§1 数 と 式

1 「0」の使用上の注意
 
 計算を行なうとき,「0」を特別扱いする場合があります。その特別扱いの方法は,各単元や章ごとに登場し,「0」の性質としてまとめられていません。ここで,これから計算していく上で,単元や章を飛び越えて「0」に関する使用上の注意を述べておくことにします。学習していて,もし「0」につまればもう一度この章を見直して見てください。



1.0の割り算について


みなさんは,0÷3 の計算値はいくらになるかご存知ですね。当然,

となります。ところが,3÷0 の値はいくらになるのでしょうか? 結論を言いますと,一般に,

には値がなく,数学において 「0 で割る行為」 は,許されていないのです。
[理由1]
 もし,ある数を 0 で割ることが可能であるとします。例えば,3 を 0 で割った値が 5 になった(どのような値でもよいのですが)とします。すると,

となり,今,0 で割ることが許されていますので,上式の両辺に 0 を掛けますと,左辺は 0 で割ることができますので, となります。したがって,3=0 というような矛盾が生じます。3 を別の数に置き換えても成立ちますので,このようなことをしますと,すべての数は 0 となります。これは,数を 0 で割るという行為を許した結果矛盾が生じたといえます。したがって,このような演算を許してしまいますと,すべての値は 0 ということになってしまいますので,行なってはいけません。

[理由2]


 同じことを,グラフで見てみます。今 1÷x を, というように関数にし,そのグラフを考えます。

となりますから,この表をグラフで表しますと,左のようになります。このグラフから分かりますように,x の値が負の方向から 0 に近づきますと y の値は負の無限大(-∞)となり,一方,x の値が正の方向から 0 に近づきますと y の値は正の無限大(+∞)となります。したがって,x=0 に対応する y の値は存在しません。

例題1 x に関する方程式 ax=2 を解け。
[解答] a≠0 と a=0 の場合に分けて考えます。
(1) a≠0 の場合
a≠0 なので,両辺を aで割ることができます。したがって,
(2) a=0 の場合
a=0 をもとの式へ代入します。すると,0・x=2 となります。どのような値を 0 に掛けても,左辺は 0 となりますので,これを満たす解はありません。したがって,解なし。

練習問題1 次の方程式を x について解け。



2.a0 っていくら? (a0)


 指数法則において,その指数を自然数から整数に拡張するとき,am・a=am+n (a≠0) という性質は維持したいという考えから,a0 を次のように定めます。am・a=am+n に関し,m=0 とすると,

となればよいので,a=a0・a が成り立つように a0 の値を定めれよいことになります。すなわち,a0=1 と定めます。

 ついでに,a-m (m>0)も定めておきましょう。これも,am・a=am+n において,n=-m とおきますと,

となります。よって,am・a-m=1 となればよいので, と定めます。

 もう一つついでに, (a>0,m>0)の値も定めておきましょう。これは,指数法則 (am)n=amn が成立するように定めます。ここでは, とおきますと,

となります。よって,これは を n 回(n乗)掛ると a となるので と定めます。

例題2 次の値を求めよ。

[解答]
(1) 150=1 (2)  (3)  (4)  (5) 
練習問題2 次の値を求めよ。



3.直線と0の関係
 ここでは,直線の方程式と 0 の関係についてお話しましょう。一般に直線の方程式は,

と書かれます。例えば,直線の方程式 4x-2y+6=0 は,y=2x+3 とも書かれます。このとき,



と呼びます。傾きは,直線の方程式が y=mx+n という形で表されたとき,x の係数となって表されます。

 ところが,直線の方程式が,いつも y=mx+n というような形で表されるとは限りません。そこで,もう一度,直線の方程式 ax+by+c=0 にもどって考えてみることにします。

[1] a0,b=0 のとき



上式(1)で,a0,b=0 となるときを考えてみましょう。このとき,どのようなグラフとなるのでしょう? y の係数が 0 となるため y=mx+n という形で表すことができません。そこでもとにもどって考えますと,ax+0y+c=0 と表現されます。この式は,どのような y の値に対しても, となりますので,右の図のようになります。

[2] a=0,b0 のとき
 次に,a=0,b0 のときを考えましょう。この場合,0x+by+c=0 となり,x の係数が 0 となりますので,x の値がどのような値であっても となります。一般には,もと式を簡単にしました直線の方程式 で表現されますが,x がどこにも出てこないので が直線の方程式のようには見えませんが,そのような時は,0x+by+c=0 という式に戻して考えてみると,すぐにどのような直線か理解することができます。

[3] a0,b0 のとき
 このとき,0x+0y+c=0 となりますので,直線の方程式にはなりません。

4.2直線の交点と0の関係
 さあ,あともう少しです。次の例題は解けますね。

例題2 次の連立方程式を解け。

[解答] 単純に計算します。

より,解は (1,5) となります。これを,グラフを用いた角度から考えてみましょう。



 2x-y=-3 を直線と考えますと,y=2x+3 となります。また,x+y=6 を直線と考えますと,y=-x+6 となります。左の図を見てください。「切片」というボタンを押して,緑色の直線をドラッグしてみてください。すると,平行移動ができます。そして,「傾き」というボタンを押して直線をドラッグしてみてください。すると,直線が回転します。これを用いて,直線 y=-x+6 に合わせてみてください。すると,交点の座標は,今求めました連立方程式の解になっていることが分かります。すなわち,

となっているのに気がつくでしょう。では次の例題はいかがでしょうか?

例題3 次の連立方程式を解け。

[解答] 上のプログラムを利用して,図形的に考える方が分かりやすいと思います。
(1) それぞれの式を直線の方程式と見なしますと,y=2x+3, y=2x+1 となりますので,この2直線は互いに平行の位置になります。したがって,交点がありませんので解は,「解なし」となります。
(2) これも直線の方程式とみなしますと,それぞれの式は,y=2x+3, y=2x+3 となります。したがって,この2直線は一致します。よって,交点は無数にあるので解は,「無数」となります。

 これで,2直線と0の関係は終了するのですが,「どこに0が出てきたの?」と思われることでしょう。次の練習問題3でしっかりと登場します。チャレンジしてみましょう。

練習問題3 次の連立方程式を解け。ただし,a は定数とする。

 2直線には,次のような関係があります。グラフで確かめてみましょう。

 a2=0,b2=0,c2=0 それぞれ成り立つとき,どのようになるのか考えてみてください。0 で困ったときは,この章にもどってきてみてください。