2012.09.28.
【栗田ゼミ】フィールド調査から学ぶ開発経済学とカンボジアの現状(研究演習Ⅰ)

集合写真

開発経済学を学ぶ栗田匡相ゼミでは、毎年3年生次に途上国の実情を学ぶためにアジアの国々を訪れ、農村でのフィールド調査を実施しています。2012年度も「日本学生支援機構の留学生交流支援制度(ショートステイ、ショートビジット)プログラム」の助成を受け、2012年8月3日~15日の間、カンボジアのコンポントム州などで、貧困状態や健康状態、労働移動などに関する農村調査を実施しました。

プログラム名は「フィールド調査から学ぶ開発経済学とカンボジアの現状」。農村での調査結果は、現地のアンコール大学の学生や教職員との交流や議論を交わすことで、精度の高い研究となりました。また、今年11月にはアンコール大学の学生を関学に招待し研究会を実施します。こうした一連の調査や研究、国際交流に学生たちが主体的に参加することで、国際的な視野と高い分析能力を持った高度な人材育成を目指しています。

このページでは、栗田ゼミの学生たちがカンボジアでの生活の中で感じたことなどをまとめたレポートの内容を抜粋して掲載しています。学生たちが現地で撮影した写真も掲載しています。ぜひご覧ください。

※ レポートの最後に記載されているのはゼミ内でのニックネームです。

はじめに 【担当教員・栗田匡相より御礼のメッセージ】

今回の調査では、実にたくさんの方々に多大な支援をいただいた。とりわけ特定非営利活動法人ピープルズホープジャパンの久米さん、ソルンナさん、武長さん、石関さんには、お忙しい中、調査全体のアレンジメント等に関して全面的なサポートを賜った。また、Angkor Universityの松岡先生には調査中のカンボジア人学生の指導やAngkor Universityでの報告会のアレンジなど、多方面で支援を賜った。Caritas Cambodiaのスタッフのみなさん、療養施設でHIV/AIDSとともに生きているみなさんは我々の急な訪問の申し出にもかかわらず、いやな顔一つせず、あたたかく対応してくださった。プノンペンの経済特区訪問に際しては、上松マネージャーに多忙なスケジュールの中、お時間を割いていただき、貴重なお話をたくさん伺うことが出来た。そして、調査にご協力いただいたカンボジアコンポントム州のティポー、スレスロモー、トウルポプレア、チュホック村の皆さんは、異国の地から来た我々をとてもあたたかく迎え入れてくれた。この全ての支援、ご恩に心からの感謝を申し上げたい。

移動中

渡航前、不安などはありましたか。またそれは解消されましたか。


◆他のゼミメンバーとは違い、カンボジア入国前にベトナムに立ち寄りました。ベトナムからカンボジアに入国する経路は陸路です。事前に予約をしていたわけでもなかったので、多少の不安がありました。実際にはホーチミンからプノンペンまでバスに乗って国境を越えましたが、大したトラブルもなくスムーズに出入国ができました。トラブルがなかったとはいえ、1人で行動していたため、常に緊張感を持っていました。その後、ゼミのメンバーに会った時はホッとした自分がいました。(どい)

◆現地集合・現地解散ということもあり、ひとりでカンボジアまで着けるのかという不安がありました。中国の航空会社で航空券を取りました。まわりは中国人ばかりで、風習やマナーが違うため戸惑いもありましたが、自力でカンボジアにたどり着くことができました。移動だけでもひとりで行動することで少し自信が持てました。この現地集合・現地解散には、そういった栗田先生の意図があったのだと思いました。(アッキー)

◆海外にはこれまで家族と何度か行っていて、不安を感じることはありませんでした。しかし、今回は、発展途上国であることに加え、滞在する場所も都市部ではなかったため、衛生面での問題が一番気がかりでした。また、食事や気候に関しても多少の不安がありました。滞在した約2週間は、現地の水は飲まずに、ミネラルウォーターを使って歯磨きや洗顔、また、食事では火を通してあるものを食べるようにしました。気温も高いため、こまめな水分補給も心がけました。また、衛生面では、渡航前にA型肝炎・破傷風・狂犬病・日本脳炎のワクチンを打っていたので、万全な状態でした。マラリアやデング熱に対しては、蚊に刺されないように長袖や虫よけスプレーなどで対策し、結果的に現地では何も問題は起こらず、いつのまにかに不安も解消されていました。(ゆっきー)

カンボジアにて

プログラム中、もっとも印象に残った出来事は何ですか。

調査1

◆カンボジアに行った最大の目的でもある農村調査です。テレビや映画で観ていた光景を、自分の目で実際に見て、思うことがたくさんありました。うまく言葉にできないですが、特に印象に残っているのは、子どもたちのことです。調査では4つの村にいきました。村によって貧困差があり、学校に行きたくても行けない子ども、働いている子どももたくさんいました。調査したある家で、学校に行くことができない女の子と話をしました。「学校に行きたい。日本語を勉強したい。日本について勉強したい」と言われて、私は何を言ってあげればいいのかも分からず、英語でうまく自分の気持ちを伝えることもできませんでした。そんな自分に、そして自分の力ではどうすることもできないという無力さに、腹が立ちました。それでも、カンボジアの子どもたちはいつも笑顔でした。その笑顔に調査中は何度も助けられました。その女の子に、日本のお土産であげた折紙で鶴を作ってあげると、とても喜んでくれて、何度も「もっと作ってほしい!」と言われて、本当に嬉しかった。他の家では、女の子の似顔絵を描いたり、日本語で「ありがとう」と書いて意味を教えたりしてあげると、その子は照れながらも喜んでくれました。

お別れのときには、「ありがとう」と何度も言いながら抱きしめてくれて、私は泣きそうになりました。言葉なしに、コミュニケーションをとることには限界がありますが、言葉がなくても、子どもたちとわずかでも触れ合うことができ、こんな私でも、子どもたちを喜ばせることができて、本当に嬉しかったです。子どもたちの笑顔は、絶対に忘れません。そして、来年の夏休みに、必ずまたカンボジアに行こうと思いました。(ゆかこ/さとこ)

移動

◆カンボジアのシェムリアップで街を歩いたことです。栗田先生から「みんな1人で街に出て街の空気や音、匂いなどを感じてきなさい」というミッションを受けました。最初は1人で過ごすということが寂しくて怖くて乗り気ではありませんでした。が、マーケットで現地の人の生活を見ながら、観光客向けの店の店員さんとお話をしたりすることは、ハマってしまいそうなくらいの良い経験でした。一番感じたことは、現地の方の私に対する優しさです。知らない外国人に対して笑顔で優しくしてくれ、「気をつけて帰ってね」とお母さんのように感じました。1人で街に出るということが苦手な私にとって新たな良い経験ができました。私の夢の1つに外国へ一人旅へいくことが追加されました。(のぞみ)

◆カンボジアの学生が非常に真面目だった点が、特に印象的だった。初めて顔合わせをして、グループごとに農村調査で使用する調査票の説明をした際も、既に調査票を一通り読んでいて、説明がとてもスムーズに行うことができました。また、集中力が高く、私たちが休憩をとっている時間も、調査票を見たり、他のメンバーと話し合ったりしていて、私たちの調査に協力してくれているという嬉しさと、自分もしっかりしなければならないという良い意味での危機感も感じました。また、農村での調査では、クメール語と英語を使って私達と村人の仲介役を果たしてくれました。約1時間半の調査中、一度も筆を置かずに調査をしてくれて本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。(ゆっきー)

こどもたち

渡航前と渡航後で、何か自分の中で変化はありましたか。

子供とキャッチボールする学生

◆渡航前、毎日を同じように何の不自由も感じず生活していたが、カンボジアで生活をしてみると、その生活とは全くかけ離れた生活をしなくてはならず、日本での不自由のない生活が幸せなことだと感じました。しかし、カンボジアでいろんな経験をし、自分の足で村の地面に立って、村やそこに住んでいる方々を見て、嗅いだことのない匂いを感じ、日本にいる時よりも自分らしく生きているように感じました。カンボジアで感じたいろんな後悔から学び、自分がこれからどうしていくべきなのかを考えました。自分を知るためのいい機会であったし、大きな変化だったと感じています。(ゆかぽんたす)



◆渡航前、カンボジアについては、文献やニュースなどから得た知識しかありませんでした。実際に行ってみると、カンボジアの本当の現状を肌で感じることができ、日本での生活がいかに恵まれたものであるかということを痛感しました。ただ、今回の渡航でカンボジアの全てを見ることができたわけではなく、私が今まで見てきた世界というのが全世界のほんの一部分にすぎないということを改めて実感しました。今回の渡航で、自分の生活が恵まれたものであるということを実感しただけでなく、海外に実際に行ってみるということがいかに大切なことであるかということも同時に感じました。これから、いろんな国へ行き、その国の空気や文化などを肌で感じたいと思います。(みか)

お母さん赤ん坊の様子

◆「外」への意識が変化したと思います。なぜだかわからないですけど、ひとりで放浪するようになりました。原付や自転車に乗って、行くあてもなくふらふらと。シェムリアップでひとりふらふらしたのと同じ感覚ですね。よく知っている場所でも、まったく知らない場所でも、新しい発見があればうれしいものです。(あしたか)

現地の方々とどのようにコミュニケーションをとっていましたか。

現地の人達とのふれあい

◆アンコール大学の学生さんたちとは、通訳として一緒に農村調査に行き、一週間ほど毎日一緒だったので本当に仲良くなれました。お互い英語で会話をするのですが、言いたいことが英語で言えず、もどかしくなった時もありました。しかし、そんな私を彼らは受け入れてくれて、一緒にご飯を食べたり、バイクで色々なところへ連れて行ってもらったり、観光地を一緒に回ってくれたり、また時には、叱られたりもしました。私がカンボジアに来てよかったと思うことの一つは、彼らとこんなにも仲良くなれたことです。(さおりん)

◆カンボジアでは英語でのコミュニケーションが主でしたが、文化の違いなどによって言葉のニュアンスや意味も少し違い、こちらが考えていることがカンボジア人に上手く伝わらないということが多々ありました。調査時などは苦労しました。体のジェスチャーを使ったり絵を書いたりして、必死にこちらの考えを伝えようとしました。渡航前、現地語のクメール語の会話帳を購入して持って行ったので、それをフル活用してコミュニケーションをとったりしました。(じゅん)

現地の学生と

◆英語が通じる場合を除けば、カンボジア人学生の通訳は不可欠でした。笑顔であいさつすることを心がけたり、調査前にお土産を渡したりすることなど、簡単なことから現地の方々との距離が縮まるのを感じました。現地の言葉で話しかけられて何を言っているのか分からない場合も、分からないなりに何が言いたいのか必死で感じ取るようにしました。また、現地の子供たちとは、ボールなどを使った遊びでコミュニケーションをとるのが一番良い方法だと思いました。いかに互いに信頼関係を築けるかが、現地でのコミュニケーションの基本になったと思います。(はまも)

プログラム中、ゼミ仲間と共同で何かを成し遂げましたか。

移動中の様子

◆調査を終えた翌日から、アンコール大学での発表に向けた準備を2日間かけて徹夜で準備したことです。調査データをエクセルに入力して分析、その結果のプレゼンテーション資料を作るといった一連の作業を、データ入力グループと研究グループで行いました。最も苦労したことは、分析した結果をどのようにしてプレゼンとして発表していくかを考えたことです。発表する相手であるアンコール大学の学生に、いかにして今回の調査のことをわかってもらえるかを熟考しながら準備を進めていきました。(あだっちゃん)

研究発表

◆アンコール大学の学生に研究発表するまでの道のりは険しかったです。調査で得たデータの打ち込みから、パワポ作成、さらには英語で発表。前々から、栗田先生に「おまえら寝れねえからな」と言われていました。絶対寝る!と思っていましたが、寝られませんでした。ただ、発表当日は緊張もあって眠気は吹き飛びました。発表が終わってからは達成感!というよりもグッタリでした。(あしたか)

研究発表

◆今回のカンボジア渡航は農村における世帯調査が一番の目的でした。8チームに分かれて、1チーム一日5世帯を目標に世帯調査を4日間実施しました。私のチームは、初日の一世帯目で4時間もかかってしまい、その時はどうなるかと思いました。各世帯それぞれで何かしらの問題が出てきて、全然スムーズに終わりませんでしたが、私のチームは一人だけががんばるのではなく、それぞれがその問題について考え、どうしたらスムーズに進められるのかを、寝る間を惜しんで話しあうことで、チームという形を作り挙げられていたのではと思います。4日間の調査が終わったときは、達成感と充実感で満ち溢れていましたが、カンボジアでの調査はほんの序章にすぎず、帰国した今からが始まりだと思っています。この調査をしっかりと自分たちの研究の結果につなげることがカンボジア学生への恩返しであり、またゼミの仲間と共同で成し遂げる集大成であると私は考えています。(まっちゃん)

夕焼け

帰国後、プログラムでの経験をどのように活かしたいですか。

地図で確認

◆このプログラムで1番感じたことは、チャレンジするということです。今自分が見ている世界だけでなく、もっと新しい世界を見てみたい。もっと多くの世界を見たいという気持ちをずっと持っています。今までは、何かと「でも~だから」「今は~だから」と理由をつけて1歩踏み出せない自分がいました。しかし、今回カンボジアに行って、自分自身が勇気をもって挑戦しないと、心の殻を破らないと、何も世界は変わらないと感じました。これからは、興味があること、これしたいかも!行ってみたいかも!と思うことがあったら全部に挑戦していこうと思います。そのために、やらなければいけないこと、こなさなければならない仕事、責任のある仕事等、ゼミや勉強なども手を抜かず計画的に動き、自分のやりたいことに時間がさけるような時間の使い方をしていきたいです。それを、しっかり学生中に身につけ、社会に出た後も継続して続けたいです。(のぞみ)

美しい景色

◆今回カンボジアに行ったことで、自分にどのような変化があったのかについて、はっきりとまだ自分自身感じることができていません。これから自分がどうしたいか、何をしたいかも決まっていません。でも、少しでも自分の中で感じ方や考え方が変わったことは確かです。今まで、やりたいことや興味があることについて、恐怖心があったのか、深く追求しようとしてきませんでした。自分なんかにはできないと勝手に決めつけていました。でも、カンボジアから帰ってきてから、自分のしたいことはとことん深くやろうと決心がつきました。少しずつですが行動し始めています。応援してくれる人もいるので、真剣にやってみようと思います。それが、今後の自分にどういう影響が出るのかは分かりませんが、カンボジアの人々のように、今、目の前にあることに全力で打ち込もうと思います。今、自分がしたいことには、ゴールがないかもしれません。それでも今しかできないことだと思うので、精一杯頑張ってみようと思いました。(ゆかこ/さとこ)

◆まずは、今回の調査でえることができたデータを使って、よりよい論文をつくり上げることが第1目標です。そこには一切の妥協があってはならないと思います。それは、調査に協力してくれたカンボジア人学生及び農村の人々を含め、携わってくれた多くの人たちに対して失礼に当たると思うからです。他には、今回のプログラムを通して感じた日々の生活に対するありがたみを頭の中にとどめながら生活できたらいいと思います。(どい)

みんなで記念撮影