズから取り組むのも開発じゃないか、と。

振り返ると、様々な思いがあふれ出します。良い経験をしたな、と終わらずに、ラオスで得た知識や経験を改めて再分析・再検討し、アウトプットすることを実行しています。その一つとして秋学期からは、グローバルゼミⅡという授業を履修しています。自分の活動をプレゼンテーション用にまとめ、発表します。課外活動では、提携する高校生や保護者等に、「何のために学ぶのか」、「何のために働くのか」などの考えを実体験に基づいて、発表するという講演機会が多くあります。そうした活動を通して、将来の模索をしている最中です。

瀧川さん