4.チョコっと正規分布

 ところで,前章で出てきました 正規分布 についてお話しておきましょう。

ガウス(新数学辞典より)



 正規分布は,ガウス(Gauss,1777〜1855)によって発見された分布です。ガウスの活躍は幅広く,純粋数学から物理,天文学,測地学などに至ります。その中の天文学において,天体の位置を測定するときできる誤差から誕生した分布で,一度は皆さんも受験のとき目にした分布です。

 確率変数 X が正規分布にしたがうとき,その密度関数 f(x) は,

で与えられます。

 そこで,まず,正規分布の平均 E[X]=μ と,V[X]=σ2 を求めてみましょう。ここは,積分が出てきます。苦手だという方はとばして,最後の結果だけ覚えておきましょう。ここをクリックすると飛びます。

となります。次に,分散を求めてみましょう。

 すなわち,正規分布の密度関数 の平均 E[X]=0,分散 V[X]=1 であることが分かります。このような正規分布 normal distribution の頭文字を取って N(0,12) と書きます。

 次に,確率変数 X が N(0,12) に従うとき,新しい確率変数 U=σX+μ を考えます。すると,

となります。一方,上の変換により,確率変数 Uの確率密度関数 g(u) は,x=(u-μ)/σ,|dx/du|=1 なので,

となります。これは,平均 μ,分散 σ にもつ確率変数 U の確率密度関数 g(u) となります。このとき,確率変数 U は,N(μ,σ2) に従うと言います。

平均 μ,分散 σ2 の正規分布



 さあ,準備が整いました。もう数学的なことは,出てこないので心配しないで下さい。

 左のシュミレーションを見て下さい。最初に描かれていますグラフは,N(0,12) のグラフです。

 そこで,x軸下の平均をずらしてみましょう。マウスを,←平均→ の上に持っていき,左右にドラッグし動かしてみて下さい。すると,グラフは左右に移動すると同時に,密度関数の平均部分が変化します。次に,←標準偏差→ の上に持っていき,左右にドラッグし動かしてみて下さい。すると,ばらつき具合が変化すると同時に,密度関数の標準偏差部分が変化します。

 正規分布の性質は,

のようなグラフで,x軸とこの曲線で囲まれた部分の面積は,積分して求めますと 1 となっています。

 さて,今まで,皆さんの多くの方が疑問に思っておられると思います。

積分と言っても,大変です。そこで,このような場合,すでに正規分布表として計算機で求められています。今回,その積分していくシュミレーションを作りましたので,それを用いて,実際に面積を求めることにしましょう。




例題1 確率変数 X が標準正規分布 N(0,12) に従うとき,次の確率を求めよ。

(1) P(-0.671.64)

(2) P(1.212.00)

[解答]右のシュミレーションを用いて,求めることにしましょう。
(1)の場合,直線 x=-0.67,x=1.64 と曲線とx軸で囲まれた部分の面積を求めればよいので,左の括弧に -0.67,右の括弧に 1.64 を入力し,最後にリターンキーを押すと求めることができます。計算結果は,0.7(0.69807) となります。(2)も同様に求めると,0.09(0.09039)となります。

練習問題1 確率変数 X が標準正規分布 N(0,12) に従うとき,次の確率を求めよ。
(1) P(-1.96-1.96)
(2) P(X1.2)
(3) P(X2.55)







練習問題2 確率変数 X が標準正規分布 N(0,12) に従うとき,次の確率を求めよ。
(1) P(|X|1.5)
(2) P(|X|0.9)
(3) P(-1.560.54)









 いかがですか? 面積と確率の関係が理解できてきましたでしょうか? しかし,これでは,いつも確率変数 X が標準正規分布 N(0,12)だけにしか適応できません。そこで,一般の正規分布 N(μ,σ2) においても,与えられた区間に対する確率を求める方法を紹介します。それには,先に説明しました変換(詳細は
ここをクリック)を用います。あともう少しです。がんばりましょう。

 確率変数 U の分布が N(μ,σ2) の正規分布にしたがうとき,U がある範囲の値をとる確率は,U=σX+μ より,

の分布 N(0,12) から求めることができます。

 とにかくどのように利用するか例題で示すことにしましょう。

例題2 U が正規分布 N(3,52) に従うとき,確率 P(U7) ,P(25)を求めよ。
[解答] 平均 μ=3,分散 σ2=52 なので,X=(U-3)/5 として,標準正規分布へ変換します。すると,

として,求めることができます。

例題3 アメリカのある大学の男子学生 8000 人の身長の分布は,平均 175.26cm ,標準偏差 7.62cm の正規分布に従うとする。その時,

[解答] U が正規分布 N(175.26,7.622) に従うとする。x=(u-175.26)/7.62 によって変換する。

(1) P(U182.22)=P(X0.913)=0.5-0.319=0.181 となる。したがって,18.1%.ゆえに,8000×0.181=1448 (人)となる。
(2) P(U150)=P(X-3.315)=0.5-0.49954=0.00046 となる。したがって,0.46% で,8000×0.46=3.68 (人)となる。

練習問題3 ある 200 点満点の模擬テストを 5000人 に行い,平均 123.5点,標準偏差 21.3点 を得た。このとき,
(1) 180点 以上取った学生は何人いるか。
(2) 50点 から 100点 までの間に何人の学生がいるか。







 正規分布は,よく研究されている分布で,他にも多くの利用方法があります。今後,そのいくつか紹介していきたいと思います。