§1 数 と 式

9 不等式の証明(2)

 前の章では,不等式の証明において,よく利用する不等式の基本的な性質を確認しました。ここでは,不等式を証明するときの,主な証明パターンについて整理しておきます。

(T)「左辺−右辺>0」型 証明法


(U)「別の整式と比較」型 証明法




(V)「力ずくで比較」型 証明法

 これらのパターンを頭におきながら,次の例題に取り組んでみましょう。

例題1 a>1,b>1 のとき,次の不等式を証明せよ。

[証明]ここで,2つの答案を紹介しましょう。

           答案1

            答案2

左辺−右辺>0を示す。
ab+1-(a+b)>0

(ab-a)-(b-1)>0

a(b-1)-(b-1)>0

(a-1)(b-1)>0

ところで,題意より a>1,b>1 であるから,

a-1>0,b-1>0 なので,(a-1)(b-1)>0

∴ ab+1>a+b

左辺−右辺>0を示す。
左辺ー右辺

=(ab-a)-(b-1)

=a(b-1)-(b-1)

=(a-1)(b-1)

ところで,題意より a>1,b>1 であるから,

a-1>0,b-1>0 なので,(a-1)(b-1)>0

∴ ab+1>a+b



 上の2つの答案はよく似ていますが,どちらが正しい答案といえるでしょうか。

 答案1は,全く証明になっていません。

 というのは,ab+1-(a+b)>0 を証明するのに,最初からその結論を用いている所が問題なのです。証明で,「であること(であること)」を証明したいのに,最初から「であること(であること)」を用いていれば,結論も正となります。

 そこで,もう一度,答案1と答案2を見比べてください。答案1は,初めから 左辺ー右辺 と 0 を比較し,その結論まで書いてしまっています。答案2では,最後の結果でようやく 左辺ー右辺 と 0 を比較し,その結論として「」を記入しています。左辺ー右辺 と 0 を比較することにより正であることを示すことが目的なのです。



 ですから,いくら頭の中で理解していても,答案の表現方法が不適当な場合,全く正解にならないので,自ら「何を証明するのか」よく考えてから証明問題を解くようにしてください。

 では,いろいろな不等式の証明問題を解いてみることにしましょう。

練習問題1 次の不等式を証明せよ。

        a2+b2+c2 ≧ ab+bc+ca

 





練習問題2 a>0 のとき,次の不等式を証明せよ。


 






練習問題3 相加・相乗平均の関係


を用いて,次の不等式を証明せよ。
   
a>0,b>0のとき,














 証明問題では,特に「書き方」に注意してください。そのためには,正しい証明を見ながら,何度も書き写すことが大切だと思います。

 理解したことを,人に分かってもらうことも大切です。あこがれている人に,手紙を書くとき,言葉の1つ1つの表現にとても気を使うでしょう。誤解されないような証明ができるように心がけましょう。