4 ほくろと花粉症
今まで学習しました検定を利用して,新聞に書かれていることがらを対象に,検定してみることにしましょう.その前に,検定する流れを,下のアプレットにまとめていますので,もう一度,各Stepを確認しておくことにしましょう.
|
|
と,左のような表にまとめることができます. このデータが意味することは,ほくろの無い人で花粉症の方の割合は100%なので余り意味のないことかもしれません(ほくろのない人は全員花粉症?ってことになってしまいますので).そこで,見方を少し変えて任意に抽出した115人のうち何人の者が花粉症にかかっているかと言うことに着目することにします.となります.
Step.2 そこで,
ほくろがない人が花粉症にかかる割合は,全体の割合と変わりはない
と仮定することにします.
Step.3 次に,花粉症にかかる割合から,これにともなう誤差の範囲を求めます.有意水準を 95% として計算しますと,
より, [ 0.220, 0.388] となります.
Step.4 今回の調査では,100%であったので,300人を母集団を対象としたとき,ほくろのある方の中で,花粉症にかかっている方の割合を見てみますと,70%であるため,当然この区間外となります.したがって,上記の仮説に対し「非常に珍しいことが起こった」と言えます.
結論としまして,
ほくろのない花粉症の方の割合は,一般の花粉症にかかっている方の割合よりもきわめて多い
といえます.なぜ,このようなことが起こるのか,ほくろの形成と花粉症の発病のメカニズムが解明できれば,花粉症に効く特効薬が開発されるかもしれませんね.
ただ,この新聞の記事としましては,母集団とする人数が少ない(115名)に関する情報は詳細に書かれていますが,統計的に必要な要素としましては,300名を対象に得られたデータを詳細に書いてくださった方がありがたかったように思います.115名中ほくろの無い30名全員が100%花粉症にかかっていると言うことを,暗黙のうちに強調したかったのかもしれませんね.
topic2.2002.1.4. 朝日新聞 同姓同名の患者,意外と多い,6万人中19人
名前の読みが一致する患者は予想以上に多いことが,横浜市立大学医学部付属市民総合医療センターの調査で分かった.
00年3月からの1年間に同センターで受診した患者は6万466人.このうち,姓名とも読みが一致する人が他に一人でもいる患者は1万784人に上った.4245種類の姓名が該当し,最も多いのは「すずきよしこ」さんで19人,次いで「すずきけいこ」さんの16人.同音者が4人以上いる姓名は,490種類あった.さらに漢字まで同じ人がいた患者も約6%の3845人(1692種類の姓名).最多は「鈴木和子」さんの12人だった.
![]() |
[考察] 上の文章におきまして,本当に,「すずきよしこ」さん,「すずきけいこ」さん,の名前が多いの? と言う疑問があります.極めつけは,漢字まで同じ患者「鈴木和子」さんの名が12名もいた,と記述されていますが,本当に多いのでしょうか?
そこで,この人数が多いか少ないのかを判定するため,どのくらいの割合で,「鈴木和子」さんがおられるのか,がんばって調べることにしました.
303,542人(名前だけなので,男性か女性か分からない)の姓と名の別々のデータを得ることができました.そのとき,姓に関しましては,男女に関係なく割合を計算することが可能でしたが,名に関しては,男性名と女性名に偏りがありますので,そのまま割合を計算することができません.そこで,明らかに女性に多いと思われる名前と男性に多いと思われる名前に分けて,男女の人数を推測し,男性と思われる人数が262,068人,女性と思われる人数が41,474人と仮定することにしました.そのうち,「鈴木」さんを姓に持つ方は3639人,「和子」さんと言う名を持つ方は680人おられました
今までの情報をまとめてみますと,男女303,542人(男性262,068人,女性41,474人)に対し,
男女303,542人に対する「鈴木」さんの割合:0.011988
女性41,474人に対する「和子」さんの割合:0.016396
であることが分かります.この仮定から,一般の「鈴木和子」さんの割合の誤差を求めます.
Step.1 「和子」さんの割合は,上記で求めたように女性41,474人において12人であったことから, 0.016396 となります.
Step.2 そこで,
病院で診察された「鈴木和子」さんの割合は,全体(一般)におられる「鈴木和子」さんの割合と変わりはない
と仮定することにします.
Step.3 ここから,少しややこしいのですが,徐々に「鈴木和子」さんの割合の誤差を求めていくことにしましょう.
(1) まず,女性41,474人に対する「和子」さんの割合の誤差を求めることにします.有意水準を 95% として計算しますと,
から,[0.015174, 0.017618] となります.
(2) ところが,今回調査した母集団は,男性0.863367,女性0.136633と偏りがあるので,補正する必要があります.すなわち,男性0.5,女性0.5と補正すると,以下の式が得られます.
これを計算しますと,[0.055527, 0.064472] となります.
(3) ようやく,「鈴木和子」さんの割合を求めることができます.少々乱暴ですが,「鈴木和子」さんであるためには,
姓が「鈴木」であること かつ 女性であること かつ 名が「和子」であること
であると考え,
「鈴木和子」の割合=(「鈴木」の割合)×(女性の割合)×(「和子」の割合)
となり,求める誤差領域は,
[0.011988×0.5×0.055527, 0.011988×0.5×0.064472]
より,[0.000333, 0.000387] となります.
Step.4 病院が調査された患者の人数は6万466人なので,上の割合を用いて,「鈴木和子」さんの人数を求めてみますと,
[60466×0.5×0.000333, 60466×0.5×0.000387]
より,[10.1, 11.7] と言う結果を得ます.病院側の調査では,「鈴木和子」は12名おられたそうなので,95%の有意水準で10名〜12名ということなので,病院にこられた「鈴木和子」さんの人数は,一般におられる「鈴木和子」さんの割合とさほど変わりはないといってよいかと思います.
このことから,新聞では,とても意外と書かれていますが,案外「意外なことではない」かもしれませんね.実際,別に調べたところ,神奈川県では,最も多い姓が「鈴木」さんです.また,女性で最も多い名が「和子」さんです.したがって,もっと偏りがあるのかもしれませんが,全国におられる「鈴木和子」さんご心配は不要ですよ.
このように,身近なものの中で,私たちの直感と案外異なっている場合があるので,その感覚が本当かどうか確かめてみることもよいでしょう.また,今後,メディア関係に進もうとされている方は,真実を伝えるため,どのような数値が必要か,どの数値を記載しなければならないのか,少しの統計の知識があれば判断ができると思いますので,是非,身に着けておいてほしいです.