§1 数 と 式

5 因数定理

 前の章で学習しました剰余の定理は,

というものでした。この定理の利点は,整式 P(x) を1次式 x-α で割った余りだけを求めるなら,「わざわざ,割り算を行なわなくても, x-α=0 を満たす x の値,すなわち α を P(x) へ代入するだけで,余りが求められ,その余りは P(α) となる」ということを言っています。みなさんは,少し不思議に思うかもしれません。このような割り算の計算において,今まで重要視してきたものは,余りではなく商であったからです。どうして,余りに着目するのでしょうか? 次の例1を見てください。

例1 整式 P(x)=3x3-4x2+2x-1 を次の1次式で割った余りを求めよ。

(1) x-2  

(2) x+1  

(3) x-1


 この解は,簡単ですね。順に余りは,剰余の定理より P(2)=11, P(-1)=-10, P(1)=0 となります。

 上の例1で(3)に着目して下さい。余りは 0 となっています。すなわち,

この矢印の逆方向も,容易に成り立つことが分かります。この性質を,一般に述べたものを因数定理と呼びます。

 因数定理は,「割り算を行なわなくても,余りに着目することにより,P(x) が xーα で割り切れる,つまり,因数に持つかどうか知ることができるよ」ということを言っているのです。


例2 例1(3)において,本当に割り切れるかどうか割り算を行なうことにより確かめよ。
 
 整式の割り算でよく用いられる組立除法を用いて,確かめることにします。この方法は,割る式が1次式にしか適応できませんが,計算方法がとてもシンプルなので,よく利用されます。その方法は,右のシミュレーションで理解することができます。テキストボックスの中へ,-10 から 10 の整数値を入力するたび毎にエンターキーを押していきます。すると,自動的にシミュレーションが開始されます。ただし,x3 の係数 a は 0 でないとします。また,poseを押すと停止し,もう一度押すと再開します。

 上のシミュレーションを用いて確かめますと,商が 3x2-x+1 余りが 0 であることが分かります。これを式で書きますと,

となりますが,この式は次のようにも書けます。

まさにこれは,3次式の因数分解です。みなさんは,因数定理と組立除法を用いて,因数分解を行なってしまったのです。ここで,今行なった手続きを,順を追ってまとめておきましょう。

ワンポイント
Step.1において,どのような
数値を代入するか? 疑問に思
うかもしれませんが,試験など
では,,α=±1,±2 を代入
すれば多くの場合 0 となりま
す。

例題1 整式 x3-2x2-x+2 を因数分解せよ。
[解答] P(x)=x3-2x2-x+2 とおきます。
Step1. P(α)=0 となる α の値を見つけます。ここでは,P(1)=0 となります。
Step2. 整式 P(x) を組立除法を用いて xー1 で割ります。
Step3. Step2.で求めた商は x2-x-2 なので,

となります。

 ここで,因数定理に関する練習問題を行ないましょう。

練習問題1 次の整式を因数分解せよ。


例題2 整式 P(x)=ax3+bx2-5x-2 が x+2 で割り切れ,x-1 で割ると -18 となるように,定数 a,b を求めよ。
[解答] 剰余の定理より,P(-2)=0, P(1)=-18 となればよいので,

よって,a=-3, b=-8.

 この例題の発展問題が次の例題で,試験ではよく出題されます。
例題3 整式 P(x) を x+1 でわると 9 余り,x-2 で割ると 3 余るという。P(x) を (x+1)(x-2) で割ったときの余りを求めよ。

[解答] ワンパターンなので,順序よく処理していきましょう。
Step1. 
 P(x) を (x+1)(x-2) で割るので,余りは1次式となるので,求める余りを ax+b とおきます。このとき,商を Q(x) とおくと,

と書けます。
Step2.

ワンポイント
 解答は余りを問われているので,
a=-2,b=7 という答えにはならな
い。答えはあくまで -2x+7 とな
る。

問題文より,剰余の定理を用いて,

Step3. 
 (1)と(2)より -a+b=9 ,(1)と(3)より 2a+b=3 なので,a=-2,b=7 となります。

 よって,求める余りは -2x+7.

練習問題2 整式 P(x) を x-1 で割ると 2 余り,x-2 で割ると 17 余るという。P(x) を (x-1)(x-2) で割ったときの余りを求めよ。    



練習問題3 整式 f(x) を xー2 で割ったときの余りは 5,その商をさらに x+3 で割ったときの余りは 3 である。

    (1) f(x) を (x-2)(x+3) で割ったときの余りを求めよ。
    (2) f(x) を x+3 で割ったときの余りを求めよ。     


 他にも,結構いろいろな問題がありますが,それらは最後の章末問題で紹介致しましょう。要するに,余りをどのように式の中に取り入れて表現するかが着目点となります。