§2 三角比


7.余弦定理
 正弦定理は,理解できたでしょうか。次に説明する定理は,以下に示すような定理です。図のような △ABC において,

余弦定理




が成り立ちます。ここで,A,B,C は角度を表しています。では,どうして,このような定理が成り立つか証明してみることにしましょう。

 その前に,もう少し三角比の性質を紹介しておくことにしましょう(実は,その性質を余弦定理の証明で利用するからです)。左の性質が成り立ちます。図のように半径 r の円を考えると,x軸の正の部分より A だけ移動した円周上の点を P(x,y) とします。すると,180゚-A だけ移動したところの点を Q とおくと,△PHA≡△QH'A であり,また,互いの三角形はy軸に関して対象となるので,その座標は (-x,y) となります。したがって,

となります。ではこの事がらを用いて,余弦定理を証明することにします。

余弦定理の証明



 証明方法は,与えられた三角形が,鋭角三角形,直角三角形,鈍角三角形で少し異なります。
 
 最初に,右の図において,鋭角三角形の証明を行ないましょう。
 
@ まず,座標平面上の第1象限上にマウスポインタを置き,左クリックしてみて下さい。すると,自動的にその点と原点を結ぶ水色の直線が引かれます。
 
A 次に,x軸上の正の部分の適当なところにマウスポインタを置き,同様に左クリックして下さい。すると,鋭角三角形 △ABC が出来上がります。その三角形について,余弦定理がどうして成り立つか証明してみることにします。
 
B 次に,証明ボタンを押して下さい。自動的に証明を開始します。あきずに,最後まで見て下さい。分からなければ,もう一度適当なところで三角形を作り,同じ作業をしてみましょう。
 
C 鈍角三角形について証明するため,初めのポインタの置く位置を第2象限にとり,2つ目の角を,x軸上の正の部分にポインタを置き同じ作業を行なってみて下さい。
 
D 最後に,初めのポインタの置く位置をy軸上にとることにより,直角三角形の証明ができます。
 



 いかがですか? 上の鈍角の証明では,

という変形を用いています。

 さて,ここで,余弦定理の式 a2=b2+c2-2bc・cosA をもう一度見直して下さい。よく見ると,A=90°のとき,cos90°=0 で,a2=b2+c2-2bc・cosA は a2=b2+c2 となります。これは,△ABC が直角三角形となる場合ですから,まさに,三平方の定理と一致します。みなさんは,三平方の定理を習ったとき,「どうして直角三角形だけこのような性質が成り立つのだろう?」と不思議に思ったことはありませんか? この余弦定理は,云わば,三平方の定理の拡張版であるといえるでしょう。中学校では,第3項の -2bc・cosA が隠されていたのですが,とうとう,ここで姿を表したって感じです。また,この第3項は 数学B の内積を学習した方は,まさに,この形が内積になっていることに気がつくと思います。私が,このことに気がついたのは,大学に入学してからで,とても感動したことを覚えています。
 
 では,余弦定理をもっとよく理解するため,例題を解いていくことにしましょう。
 
例題10 三角形 ABC において,次のものを求めよ。
 
(1) b=2, c=3, A=60゚ のときの a
 
(2) a=3, b=5, c=7 のときの A
 
[解答] やはり正弦定理のときと同じように,与えられた条件を,図で表す習慣をつけておきましょう。

 ではここで,練習問題を解いてみることにしましょう。
 
練習問題9 三角形 ABC において,次のものを求めよ。

 

練習問題10 △ABC において, のとき,残りの要素を求めよ。(「残りの要素」とは,この場合 c,B,C を言います。)


 


 
 これで,正弦定理と余弦定理の代表的な利用方法について紹介しました。コツさえつかめば,理解しやすい分野だと思います。次は,これらを用いて,三角形の面積を求めることにしましょう。三角比の最後の話題なので,エネルギーを貯えておいておきましょう。