3 二項分布と正規分布


 §2の続きです。二項分布の確率計算は,考え方はとても簡単なのですが,計算が少々めんどうです。

 そこで,登場するのが正規分布近似です。右のアプレットをご覧ください。n は試行回数を表し,p はそれが起こる確率を表します。バーを上下に動かすことにより,二項分布,正規分布(密度関数)のグラフが変化します。

 p の値が 0.5 に近い程,n の数が少なくてもよい近似となることが分かります。多くの問題集において,「n が十分大きいので,正規分布で近似すると」とありますが,右のグラフの変化をみることにより,視覚的に確認することができます。

 では,二項分布を正規分布で近似するための準備を行います(詳細については,各種分布の§3二項分布を参照してください)。


 もう一度,正規分布表を用いた確率の求め方の手順のおさらいを行いましょう。

例題1 確率変数 X が,平均 μ=6,標準偏差 σ=1.5 の正規分布 N(6,1.52) にしたがうとき,X が 7 以上となる確率 P(X7) を求めよ。

[解答]

Step1. N(6,1.52) を標準正規分布 N(0,1) へ変換する。


Step2. 次に,求める確率の区間を上の変換式を用いて変換する。


Step3. この区間の値に基づき,正規分布表より確率を求める。


といった手順です。このことから分かるように,平均と標準偏差さえ分かれば上の変換公式が利用できそうです。実際,各種分布の§3二項分布で示していますように,

が成り立ちます。ここで,np,npq は,それぞれ二項分布の平均と分散となっています。それでは,このことを用いて,§2の最後の練習問題2を正規近似することにより求めることにしましょう。

例題2 ボールを的に当てるゲームを行う。今,あるプレーヤーの当る確率が 0.6 とするとき,10 回投げて 8回以上当る確率を正規分布表より求めよ。





ワンポイント
本来は,8 としたいところですが,正規分布は
連続しているため,7 と 8 の間の数 7.5 を
用いることにより,より一層正確な近似を行う
ことができます。それを,半整数補正と呼びます。

[解答] 平均=10×0.6=6,標準偏差= となりますので,的にあたる回数を値にとる確率変数を,X とすると,X は N(6,1.552) に従います。このとき,P(X7.5) を求めます。変換式は, となりますので

となります。練習問題2で求めた値が 0.1673 なので結構よい近似であることが分かります。


練習問題1 イチロウ選手の打率が 3割7分5厘(0.375) であるとき,10 打席のうち 5 本以上,7 本以下ヒットを打つ確率を求めよ。



 一般に,X が二項分布 Bin(n,p) にしたがうとき,
q=1-p,   (二項分布 Bin(n,p) の平均μ=np, 標準偏差σ=)
とおくと,n が大きいとき,確率変数 Z は近似的に標準正規分布 N(0,12) にしたがいまので,これを利用すれば練習問題2(2)のようなことも可能です。。

練習問題2 さいころを n 回投げて,1 の目の出る回数を X とする。

(1) n=600 のとき,110X120 となる確率を求めよ。小数第2位未満を四捨五入して答えよ。


(2)  となる確率が 0.95 以上になるためには,n をどのくらい大きくするとよいか。




 練習問題2(2)は,1の目のでる確率の誤差が 0.01 以下となる確率が,95% 以上になるには,5400 回以上振らなければならないということをいみします。その実験が,大数の法則(ここをクリック)にありますので,試してみましょう。