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2017.3.15 第68回卒業式式辞「さわやかな風を残して」

2017年3月15日 更新

2017年3月15日  中学部長 安田栄三

中学部長 安田栄三

 いよいよ卒業の日を迎えることとなりました。保護者の皆様には、三年間、本当にお世話になり、感謝いたしております。この子たちと出会えて、私たちはとても幸せでした。
 神様に祝福されたこの子たちの未来を、これからも変わらずに励ましていただきますよう、心からお願いいたします。

 「三年生のために少しでも良い卒業式をしよう」「最後まできれいな校舎で過ごしてほしい」見えないところでずっと君たちを支えてくださった用務さんや在校生のあたたかい気持ちが、この礼拝堂からも伝わってくる。
 生徒会が一生懸命考えて掲げてくれたスローガン「KG PRIDE みんなが主役 みんなでつくるKGJH」、その言葉通り、自分にできることを、一人一人が誇りを持って実践してくれた。
 電車やバスでさりげなく席を譲る姿を何度となく見てきた。登下校時にごみ拾いをしている姿、仲間のため、人のために正しいことが堂々とできる中学部の証明、一年生の頃からみんなの元気な挨拶が、印象的であった。
 千刈キャンプで、まだ見ぬ新入生のために力を尽くしてくれたリーダーたちの誠実さ、みんなの想いが新入生の心に伝わった。キャンプ後の感想文には「先輩リーダーの偉大さと優しさがわかった」とあった。その気持ちが中学部キャンプの伝統として、これからも後輩に受け継がれてゆく。
 全身全霊をそそいで新入生を歓迎してくれた体育大会、白熱した競技、女子生徒全員のダンス、そこまで引き上げてくれたダンス部の指導に感銘を受けた。
 生徒の声に耳を傾けてくれた生徒会、ポスター委員会も大活躍、一つ一つの言葉には、みんなのあつい正義感を感じることができた。
 11月、「咲き乱れし百の花」のスローガンのもと開かれた文化祭、体育館に咲いたみんなの手のひらの花に圧倒された。目立たないところでも支えてくれた仲間、誠実に取り組んだステージや音楽コンクール、また美術展のレベルの高さにも感動を覚えた。
 クラブ活動でも、全てのクラブが、素晴らしい成果をあげてくれた。
 対戦相手への尊敬の念を忘れず「前を向こう、笑顔で行こう」そう声をかけて苦しい試合の場面を乗り越えていった姿がとても印象的であった。
 全員が参加してくれた長崎の修学旅行では、病気の身体に鞭打って、初対面のみんなを心から信じ、原爆の悲しさを話してくださった下平さんとの出会いがあった。
 「平和の原点は、人の痛みがわかる心をもつこと。もっと生きたい、そう願って亡くなった、ナガサキに眠る人々の想いに寄り添い、皆さんは何があっても生きる勇気を選んでほしい」話し終えて、いつまでも涙を流されていたのは、みんなが真剣に話を聴いてくれたからだと仰っておられた。
 介護施設で生活される下平さん、今年は3年生全員が退場するまで見送ってくださった。何度も手術を繰り返しながら、それでも今生きていることにご自身が感謝しておられる。人の痛みがわかる心、それは多くの悲しみを乗り越えてこそ、初めて自分のものになるような気がする。
 「私は被爆三世です」バスガイドさんのさりげない言葉、遺構めぐりを三時間近くも案内して下さった被爆者の方の想い、長崎での体験を、みんなはこれからも語り伝えられる人であってほしい。
卒業式

 昨年大ヒットした映画「君の名は。」そのテーマは、「忘れてしまいそうなことを決して忘れないように」そう新海監督は語っておられる。
 忘れてはいけないこと、繰り返してはならないこと・・・
 4月に起こった熊本の地震、熊本市民病院で、先天性の心臓の病気と闘っていた四歳の少女は、設備の整っている福岡の病院への転院を勧められた。
 移動中に命を失う危険性のため、両親は反対したが、余震のたびに我が子に覆いかぶさって守ってくれる看護師さんたちの姿を見て、転院を決断した。しかし福岡にたどり着いたその5日後、少女は力尽きた。22年前にも、神戸で同じことが起こっていた。
 みんなが、その熊本の復興のために迅速に行なってくれた募金運動。
 阪神淡路、東日本、そして熊本の震災に苦しんだ被災者が、今度は支援者となってゆく。
 忘れてはいけないことが私たちにはある。それは誰かに助けてもらったことかもしれない。誰かに大切に思ってもらったことが、必ずあるはず。見えないところでも、みんなを信じ、みんなを心から必要とし、祈ってくださる方がいる、そのことを決して忘れてほしくはない。
 小さな命を救おうと、誰もが一生懸命だった。誰も責めることはできない。大自然の力の前では、人間は無力かもしれない。しかし、三度同じ悲しみが起きぬよう、若いみんなの力を将来に生かしてほしいと願う。
 一生懸命、勉学に部活に、そして生徒会活動に取り組んだ三年間、
 そのかけがえのない経験を生かし、誰かの役に立てる、誰か一人でも幸せに近づけることができたら、どんなに素晴らしい人生だろうか。
 「神は真実な方、あなた方を耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、逃れる道をも備えてくださる」
 今、大切にしなければならないことを大切にできる心を持った人間、
 どんなに強い風が吹き荒れようと波打ったりしない、その心があれば、どんな試練をも乗り越えられる。
 人間力の最高峰は、誠実さと優しさ、それはすでにみんなの胸の中にある「美しい心」から生まれる。誠実さという松明を手にして足元を照らしながら、一歩一歩歩んでほしい。立ち去った後に、さわやかな風が吹き抜けるように。
 中学部を卒業したことを誇りとして、苦難に負けず、三日月の光をこれからも輝かせて生きてほしいと願う。明日から本当にそれぞれの道に進む君たち。
 三年間、本当にありがとう。そして卒業、本当におめでとうございます。