17 おまけ 出生と月齢,子どもと家族に関する国際比較調査の回帰分析

 少し休憩.右のゲームは,宇宙にいる10台の UFO を,スペースキーから発するミサイルで「やっつけよう」というものです.移動は,4つの矢印「→,←,↓,↑」です.速く動かすには,シフトキーを押しながら矢印キーを押してください.

 「満月に出産が多い」ということをよく耳にします.

 厚生労働省の「2005年保管統計表第7表 出生数,出生年月日時・出生(6月〜8月)」の資料をもとに,いろいろな角度から分析を行うことにしましょう.

 資料の数値は省略しますが,上の資料で,時間と出生数をグラフにしたものが図17.1です.図17.1によると,自然分娩から,ほど遠いような結果ですね.最初に,潮位と出生数の相関を調べようとしていたのですが,この資料では不適切であると思いましたのでやめました.

 図17.1の結果の背景には,産婦人科の先生の大変さ,少なさを物語っています.「少子化対策」の根本的な要素として,産婦人科医の増員も重点的に考慮しなければならないでしょう.

図17.1(29,456人対象)

 ちなみに,曜日別にまとめてグラフにすると,図17.2のようになり,土日に出生数が減少しています.このデータからも,図17.1で考察した内容と同じことがいえます.

図17.2(29,456人対象)

 月齢は0日から30日に分類されますので,これを以下のように単純に4期間に分けて処理すると,

月齢の分類
月齢 26〜29,1〜4 5〜11 12〜18 19〜25
月の形 新月 上弦 満月 下弦
平均出生数(1日当り) 2920(人) 2945(人) 2948(人) 2940(人)

となりました.この結果をグラフにしたものが図16.3です.この結果から,月齢と出生率の相関関係を調べようとしたのですが,これだけを見ると直線的な関連性はなさそうです.本来なら,回帰分析の例題なので,回帰分析を行うつもりでしたが,これでは難しいですね.

 せっかく集めた資料なので,この資料をもとに,満月のときは本当に出生が多いのか調べてみることにしましょう.

図16.3

 そこで,同じ3ヶ月のデータをもう少し細かく分けて分類しますと,図16.4のようになります.

図16.4(29,456人対象)
  月齢 平均出生数
新月 1 2979
上弦 2 2934
上弦 3 3015
満月 4 2695
満月 5 3185
満月 6 2834
下弦 7 3067
下弦 8 2881
下弦 9 2840
新月 10 3027
  平均 2945.6

 帰無仮説を「満月の平均出生数は年間の平均出生数と同じである」,対立仮説を「満月の平均出生数は年間の平均出生数より多い」として95%の(t-)検定を行いますと,「有意である」という結果を得ます.この分析から,やはり,迷信は正しいと言えるかもしれません.


 平成21年(2009年)3月,「第8回世界青年意識調査」の結果について内閣府より発表されました.その中の「2009年親子関係に関する意識」について,「家族」ということをテーマに,「日本がどの国と似ているのか」回帰分析を行って分析してみましょう.

●子どもは親から経済的に早く独立すべきだ

表17.1(単位%)
    日本 韓国 アメリカ イギリス フランス
1 そう思う 42.9 38.5 36.5 37.1 31.9
2 どちらかといえばそう思う 45.7 45.2 40.2 38 48.1
3 どちらかといえばそう思わない 7.8 11.1 13.4 13.4 16.7
4 そう思わない 2.7 4.8 5.8 6.9 2.7
5 分からない・無回答 0.9 0.4 4.2 4.5 0.7

 表17.1は,各国で行われた調査結果です.この結果をもとに,以下の手順で分析します.

Step.1 14回 回帰分析の流れのおさらい のアプレットを用いて,日本と韓国,アメリカ,イギリス,フランスの決定係数を求める.

 日本と韓国   決定係数 0.989 相関係数 0.994

 日本とアメリカ 決定係数 0.99  相関係数 0.995

 日本とイギリス 決定係数 0.996 相関係数 0.995

 日本とフランス 決定係数 0.948 相関係数 0.948

となります.

Step.2 次に,それらの決定係数の有意性を検定する.つまり,母相関係数 ρ=0 を検定することで,

 帰無仮説: 2変量の間に相関はない

を検定する.これも,14回 回帰分析の流れのおさらい のアプレット(t-検定タブを押す)より,95% の両側検定で t(0.975) = 3.18 なので,

 日本と韓国   決定係数 0.989 相関係数 0.994 t値 16.23 > 3.18

 日本とアメリカ 決定係数 0.99   相関係数 0.995 t値 17.71 > 3.18

 日本とイギリス 決定係数 0.996 相関係数 0.995 t値 19.16 > 3.18

 日本とフランス 決定係数 0.948 相関係数 0.948 t値  5.18 > 3.18

となる.

Step.3 よって,それぞれのt値は棄却域に入り,帰無仮説は棄却され,日本と全ての調査国の相関があるといえる.

 今回の判定は,以下のようになります.

表17.2
子どもは親から経済的に早く独立すべき
  相関係数 判定
日本と韓国 0.994 正の相関がある
日本とアメリカ 0.995 正の相関がある
日本とイギリス 0.995 正の相関がある
日本とフランス 0.948 正の相関がある

 この結果から,「子どもは親から経済的に早く独立すべきだ」という点において,日本と4国には表17.2のような相関があるといえます.

 他の国の相関も,この手法を利用して求めてみますと,全ての国においても相関がありました.

 この手法は,簡易的な方法で,本来なら,データの正規性の検定しなければなりません.大変偏ったデータには適応できません.確認方法として,95% の推定区間を求め,その中に「0」が含まれているかどうか,また,ピアソンの相関係数検定表を利用する方法もあります.偏ったデータの場合は,スピアマンの順位相関係数の検定を行います.

 平成21年(2009年)3月,「第8回世界青年意識調査(内閣府)」の結果を元に,他の項目についても回帰分析を行いましたので,その結果だけを報告しておきます.

元データ 相関係数と t値 判定
表17.6
年老いた親を養うことについて
観点 日本 韓国 アメリカ イギリス フランス
どんなことをしてでも親を養う 28.3 35.2 63.5 66 50.8
自分の生活力に応じて親を養う 67.2 60.3 29.6 26.2 43
親自身の力や社会保障にまかせる 2.8 2.9 2.4 5 5.1
分からない・無回答 1.7 1.6 4.5 2.8 1.1
表17.7
年老いた親を養うことについて
相関 決定係数 相関係数 t値
t(0.975)=4.303
日本と韓国 0.971 0.985 8.148 ( > 4.303)
日本とアメリカ 0.246 0.496 0.807 ( < 4.303)
日本とイギリス 0.181 0.425 0.664 ( < 4.303)
日本とフランス 0.614 0.784 1.784 ( < 4.303)
表17.8
年老いた親を養うことについて
相関 相関係数 判定
日本と韓国 0.985 正の相関がある
表179
自分の子どもに老後の面倒をみてもらいたいか
観点 日本 韓国 アメリカ イギリス フランス
そう思う 10.6 17.3 31.7 44 20.1
どちらかといえばそう思う 36.6 24 35.8 26.1 42.2
どちらかといえばそう思わない 33.2 21.7 8.3 5.6 17.2
そう思わない 16.8 33.7 10.1 12.8 12.9
分からない・無回答 2.8 3.4 14.1 11.5 7.6
表17.10
自分の子どもに老後の面倒をみてもらいたいか
相関 決定係数 相関係数 t値
t(0.975)
=3.182
日本と,韓国 0.307 0.554 1.152 ( < 3.182)
日本とアメリカ 0.031 0.176 0.31 ( < 3.182)
日本とイギリス 0.026 -0.163 0.285 ( < 3.182)
日本とフランス 0.54 0.735 1.875 ( < 3.182)
表17.11
自分の子どもに老後の面倒をみてもらいたいか
相関 相関係数 判定
相関なし
表17.12
結婚についての考え
観点 日本 韓国 アメリカ イギリス フランス
結婚すべきだ 22.9 34.9 22.6 15.6 12.4
結婚したほうがよい 54.4 38.4 37.1 26.4 28.8
結婚しなくてもよい 19.9 23.2 28.8 36.2 44.1
結婚しないほうがよい 0.5 0.9 3.2 5 8.3
分からない・無回答 2.3 2.6 8.4 16.8 6.4
表17.13
結婚についての考え
相関 決定係数 相関係数 t値
t(0.975)=3.182
日本と韓国 0.788 0.888 3.338 ( > 3.182)
日本とアメリカ 0.85 0.922 4.129 ( > 3.182)
日本とイギリス 0.293 0.541 1.114 ( < 3.182)
日本とフランス 0.285 0.534 1.094 ( < 3.182)
表17.14
結婚についての考え
相関 相関係数 判定
日本と韓国 0.888 正の相関がある
日本とアメリカ 0.992 正の相関がある

 また,2005年家庭教育に関する国際比較調査報告書(国立女性教育会館)の資料より,「子どもへの期待」,「子育てに対する考え方」の分析も行いました

表17.15 家庭教育に関する国際比較調査報告書(第3章 子どものしつけと子どもへの期待) より
子どもへの期待
観点 日本男 日本女 韓国男 韓国女 タイ男 タイ女 アメリカ男 アメリカ女 フランス男 フランス女 スウェーデン男 スウェーデン女
学校で良い成績をとる 12.5 11.4 19.2 24.2 28.1 29.6 70.4 75.4 69.3 71 45.4 46.4
親の言うことを素直に聞く 27.8 31.5 36.3 36.9 53.3 51.7 75.4 74.9 78.9 81.4 60.5 58.7
自分の意見をはっきり述べる 71.4 67.1 57.3 60.9 37.7 32.9 61.4 69.2 52.9 55.9 70 71.8
他人と協調できる 69.5 66.3 54.7 57.1 57.3 50.2 70 74.5 60 68.9 78.6 77.7
自分の人生の目標を持つ 56.8 56.3 64.1 64.4 41.7 35.8 66.6 73.4 71.5 78.3 73 75.5
男は男らしく,おんなのこは女らしくする 41.4 28.7 52.3 40.1 72.3 47.7 62.3 62.1 36 42.6 13.4 9.4
困っている人を見たら助けてあげる 68.7 65.9 55.6 53.4 49.6 38.5 79.4 79.9 49.8 47.6 84.2 76.7
リーダーシップがとれる 26.3 16.4 57.6 54.7 45.6 32.7 64.4 67 33.7 33.4 21.6 21.9
他人との競争に勝てる 13.6 9.4 31.1 27.7 24.2 19.2 44.3 43.3 39.8 35.3 9.5 7.2

 このデータを用いて,上の方法を用いて全ての組み合わせを調べましたが,量が多いため日本の考え方と相関があるものだけを記載すると,

表17.16
子どもへの期待
相関 決定係数 相関係数 t値
t(0.975)=2.365
判定
日本女とスウェーデン女 0.704 0.839 4.077 ( > 2.365) 正の相関がある
日本女とスウェーデン男 0.729 0.854 4.345 ( > 2.365) 正の相関がある
日本女と韓国女 0.633 0.795 3.470 ( > 2.365) 正の相関がある
日本女と韓国男 0.477 0.691 2.526 ( > 2.365) 正の相関がある
日本男とスウェーデン女 0.533 0.730 2.827 ( > 2.365) 正の相関がある
日本男とスウェーデン男 0.560 0.748 2.986 ( > 2.365) 正の相関がある
日本男と韓国女 0.690 0.831 3.947 ( > 2.365) 正の相関がある
日本男と韓国男 0.597 0.772 3.221 ( > 2.365) 正の相関がある
日本男と日本女 0.960 0.980 13.038 ( > 2.365) 正の相関がある

表17.16の結果を得ました.「子どもへの期待」に関して,日本の男女を問わず,韓国,スウェーデンと相関があることが分かりました.

表17.17 家庭教育に関する国際比較調査報告書(第3章 子どものしつけと子どもへの期待) より
子育てに対する考え方
観点 日本男 日本女 韓国男 韓国女 タイ男 タイ女 アメリカ男 アメリカ女 フランス男 フランス女 スウェーデン男 スウェーデン女
愛情があれば,子どもを叩いてもよいと思う 33.8 26.6 49.4 55.9 66.1 71.1 10.5 12.1 6.4 5.6 1.2 1.3
子どものわがままは,許される 2.7 1.7 9.7 8.7 9.1 9.3 20.9 23 3.2 4.1 49.2 48.6
小学校の先生も,子どもをしつけてほしい 37.7 29.2 78.9 80.3 69.5 77.4 36.2 39.8 21.2 22.1 64.5 59.9
5歳以下の子どもを一人にして出かけてはいけない 67.1 67 73.9 71.4 81.8 85.3 97.5 63 81.3 81.9 93.6 93.9
近所で悪いことをしている子どもを見つけたら他人の子どもでも叱るのが良い 54.6 53 57.3 56.7 52.1 46.9 20.7 26.6 37.3 38.3 76.8 80.3

 このデータも同様の方法で,分析しますと, 

表17.18
子どもへの期待
相関 決定係数 相関係数 t値
t(0.975)=3.182
判定
日本女フランス女 0.816 0.903 3.644 ( > 3.182) 正の相関がある
日本女フランス男 0.822 0.907 3.724 ( > 3.182) 正の相関がある
日本男日本女 0.977 0.989 11.334 ( > 3.182) 正の相関がある

表17.18の結果を得ました.「子どもへの期待」に関しては,日本の男女には強い相関があり,共通の期待が子どもに注がれていることが分かります.また,日本人女性の価値観は,フランスの男女の価値観とも相関があるということが分かります.なぜなのでしょうかねぇ?

 他の国との相関もありますが,関心がある方でご希望の方がおられれば,お知らせします.