§1 数 と 式

6 恒等式

 これから,恒等式,等式,不等式 に関連する説明を行います。それぞれ独立しておりますが,いろいろなところで関連しています。まず,一つ一つの持っている意味を,確認してゆきましょう。

 まず,恒等式の説明を行ないます。恒等式 とは,

等式をいいます。

 次に挙げる2つの例は,いずれも恒等式です。


 (1),(2)において,文字の中にどのような値を代入しても左辺の値と,右辺の値は一致します。このような式を,恒等式と呼びます。

ワンポイント
記号「⇔」は,
p→q:pならばq
かつ
q→p:qならばp
が同時に成立つことを
言います。詳細はここ
をクリックして下さい。

a,b,c を定数とするとき,次のことが成り立ちます。

[証明]
(ア) (⇒)
 ax2+bx+c=0 が x について恒等式であるとします。すると,x がどのような値でも成り立つので,x=0,1,-1 としても等式が成り立ちます。そこで,それぞれの値を代入すると,

となり,a=0, b=0, c=0 となります。

(イ) ()
 a=b=c=0 とします。すると 0x2+0x+0 となり,x がどんな値に対しても左辺の値は 0 となります。   (証明終)

 上のことより,次のことがいえます。

となります。

例題1
 次の等式が x についての恒等式となるように,定数 a,b,c の値を定めよ。


[解答]
 左辺を展開すると,

 よって,

 この式の両辺の x の係数を比較すると,

 となる。これを解いて,a=1,b=3,c=2.

 上のように x の次数が等しい係数を比較し求めました。このような求め方を,「係数比較法」と呼びます。その他,恒等式の性質より,どのような値に対しても成立するので,等式の中に適当な値を代入し係数を求めることができます。そのような方法を,「数値代入法」といいます。

例題2
 次の等式が恒等式となるように,定数 a,b,c の値を定めよ。

[解答1(係数比較法)]
 右辺を展開しまとめると,

なので,両辺係数を比較すると,

このことより,a=2,b=-4,c=3 となる。

ワンポイントアドバイス
代入する x の値は,どのような値
でもよいので,計算が簡単となる値
を代入する場合があります。例題2
では,右辺の因数に着目し,x に
1,2,3 を代入しています。


[解答2(数値代入法)]

 両辺に,x=1,2,3 を代入すると,

このことより,a=2,b=-4,c=3 となる。

練習問題1 次の等式が恒等式となるように,定数 a,b,c の値を求めよ。


 x がどのような値をとっても,常に成り立つ等式を恒等式ということです。これが何の役に立つの,という疑問が残るかもしれませんが,必要になったときまた説明することにしましょう。

 これで,恒等式は終わり,次に等式についての問題を学習していきましょう。