§2 数 列

1 昔の数列

 天禄元年(970)に源為憲が参議藤原為光の長子松雄(7歳)のために作成したもので,口遊(くちずさみ)というものがあります。これは数学に関連する文献の中では,最古のものと呼ばれています。この中には,貴族の教養として必要ないろいろな分野に関し,九九の表のように,子どもが暗証しやすいようにまとめられています。その後,いろいろな数学書が出版され,寛永4年(1627)吉田光由は元来の日本の算法をもとに,生活に関連した計算方法を「塵劫記(じんこうき)」としてまとめ上げました。ここでは,それらの中から数列に関連する分野を取り上げてみます。

 ここでは,現代数学を知らない先達者たちが解いたわけですから,皆さんも工夫をして,一度,挑戦してみることにしましょう。なおU以降の[答]と[算法]は,新篇塵劫記(寛永18年)から直接引用致しました。

T.竹束問題


 左図のように,竹を束ねたとき,周りの本数が 21 本あった。竹の総数はいくらか。
[解説]
 この問題は「左図のように 3,9,15,21 本と竹を束ねたとき,合計何本の竹が束ねられているか」という問題です。
[算法] 周の本数に 3 を加え,自乗すれば 576 となる。これを 12 で割ると 48 本を得る。

 上の算法を式で表現しますと,

となります。この計算式は,どのような意味を持つのでしょうか?

U.俵杉算の事(米俵を杉の木の形に積み上げる問題)

右図のように俵を杉の形に積み上げる。一番上が 1 俵で,一番下に 13 俵あるとき,その積まれた俵の総数を求めよ。
[答]  此俵数九十壱表。
[算法]
 法にいふ 十三ひょうをひたりみぎにをきてひたりの十三表に一表くわへる時に十四俵に成 これを二つにわれば七俵になる これを右の十三表にかくれば九十一表としるゝ也

  塵劫記より


 
V.入子さんの事(入子の計算)
 入れ子とは,同じ形で大きさの異なるいくつかの入れ物で,大きいものから順に中に入れるように作られた鍋や箱のことを「入れ子」という。入れ物の数が 6 個ならば「六つ入れ子」,8 個ならば「八つ入れ子」という。(「塵劫記」和算研究所より)

八つ入子あるひは一升なべ二升なべ三升なべ四升なべ五升なへ六升なへ七升なべ八升なべの八つを銀四拾
三匁二分ニかい申候時 一升なへは何ほとにあたるといふ時 一匁二分 二匁四分 三匁六分 四匁八分 六匁 七匁二分 八匁四分 九匁六分
[訳]八つ入れ子の鍋がある。大きさは小さい順に,一升,二升,三升,四升,五升,六升,七升,八升 である。この8個の値段が合わせて銀 43 匁 2 分であるとき,一升鍋の値段はいくらか。

[答] 八口合 四拾三匁弐分有
法に一二三四五六七八これを合 三拾六と成是にて
右の四拾三匁弐分をわれは一升鍋の代銀壱匁二分と知へし
[訳]1,2,3,4,5,6,7,8 を合わせて 36 となる。これで,43 匁 2 分を割れば 1 升鍋の代銀が求められる。




W.ねずみ算の事(鼠算)

正月にねすミ父母いてゝ子を十二ひきうむ おやともに十四ひきに成也 此ねすミ二月には 子も又子を十二ひきつゝうむゆへに おやともに 九十八ひきになる かくのことく月ゝ十二ひきつゝうむ時 十二月の間に何ほとに成そ
[訳]正月に,ねずみの父母が現れて,子を12匹生んだ。親と併せて14匹になる。このねずみは,二月になると子もまた子を12匹ずつ生むようになるので,親子併せて98匹になる。このように,親も子も孫も曾孫も12匹ずつ生んだとしたら,12月には合計何匹になるだろうか。
[答] 二百七拾六億八千二百五十七万四千四百二疋に成也
法にねすミ二ひきに七を十二たひかくれは 右のねすミの高としるへし
[訳]ねずみ2匹に7を12回掛ければ,ねずみの数が求められる。




練習問題1 図の米俵数はいくらあるか。
(最上段に 8 俵,最下段 18 俵ある。)






 最後に,同じ列でもかえるの列の入れ替えです。1グループ4匹の緑色と,黄色のかえるが,1つのハスの葉を境にしてばったりと出会ってしまいました。後戻りはできません。また,同じ色のかえるを飛び越すこともできませんが,異なる色のかえるであれば,1匹先が空いていれば飛び越すことは可能です。また,隣が空いていればもちろん移動することは可能です。互いに争うことなく,緑のかえるは右側へ,黄色いかえるは左側へすべて移動させることは可能でしょうか。各かえるをクリックすれば,移動させることができます。(参考文献:ジェリー・スローカム,ジャック・ボタマンズ(著);芦ヶ原伸之(訳)『悪魔のパズル』(日経サイエンス社,1995))