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2017.4.4 第71回入学式式辞「人の痛みのわかる人間に」

2017年4月4日 更新

2017年3月15日  中学部長 安田栄三

中学部長 安田栄三

 おはようございます。新入生の皆さん、関西学院中学部入学おめでとうございます。
 今は、しっかりと返事をしてくれて、嬉しく思います。今からの話を心で聴いてほしい。
 人の目を見て、心で話を聴くことを、生涯大切にしてください。

 中学部の正門を入ると、校舎の前に少年像があるのに気づいただろうか。
 少年の名は白木真寿夫。1933年4月1日、旧制中学の五年生であった白木君は、大学生のいとこと須磨の海岸でボートに乗った。二人は海岸から沖へ漕ぎ出して行ったが、不幸にも通行する汽船の横波を受け、いとこは海に放り出されてしまった。
 大学生のいとこは泳ぐことができない。それを見た白木君は、制服のまま海に飛び込み、いとこを後ろから抱えつつ、助けに近づいた船にいとこをまかせると、自分は力尽きて海中に沈んでしまった。4月1日といえば、まだ寒い中、冷たい海につかって体の大きいいとこを抱えて泳ぐことが、どんなに苦しかったか君たちにはわかるでしょう。
 白木君のご両親は、悲しみの中にも、ご自分の息子がこのような美しい関西学院精神を発揮したことを記念し、関西学院に桜の木を植えられた、人はこれを白木桜と呼んでいます。この桜は白木君の美しい精神を讃えているかのように、毎年美しい花を咲かせています。
 みんなは、与えられた命を大切にしてほしい。ご両親から、神様から授かった大切な命を、そしてここに集う仲間の命も,自分の命と同じように大切なものであるというあたりまえのことを、知っておいてほしい。それがわかっていたからこそ、白木少年は、自分の命を掛けていとこを救うことができたのです。

 2011年3月の東日本大震災、そして昨年の熊本の地震で、多くの人が被災を余儀なくされました。「あすという日が」という曲は、震災の後、仙台の中学生たちが歌い、全国に広がった歌です。生徒たちが考えたこと、それは復興を祈って歌で人を励ますこと。中学生の純粋な歌声が、苦しんでいる多くの人に生きる希望を与え続けました。
 当時、大きな被害の出た、石巻市の大川小学校では、全校児童108人のうち、74人が津波にのみこまれました。今は高校生になった少年が、小学校の慰霊碑に手を合わせ「これからは震災の真実をいろんな人に伝えていきたい」そう語っています。人の痛みを知る被災者が、今度は支援者となり世の中を明るく照らそうとしています。もっと生きたい、そう願って亡くなられた方々の分まで、みんなには一生懸命に生きる使命があります。

 長い伝統のある関西学院、みんなもよく知っているヘレンケラー女史は、来日された時に、関西学院にも来られて、学生たちの前で講演をされました。
 「どんなにつらいことがあっても、この世には自分にできることがあるのだと信じよう」
 「誰かの苦しみを和らげてあげられる限り、人生は無駄ではありません」
 「人生で最も胸が高鳴るときは、他人のために生きるときです」
 講演が終わって、耳の聞こえないヘレンケラー女史に、学生たちの大きな拍手の振動が伝わったそうです。彼女の精神は、今でも私たちに勇気を与えてくれています。
あいうえお

「あいうえお」これは中学部生の合言葉です。
あ→挨拶挨拶とは相手の存在を認め、心を開くこと。挨拶は人を幸せにします。
い→祈り人のことを大事に想うこと。
う→歌声先ほどの仙台の中学生たちのように、歌で人を励ませるようであってほしい。
え→笑顔笑顔は世界共通の言葉。笑顔ひとつでクラスは明るくなります。
お→思いやりさりげない思いやりと優しさのあふれる学校にしよう。

 関学は派手な学校ではありません。質素な生活を心がけよう。
 電車通学になる子も多いと思う。自分から気持ちよく人に席を譲れる人間になろう。
 三日月の校章と、みんなが今身にまとっている制服に誇りを持とう。
 たくさん本を読もう。読書は、自分を豊かに成長させてくれます。
 新しい出会いを感謝し、友達と先生との交わりを大切にしよう。
 たとえ苦しいことがあっても、誠実さという決して消えることのない灯りを手にして、
 明日に夢を持って、一歩ずつ歩んで行ける人間になろう!

 1889年、小さな教室から始まった関西学院の教育、マスタリーフォアサーヴィス、そして「感謝・祈り・練達」をスクールモットーにしたこの学び舎で、感謝の気持ちと謙虚さを忘れず、人の痛みのわかる美しい心を、どうか大切に育ててください。

 保護者の皆様、本日は、本当におめでとうございます。
 我々教職員は、皆様との出会いを感謝し、かけがえのない魂を持つ生徒たちと一緒に成長してゆきたいと願っています。子供たちがこれからも誇りに思える大人として、我が子だけではなく共に学ぶ子ども達を、どうか関学の子として見守ってあげてください。
 今日という、神様が下さった新しいスタートラインを、今ここに集う関西学院の仲間全員で大切にしたいと願います。本日は、本当におめでとうございます。