[ 編集者:大学院 総合政策研究科 ]
一般に、政策研究は、政策とそれが達成しようとする政策目的とのあいだに存在するさまざまな関係を前提とし、そのもとで各種代替案の存在を明らかにした上で、それらの選択肢のなかから、政策目的を何らかの意味で最善の方法により実現するような政策の内容、またそれを決定する過程、ならびにその実施方法や政策効果の事前的・事後的評価などに関する研究を行なう学問領域であるとされている。それだけに、政策研究は当初から学際的色彩の濃い性格のものであった。さらに近年においては、次のような諸事情により、政策研究の学際性への要請が一層強まり、政策研究を統合的に推進できる機関がますます必要視されるようになった。
第一に、人間の社会経済活動が多様な環境とのあいだで大きな緊張関係を生み出すようになり、いわゆる環境問題が地球規模にまで拡大することとなった。そのため、地球環境問題への政策対応は、地理的・空間的な広がりだけでなく、幾世代にもまたがる時間的な広がりから、必然的に自然科学と社会科学の広い領域にわたる学際的取組を要請するものとなった。
第二に、経済や情報のグローバル化、多様化・複雑化する社会システム、さらに冷戦終結後の世界の政治情勢の変化といった状況のなかで、政策目的自体が多次元的な目標達成尺度を含み、複数の社会的価値を同時に追求することが求められるようになった。
そして第三に、人間の社会経済活動と外部環境との接点が広範囲に及ぶにつれて、政策手段の種類も多様化の必要性に迫られ、政策の実施にあたって、多数・多様な主体の参加が促されるようになった。そのため、情報公開と各種主体の参加が、民主的プロセスのなかでの政策決定に不可欠のものとなりつつある。
1999(平成11)年に設置した総合政策研究科博士課程前期課程では、以上のような政策研究の時代的背景を踏まえて、「環境政策領域」「都市政策領域」及び「国際発展政策領域」を中心的研究領域とするほか、さらにそれらの政策の基礎を形成する「政策基礎領域」と、それらの政策が相互に関連・影響し合うクロスカッティングな「政策横断領域」を設け、現実社会と向き合った形でのリサーチ・プロジェクトを実施している。そのため、具体的には、これらの領域をカバーする12の課題研究を配置し、それぞれの課題研究を担当する複数の教員と共に当該研究テーマを選択した学生とが共同研究チームを組んでリサーチ・プロジェクトを推進している。
このような研究をさらに高度に発展させ、具体的な解決の方策へと結実させることの必要性は極めて高く、博士課程後期課程においては、問題解決のためにさらに高度の学問的ディシプリンの修得を図りつつ、博士課程前期課程課程で取り組んだ課題をさらに深く研究する。内容の詳細については、IV.教育課程の構成と特色 3.教育課程の構成と特色で後述する。
総合政策研究科博士課程前期課程では、実際的な課題への取り組みのために、産官学のそれぞれの立場から研究体制の確立のために協力しあう場として、多くの企業、研究所、官公庁、公共団体などの賛同のもとにリサーチ・コンソーシアムを設立し、研究協力ならびに人的交流に向けたネットワークの構築を図っている。博士課程後期課程においては、このようなパートナーシップのもとに、単に研究室に閉じこもるのではなく、フィールド・ワークをはじめとして、常に実際の政策現場での課題にも取り組むことが求められている。
また、リサーチ・セミナー(共同研究チーム)を中心に、リサーチ・プロジェクトに参加し、実習とフィールド・ワークの手法を有機的に組み合わせて、常に現実社会との接点を見失わないようなオープンな教育研究をおこなう。
本学では、建学の精神を新しい時代に生かすため、総合政策学部設置の当初から、世界市民として地球と人類の未来を考え、諸問題の解決に献身できる人材を育てることを、その教育目標としてきた。総合政策研究科においても、この教育目標は当然継承されるべきものであるが、先に本研究科博士課程後期課程の設置趣旨に関する箇所で指摘したような、大学院教育に対する学生の期待ならびに社会の要請からすれば、より具体的且つ明確な形でこれに応えることが求められている。
このため、強い問題解決志向をもって研究に取り組み、高度な政策立案能力を身に付けて、それを実践へとつなげていくことができる問題解決型の人材育成を目指すこととしたい。
さらに、博士課程後期課程の研究では、問題解決というきわめて実際的な側面の基礎に、問題の理論的な整理の能力がなければならない。そのためには、問題発見のための鋭い視点と、その解決のための高度な政策立案能力を持った研究者である必要がある。