学長のポケット

[ 編集者:広報室       2017年7月3日 更新  ]

関西学院大学学長 村田 治(むらた おさむ)

関西学院大学学長 村田 治(むらた おさむ)





村田 治(むらた おさむ) 関西学院大学学長
1955年、東京都生まれ。関西学院大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士課程単位取得。関西学院大学経済学部助教授を経て、1996年に教授。教務部長、経済学部長、高等教育推進センター長を務め、2014年より関西学院大学長。著書に『公債と財政赤字のマクロ理論』『現代日本の景気循環』。あしなが育英会副会長。
専攻/マクロ経済学、景気循環論

問題意識と粘り強さ

256号(2017年7月3日発行)

 理工学部を除けば学生の皆さんは、先生方の研究内容を直接知る機会は少ないのではないでしょうか。また、「研究=勉強」と誤解して、大学の先生方は勉強が好きな変わり者と思っていないでしょうか。実は、大学教員も含めて研究者は、自分の研究分野が面白くて仕方ないと感じています。その意味では、(勉めて強いられる)勉強と研究とは全く異なります。

 それでは、研究者を研究に駆り立てる推進力は何でしょうか。それは、自然現象や社会現象、あるいは人間の行動についての疑問(問題意識)と、その疑問を解き明かしたいという好奇心だと思います。しかしながら、問題意識と好奇心だけでは、研究上の疑問を解明することはできません。

 疑問を解決するための粘り強い努力が必要です。自然科学であれば夥おびただしい数の実験であり、人文科学や社会科学では、粘り強い資料収集や解釈、モデル分析や実証分析が必要となります。

 しかしながら、この問題意識や粘り強い努力は研究者だけに必要な資質ではないと考えます。皆さんが社会に出たときに直面する仕事上の課題や問題には予あらかじめ定まった解決策はありません。むしろ、何が問題なのかを探ることから始めなくてはならないでしょう。まさに、問題意識が問われます。さらには、問題の所在がわかったなら、それを解決するために粘り強い努力が必要となってきます。この問題発見と解決への努力を繰り返すことによって、仕事が面白くなり、他の領域の課題への好奇心が湧いてきて視野が広がってくるのだと思います。

 そのように考えますと、大学時代の専門分野の探求が、実は、社会に出たときの重要な訓練となっていることがわかると思います。学生の皆さんには、自分の専門分野の探求に徹底的に打ち込んでほしいと心から希望します。

就職活動は未来志向で

255号(2017年5月15日発行)

 就職活動がいよいよ本格化してくる時期になりました。4年生の皆さんは、「思い通りのところに就職ができるだろうか」「自分に向いた職種や企業はどこだろうか」等々、不安でいっぱいの日々を過ごしていることと思います。

 就職活動において、準備しておく答えはたった二つです。一つは「なぜ、わが社やこの団体で働きたいのですか」という問いに対する答えであり、もう一つは「あなたはどんな人間ですか」という質問への答えです。

 前者は、業界研究や企業研究等を徹底的にやれば必ず答えが見えてきます。皆さんが志望するような企業や団体であれば、必ずや社是等において社会への貢献を謳っています。そのような企業や団体であれば、徹底的に研究するうちに、その長所や良さが見えてきますし、より関心を持つようにもなります。より重要なのは、「あなたはどんな人間ですか」という問いへの答えです。この質問に対する答えは決して自己分析によって求まるものではありません。なぜなら、自己分析は過去や現在の自分についての考察だからです。企業や社会が求めているのは、皆さんが「これからの人生をどのように生きていこうとしているのか」という問いであり、未来を志向した問いかけだと理解してください。つまり、皆さんが自分の人生を含め、自分の理想とするどのような社会を築いていきたいと考えているのか、そして、その理想像の中に、それぞれの企業や団体で働くことをどのように位置づけているのか、が問われています。

 皆さんの人生の夢や目標は決して就職ではないはずです。就職は通過点にしかすぎません。世界や社会への貢献や変革などを含め、これまでの人生で培ってきた自分自身の夢や高い志があると思います。この高い志や将来の夢に照らし合わせて、自分に合った企業や団体を考えていくことが、就職活動にとって遠回りのようですが、近道であり王道であると考えます。皆さんの健闘を祈ります。

World Citizen(世界市民)

254号(2017年1月16日発行)

 関西学院大学を出て、世界で活躍する人が増えてきています。大変嬉しいことです。
 本学のグローバル人材の定義は、「主体性」「タフネス」「多様性への理解」を兼ね備えた人物であるとしています。海外に出ると、文化や風習の違いによって、戸惑うことや不安に思うこともあるでしょう。それを主体的にタフに乗り越えてこそ、異文化に対する理解や多様性の重要
性がわかるのではないでしょうか。
 「グローバル人材」という言葉を使いましたが、関西学院では、ミシシッピ州にあるランバス先生の碑に因んでWorld Citizen(世界市民)という言葉を使っています。グルーベル前院長を中心にまとめられたミッションステートメントの解説の中でも、World Citizenについて次のように書かれています。
 「世界市民とは、学院の創立者ウォルター・R・ランバスのように、他者と対話し共感する能力を身につけ、よりよい世界の創造に向けて責任を担う人々のことです。」
 関西学院大学の皆さんが、他者と対話し共感し、より良い世界を創造していくことを心から願っております。

異なった分野へのチャレンジ

253号(2016年10月17日発行)

 関西学院の創設者であるW.R.ランバス先生は、晩年にMedical Mission:The Twofold Task という本を書かれました。The TwofoldTaskは医療と宣教の「二重の任務」という意味であり、ランバス先生は科学とキリスト教という異なった二つの分野を同時に追求されました。
 この科学とキリスト教の枠を超えて異なった分野を同時に追求する姿勢はその後も受け継がれ、本学の大きな特色である学部間の垣根の低さへと繋がっています。さらに、学部間の垣根が低いという特長は、1997年からの複数分野専攻制度や2005年度から始められた最短4年で二つの学位が取得できるMultiple Degree 制度へと結実していきます。
 このような流れを汲んで、関西学院大学では、スーパーグローバル大学創成支援事業の基本的な教育システムとしてダブルチャレンジ制度を設けています。これは、皆さんが入学した学部での勉強以外に、インターナショナルプログラム、ハンズオン・ラーニング・プログラム、副専攻プログラムのいずれかにチャレンジする制度であり、言い換えれば、二つ以上の異なった分野に同時にチャレンジする制度です。
 実は、異なった分野に同時にチャレンジすることによって、この激動の世界で必要となる創造性やイノベーション能力が育まれます。逆に言いますと、異なった分野の知識や関心が結びついたときにしか、創造性やイノベーション能力は生じないのです。その意味で、本学のダブルチャレンジ制度は、学生の皆さんに創造性やイノベーション能力をつけてもらうための仕組みであると言えます。皆さんも、ランバス先生が求められたThe Twofold Task「二重の任務」を是非とも追求していってください。

The Twofold Task(二重の任務)

252号(2016年7月1日発行)

 関西学院を創立されたランバス先生は、晩年にMedical Mission: The Twofold Taskという重要な本を書かれました。本年2月に、山内一郎元院長、神田健次神学部教授の監修で関学出版会から本訳が出版されています。Medical MissionとThe Twofold Taskに対しては、それぞれ「医療宣教」と「二重の任務」の訳が当てられています。
 ランバス先生はこの本の中で、医療と伝道という二重の任務(The TwofoldTask)を追求されています。第一に、医療の専門家として病の治療に専念することが求められ、第二にはキリスト教の福音を提示するという宣教の任務です。ランバス先生は、このための準備として「言語を修得すること」「現地の人の物の見方を学ぶこと」などを挙げておられます。本学がめざす、言語能力の育成やグローバル人材の資質の一つである「多様性への理解」に通じるものがあります。
 いま、関西学院大学では、スーパーグローバル大学創成支援事業の構想「グローバル・アカデミック・ポート」のなかで、ダブルチャレンジ制度を推進しています。学生は、入学した学部での学びの他に、副専攻プログラム、ハンズオンラーニング・プログラム、インターナショナル・プログラムのいずれかにチャレンジするという制度です。
 この背景には、独創性やイノベーションは異なった領域の知識や知恵が結合するときにしか生まれないという考え方があります。アイザック・アシモフも言っていますように、異なった分野の出会いや融合こそが、イノベーションや創造性を生み出す源泉であると考えます。現在、理工学部と総合政策学部で構成されているKSC戦略本部の「神戸三田キャンパスにおける将来構想」の基本にも、「世界と競う文理シナジーキャンパスの創設」が謳われています。異なった分野に取り組むというThe Twofold Taskこそが、これからの社会の変革やイノベーションにとって必要不可欠であると考えます。 

就職活動で問われるもの

251号(2016年5月13日発行)

 4年生の皆さんは、今、就職活動がピークを迎えるなかで、不安と緊張感で押しつぶされそうになっているのではないでしょうか。また、自分が向いている業界や分野はどこだろうか、どの企業が自分に合っているのだろうか、などさまざまな自問自答が頭の中を駆け巡っていると思います。
 就職活動において、準備しておく答えは二つです。一つは「なぜ、わが社やこの団体で働きたいんですか」という問いに対する答えであり、もう一つは「あなたはどんな人間ですか」という質問への答えです。前者は、業界研究や企業研究等を徹底的にやれば必ず答えが見えてきます。
 より重要なのは、「あなたはどんな人間ですか」という問いへの答えです。この質問に対する答えは決して自己分析によって見つかるものではありません。なぜなら、自己分析は過去や現在の自分についての考察だからです。企業や社会が求めているのは、皆さんが「これからの人生をどのように生きていこうとしているのか」という問いであり、極めて未来志向性が高い問いかけだと思います。つまり、皆さんが自分の人生を含め、自分の理想とするどんな社会を築いていきたいと考えているのか、そして、その理想像の中に、それぞれの企業や団体で働くことをどのように位置づけているのか、が問われます。
 皆さんの人生の夢や目標は決して就職ではないはずです。世界や社会への貢献や変革などを含め自分自身の夢や高い志があると思います。この高い志や将来の夢に照らし合わせて自分に合った企業や団体を考えていくことが、就職活動にとって遠回りのようで近道であると考えます。

世界市民(World Citizen)

世界市民特別号(2016年4月1日発行)

 関西学院大学のめざす人間像は、言うまでもなく「“Mastery for Service”を体現する世界市民」です。この世界市民に当てられる英語はWorld Citizenであり、Global Citizen ではありません。関西学院を創立されたW.R.ランバス先生のパールリバーチャーチの記念碑には、World Citizen and Christian Apostle to many lands.と書かれていることから、関西学院で用いられる世界市民の英語にはWorld Citizenが充てられています。
 ところで、Globalという単語からグローバル化という言葉が想起されますが、国際化(Internationalization)とグローバル化(Globalization)の違いは何でしょうか。国際化は、国民性や国家の違いを互いに尊重した上で、国家間の関係やヒト、モノ、カネの移動が焦点となります。その意味では、異質性や多様性を前提としています。他方、グローバル化は、経済学的に考えると、ヒト、モノ、カネに加えて制度やシステムが国境を越えて移動すること、あるいは統一されることを意味します。これは、制度、システムや規格等の世界標準化を指向することになり、当然のことながら、制度やシステムの同質化や均質化を含意します。
 このような見方に立ちますと、世界市民の英語訳はやはり、Global Citizenではなく、World Citizenであるべきと考えます。このことは、いま世界が必要としている人材が、多様性を認め新たな価値を創造しチャレンジしていくイノベーター(変革者)であることからも理解できます。本学のスーパーグローバル大学創成支援事業の構想調書にも書かれているように、関西学院大学がめざす人間像も、「主体性」「タフネス」「多様性への理解」を備えたWorld Citizenであると言えます。

実践型教育で現実の問題に立ち向かう力を

250号(2016年1月15日発行)

 学生の皆さんは、それぞれの学部において専門的知識やスキルを身につけるために、日々勉学に励んでいることと思います。世界には、環境問題、貧困問題、エネルギー問題、民族対立など解決しなければならない課題が山積しています。これらの問題のどれをとっても、解決策が簡単に見つかるものではありません。また、これらの問題を解決するのに、専門知識の修得は必要条件ではありますが、十分条件ではありません。
 なぜならば、社会に出たとき直面する課題は、問題の本質が見えない、さらに問題の所在さえ分からないものがほとんどです。また、何が問題かが判明しても、問題解決の糸口すら見いだせないこともあります。このような場合、知識をいくら集めても解決策が見いだせないものです。問題同士が複雑に絡み合っていることもあります。それらを一つひとつ分解・分析しながら問題の所在と本質を明らかにし、解決策を選ぶ作業が必要となります。
 まさに、問題発見能力、問題解決能力が問われます。これらの能力を身につけるためには、現実の課題に主体的に立ち向かうことが必要です。つまり、実践的な現実の課題を対象とした学びの中でしか、これらの能力は鍛えられないと思われます。このための訓練の場が、まさに実践型教育(ハンズオン・ラーニング)であり、皆さんが、積極的にハンズオン・ラーニング・プログラムに参加して、問題発見能力や問題解決能力を鍛えることを心から期待します。

創造性

249号(2015年10月15日発行)

 近年、いたるところでグローバル化が叫ばれていますが、グローバル化=語学力の強化、では決してありません。重要なのは異文化を含めた多様性を知り、「異なったもの」を認める姿勢、さらには「異なったもの」に積極的にチャレンジしていくことが求められているのだと思います。
 いま、社会や世界が求めている能力・資質とは、イノベーション(革新)を引き起こす力だと考えられます。旧来の考え方や枠組みにとらわれない、新しい発想やアイデア、いわゆる創造性が求められています。
 では、創造性はどのようにして養われるのでしょうか。実は、創造性、あるいは新しいアイデアは、それぞれが異なる領域に属する複数の事実や認識が結びつくときに生まれると考えられています。まさに「異なったもの」が結びつくときに創造性やイノベーションが生まれます。
 関西学院大学のダブルチャレンジ制度は、自学部での学び以外に、副専攻プログラム(他学部の専門の勉強)、ハンズオン・ラーニング・プログラム(学外での実践的学修)、インターナショナル・プログラム(海外留学)など、もう一つの異なったチャレンジをすることを求めています。まさに「異なったもの」へのチャレンジによって、創造性やイノベーション力を育む制度になっています。学生の皆さんは、ぜひ、副専攻プログラム、ハンズオン・ラーニング・プログラム、インターナショナル・プログラムのいずれかに必ず挑戦してほしいと願っています。

絶対評価

248号(2015年7月1日発行)

 4年生の学生にとっては、いよいよ就職活動が山場を迎える時期になります。「自分のやりたい仕事は何なのか」「自分はどの職業に向いているのか」「第一志望の企業にうまく就職できるのか」「どの企業を最終的に選べば良いのか」など、多くの迷いや不安と向き合いながら就職活動を続けていると思います。
 今年は特に、企業の採用活動の方法が大きく変わったために、例年以上に、就職活動で迷うことが多いのではないかと思います。就職活動がうまく進まず苦しい状況に直面することもあるでしょう。周りの友人が早く内々定をもらったりすると、余計に焦ったりもします。
 ここで少し考えてほしいことがあります。それは皆さん一人ひとりの個性が違うという事実です。当然のことながら、友人と自分とは個性も資質も異なるわけで、企業との相性も大きく異なってきます。就職とは結局のところ、自分と企業とのマッチングです。皆さんの人格や人間性の評価では決してないのです。就職することが最終目標ではなく、就職活動は人生の一つの通過点でしかありません。
 だからと言って、就職活動が重要でないと言っているのではありません。むしろ、全力で就職活動に向き合ってほしいと思います。自分と将来を見つめ、自分の生き方を思索する絶好の機会だからです。もちろん、これまでに経験したことのない胃が痛むような状況に追い込まれることもあるでしょう。その時こそが正念場です。人は苦境や逆境に立たされたときにこそ、大きく成長します。周りの状況に振り回されることなく、「昨日よりも今日の自分が成長しているか」「勇気をもって新しい一歩を踏み出したか」という自分に対する絶対評価を基準に就職活動を乗り切ってほしいと心から願います。

グローバル人材とは

247号(2015年5月15日発行)

 ここ数年、グローバル人材という言葉をよく耳にします。関学大は、文部科学省の「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援事業」や「スーパーグローバル大学創成支援事業」等に採択されていますが、実は、文部科学省においてもグローバル人材の定義が明確に定まっているわけではありません。
 仮に、グローバル人材を世界で活躍できる人と、いささか同義反復的に定義してみましょう。そうすると、どんな手段・資格、あるいは資質・能力を用いて活躍するのか、という問いがすぐに浮かんできます。グローバル人材、あるいはグローバルに活躍すると言う場合、当然のことながら、何らかの職種や専門分野を持っていることが大前提となります。
 グローバルに活躍するためには、それぞれの職種、専門分野の知識、技能を高いレベルまで磨きながら、他方で、その職種や専門分野の役割や位置づけを世界的な視野に立って俯瞰(ふかん)できることが必要だと思います。
 専門性の彫ちょう琢たくについては大学時代の勉強がその基礎となります。世界的な視野を持つためにも大学時代の読書や海外経験などが基盤となります。特に、比較的時間がある大学時代に海外での体験を積んでください。できれば、自分の生き方が変わるような経験を持ってほしいと思います。その具体的な経験を、自分の専攻分野の勉強の中に位置づける。あるいは難しいかもしれませんが、一般化・普遍化を図ることが極めて重要です。
 いずれにしろ、社会に出た時に、世界的な視野で物事を考えられるようになるためには、大学時代の真摯な勉強と生き方が求められます。

高い志を持ったチャレンジを

世界市民特別号2015(2015年4月1日発行)

 新入生の皆さん、関西学院大学へのご入学おめでとうございます。2年生以上の皆さんも新しい学期が始まり決意を新たにしていることと思います。
 今、世界は大きな変革期を迎えています。グローバル化が進み世界市場をめぐっての競争が熾烈さを増し、経済格差や貧困の問題がより一層深刻となっています。そのため、これまでの資本主義経済の在り方を見直す動きも見られます。世界が直面している問題を真剣に考えてもらいたいと思います。
 第4代院長C・J・L・ベーツ先生は、関西学院の建学の精神を“Mastery for Service”(奉仕のための練達)というスクールモットーとして表現しました。自分の利益のためだけではなく、世界人類のために自分を鍛えよと訴えられたのです。皆さんが、関西学院大学での学びにおいて、世界的視野で物事を考え、行動できる人間に育ってほしいと思います。
 関西学院大学は、文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援(SGU)事業に採択されました。その構想名は「国際性豊かな学術交流の母港『グローバル・アカデミック・ポート』の構築」というものです。その基本にあるのが、入学した学部での学びの他に、①海外留学等のインターナショナルプログラム、②実践的な学びであるハンズオンラーニング・プログラム、③他分野を学ぶ副専攻プログラム、のいずれかに挑戦するダブルチャレンジ制度です。2つのことに同時に挑戦することによって、主体性が身につき、世界の多様な文化や思考への認識も深まります。何よりも、未知へのチャレンジ精神が培われることでしょう。これからの世界が必要としている能力・資質が養われると考えます。
 自分自身にチャレンジし自己を鍛え、世界に羽ばたいて世界人類の幸福に貢献するという「高い志」を持った「Mastery for Service を体現する世界市民」に育ってほしいと心から願います。

好奇心と粘り強さ

246号(2015年1月15日発行)

 大学の教員は原則として、研究者であることが求められます。研究者という言葉は学部生には縁遠い、堅い印象を与えるかもしれませんが、大学教員が共通に持っている特性は、一言で言うと、好奇心と粘り強さであると思います。
 実は好奇心と粘り強さは、研究者だけでなく、どのような職業においても必要な資質であると考えられます。新しいビジネスモデルを発案するためには、アンテナを自分の周囲に張り巡らせ情報を収集することが必要ですが、好奇心がなければこのアンテナはうまく機能しないのではないでしょうか。また、発案したビジネスモデルを実行していくためには粘り強さが必要となります。
 では、どうすれば好奇心を持つことができるのでしょうか。極めて単純で、まずは新しいことに手を出すことだと思います。新しいお店に行く、いつもとは違うルートを通るなど、絶えずこれまでとは違う行動を心がけることが大切です。最も効果があるのは、書物の乱読であると思います。いろいろな分野の本を乱読するに従い、おのずと自分の興味のある分野に出合います。ぜひ、試してみてください。
 粘り強さについても、同様に極めて単純です。自分で進むと決めた道を決して諦めない。何があっても諦めない。途中で、一時的に休んだり放ったらかしになっていてもよいのです。とにかく、諦めずに何度でも再チャレンジし続けていくことが肝心です。諦めたら、その時点で全てが終わります。細々でもよいですから、続けることが粘り強さにつながると考えます。

苦悩を通して歓喜へ(Durch Leiden Freude)

創立125周年記念号(2014年9月28日発行)

 現在、社会で活躍している卒業生は、学生時代は皆同じように、このキャンパスの中で未知なる領域に挑戦し、悩み、もがき苦しみ、努力を継続することによって大きく飛躍していったのではないでしょうか。新しい未知の領域への挑戦には、必ず迷いと苦しみが伴います。迷いや苦しみがない挑戦など、本当の意味での未知への挑戦ではないでしょう。
 不思議なことに、人間の成長は直線的ではなく、大きな飛躍の前には必ず停滞や退行現象が起こります。このことは、勉強であれ、スポーツであれ、どんな活動にも共通のものです。新しい事柄を理解したり、新たな技ができたりするなどの飛躍的な成長は、停滞期の後に突然起こります。
 皆さんが今、壁にぶち当たりもがき苦しんでいるのであれば、それは新しい未知なる領域に挑戦している証しであり、大きく飛躍する前兆だと考えてください。諦めず、一歩ずつ着実に前に進んでいってください。
 壁にぶつかりもがき苦しんでいる時こそ、次なる飛躍の準備段階にあるのだと自分に言い聞かせてください。今の苦しみを通過してこそ、成長の喜びと自信が手に入ります。成長という喜びは苦悩を通してしか手に入りません。繰り返しますが、諦めず前に進んでいってください。

天職

245号(2014年7月1日発行)

 3年生の皆さんは、就職活動を考えると、少し不安な気持ちになっているのではないでしょうか。自分が一体どのような職業に向いているのだろうかと悩むことも少なくないと思います。
 天職という言葉をご存じでしょうか。広辞苑によると、「その人の天性に最も合った職業」と記されています。この天性は「生まれつき」という意味です。したがって、天職とは、「その人に生まれつき最も合った職業」ということになります。
 ここで、少し考えてみてください。人はその時々の置かれた状況によって大きく変わります。悪くもなれば、良くもなります。とくに、大学生の皆さんには無限の可能性が広がっています。そうであれば、大学生の時点で、自分に最も合った職業を見つけるなど有り得ない話です。むしろ、どんな職業も、自分に最も合った職業(天職)になる可能性を秘めています。
 人は自分を高め成長するに従い、関心や興味が広まったり深まったりします。自分の選んだ仕事を精一杯することで仕事が面白くなり、その仕事を天職へと導いていくのではないでしょうか。どの職業に就くかではなく、就いた仕事にどのように向き合うかが大切なのだと思います。

文武両道

244号(2014年5月15日発行)

 新入生は大学生活に少しずつ慣れてきたころだと思いますが、皆さんが大学に入学した目的は何でしょうか。2年生以上の学生たちも、一度初心に帰って思い起こしてみてください。
 一般的に、大学教育の目的として、一つには「知識と技能の伝達」がありますが、最近では、もう一つ「新しい広い経験の提供」が重要視されています。このことは、大学で学ぶことは学部等の正課の授業だけではないことを意味し、体育会や文化総部、サークルなどでの課外活動も「新しい広い経験」であり大学教育の一環であることを意味します。「新しい」という意味では、大学からしかできない競技やクラブもあります。高校までとは違ったクラブを選ぶこともあるでしょう。いずれにしろ、同じ目標に向かって努力し、その中で一生の友人をつくってほしいと思います。同じ目標に向かって苦楽を共にする大切さを学ぶことは、これからの人生にとってかけがえのないものと考えます。
 だからこそ、課外活動に参加する際に必ず実行してほしいことがあります。それは、正課の勉学と課外活動の両立であり、広い意味での「文武両道」を実践してほしいと思います。いま、社会が求めている大切な能力の一つは、異なった複数の課題に同時にチャレンジする能力です。ぜひ、課外活動を通じて真の友を得、「文武両道」を実行し、自分自身を高めていってください。

新入生のみなさんへ

世界市民特別号2014(2014年4月1日発行)

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。みなさんには、関西学院大学の4年間で様々な経験を通して自己を修養し、社会に対して貢献できる「世界市民」として大きく羽ばたいてほしいと願っています。
 初代院長のW・R・ランバス先生は1889年に、キリスト教主義に基づく全人教育をめざして関西学院を創立されました。その後も世界各地で伝道と教育、医療活動に従事され、人々の幸福のために活動されました。ランバス先生の生き方こそ「世界市民」であり、「世界市民」の育成を掲げる関西学院の礎であります。
 第4代院長のC・J・L・ベーツ先生は、ランバス先生の建学の精神を“Mastery for Service”(奉仕のための練達)と表現されました。ベーツ先生は、“Mastery for Service”について書いた高等学部商科の雑誌「商光」の創刊号において、“Self-culture pursued for its own sake produces selfishness. Self-sacrifice as the only rule of life leads to weakness”と説明し、Self-culture(自己の修養:Mastery)とSelf-sacrifice(献身:Service)は相補うものとしました。また“Mastery for Service”の言葉に続けて、“We do not desire to be weaklings.We aim to be strong, to be masters”と述べました。「自己を修養するために強くあれ」、と訴えたのです。
 キリスト教主義に基づく全人教育と“Mastery for Service”は、今も色あせることなく、関西学院大学の特色ある教育として受け継がれています。ここでは、その中の3つの特色について触れておきます。
 特色の1つ目は、学部の垣根が低いことです。1970年から学際的科目として「総合コース」を開講。約40年前から学生が学部を超えて学べる環境を整えています。現在は、MS(複数分野専攻制度)や4年間で2つの学位が取得できるマルチプル・ディグリー制度への挑戦もできます。複数の専門分野を学ぶことで、多角的に物事を考えることができるようになり、自分自身の物の見方や世界観の構築にも大きく役立ちます。
 2つ目の特色は、国際性です。この国際性を身につけるため設けられているのが、実践型“世界市民”育成プログラムです。このプログラムを通じて、世界的に競争力が激しくなっている時代を生き抜く力を養い、世界へ羽ばたいてください。特に、関西学院大学がアジアで初めて実施した国連ユースボランティアや国際社会貢献活動に参加してほしいと願っています。
 3つ目の特色は、アクティブ・ラーニングです。ゼミや研究室など同じ専門分野の仲間との意見交換や、共同学習空間の他学部の学生との交流です。神戸三田キャンパスのアカデミックコモンズでは、実際に多くの学生の活動が活発に行われ、様々な成果が生まれています。
2014年度は、西宮上ケ原キャンパスのH号館にラーニング・コモンズが誕生します。
 関西学院大学の多彩なプログラムや学習環境を思う存分活用し、自己を修養してください。そして大きな志を持った「世界市民」に成長し、社会に対して貢献することを期待しています。